
「風の時代」が本格スタートしたうえで迎える2025年は、時代のムードが一新される転換期。新しい流れが訪れるなか、運気の波に乗る鍵となるのはワクワクするような「冒険」や「新しいチャレンジ」。古い価値観を手放し、自分が本当に望む方向へと舵を切って!
時代の転換点となる今、「嫉妬による分断」は過去のものに

2024年11月20日、変容の星・冥王星がやぎ座を去りました。2008年から2024年、足かけ16年に渡り、やぎ座に滞在していた冥王星がその座を移り、約20年、みずがめ座に滞在することになります。冥王星は、私たちの潜在意識の深いところに影響を及ぼす、欲求をつかさどる天体。ありとあらゆる努力をして、“to do リスト”をこなし、成功や達成を目指すのが当たり前だった時代は終わります。20代までなら、物心ついて以来の価値観が変わっていくように思えるかもしれませんし、年配の方なら、失われたものを取り戻そうという心の働きが落ち着いてくるでしょう。
冥王星がやぎ座にある時代はまた、「嫉妬の時代」でもあったと思います。『嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する』(光文社新書)によると、“envy”はもっていないものを他者がもっていることへの嫉妬で、“jealousy”の嫉妬は、もっているものを失うことへの嫉妬なのだそう。土のエレメントの星座であるやぎ座に冥王星がある時代に、「もつ、もたない」による分断が起こり、嫉妬からのマウンティングや犯罪も多く見られたのは、多くの人の記憶にあるはず。たとえば、既得権益をもつ側とそうでない側、男性と女性、先住者と移住者、年配者と若者という具合です。嫉妬がなくなるわけではないのですが、これらの、「もつ、もたない」による分断は、過去のものになっていくでしょう。
求められるのは改革を推し進め、自由を実現するカリスマ

冥王星が次に入ったのは、みずがめ座です。もっとも、2023年と2024年は、冥王星はやぎ座とみずがめ座を行き来していたので、2023年の3月24日から6月11日、2024年の1月21日から9月2日、冥王星の力はみずがめ座を通じて、地上に降り注いでいました。冥王星がみずがめ座を通過するたびに、大人から子どもまで、頑張れない、気力がない、自由になりたいという声が聞かれていました。今回もそうで、2024年11月20日に冥王星がみずがめ座に入り切って以来、疲れ切っている方の声を多くお聞きします。
では、みずがめ座に入り切った冥王星は、どのように働いていくのでしょうか。みずがめ座の性質には「自由・平等・博愛」があります。守護するのは、自立や変革の星・天王星。そのため、「自由や平等」への欲求が極端に強まり、それを投影できる、既得権益と戦うカリスマが支持されるのです。“離れていてもつながり合う”という性質をもつみずがめ座は、インターネットやSNSとも縁が深い星座ですが、デジタル戦略を駆使することで権力を得るという構図は、ビジネスや政治の世界でも現れていますね。
みずがめ座は、多様性の星座でもあります。ひとつ前のやぎ座の冥王星時代は、かろうじて、超大国というものが存在していましたが、今後は、新興国も力をもっていくので、世界のパワーバランスは均質になっていくでしょう。国内を見ても、ひとつの会社のなかでも同様です。そのために意思決定が遅くなるとか、結論が出ないとかもおおいにありそうですが、その分、カリスマ性があり、自由を実現してくれるリーダーが求められるのです。
海王星がおひつじ座へ。ワクワクするような「冒険」を求めるように

みずがめ座冥王星によって、どんな時代になっていくのかがわかり始める。そのエネルギーが私たちの意識に浸透し始めるのが2025年なわけですが、土星以遠の天体の移動が多いのも、2025年の特徴です。まず3月30日には2011年以来、一時期を除いて、ずっとうお座にあった境界を溶かす星・海王星がおひつじ座に移ります。
うお座の海王星の時代というのは、私たちは、心を慰撫(いぶ)してくれるもの、ファンタジーを求めていました。“推し活”がはやったのもそう。心を癒やしてくれる対象を求め、いつしか、手放しに崇めてしまう。それで元気になって、仕事も頑張れるのはすてきなことでもありますが、“推し”に人生をささげ、現実がおろそかになるなど行きすぎたケースもあったと思います。そんな、どこか夢うつつな時代が終わるのです。
次に入るおひつじ座のエネルギーは、もっと生命力にあふれ、ビビッドです。時代の寵児として思い浮かぶのは、自分でわな猟をして、獲れた肉で料理をする女性料理人。野に湧き出る温泉を探す、女性の温泉ハンター。どちらもドキュメンタリーやニュースで見かけた方たちですが、そんな、身ひとつで大自然のなかを駆けめぐるようなタイプでしょう。私たちの心は、閉ざされたローカルな世界で、決められた階段をひたすら上るとか、きれいな言葉で慰めてもらい、そこに耽溺するとかにはうんざりしているのかも。心の底から、ワクワクするような「冒険」を求めているのだと思います。
「冒険」と「現実」のはざまで揺れる春。驚くような展開も

海王星がおひつじ座に入り、「冒険」を夢見るのもつかの間、5月25日には現実化とルールの星・土星もうお座からおひつじ座に移動します。土星は、とても現実的な天体なので、海王星が長く滞在したうお座では、行きすぎたファンタジーに制限をかけるという働きをしました。そのため、2024年12月現在、うお座海王星の、夢うつつな時代の終わりを多くの人が感じていることでしょう。夢見ていたはずのものが手に入っても、色あせて見えるという具合です。
うお座では2011年以来の海王星の滞在期間が12年にもなってから、2023年に土星がやってきて、海王星の行きすぎを制限しました。でも、おひつじ座では3月に海王星、5月に土星というように、2カ月違いでやってきます。そのため、「冒険」を求めたけれども、すぐに現実的に無理だと悟るというようなこともあれば、逆に、相当に無謀だと思えることを、無理やり実行に移してしまうケースもあるでしょう。
日本で言えば、3月末から5月というのはちょうど新年度。11月に冥王星も動いていますから、驚くような組織変更も、おおいにあり得ると思います。とくに、ドメスティックな企業では古い価値観のまま、ピラミッド式の経営を続けていると、若い社員の方が次々に辞めてしまい、事業自体が成り立たなくなるというような極端な展開も、さらに増えていきそうです。それは、雇われる側も同じ。従業員であっても甘えは許されず、同等の責任を求められるイメージです。力のあるものや権威に従っていれば導いてくれる、甘やかしてくれるという時代ではないのです。
2025年前半の“空気”は、「卒業」&「新しいトライ」

ここで、2025年前半の流れをおさらいしてみましょう。2024年11月20日に冥王星がやぎ座を去ったあと、「もう頑張れない」とばかりに立ちどまっていた人たちも、2024年の冬至からはもう一度、義務や役割を果たそうと努力していくでしょう。みずがめ座の冥王星は、「合理性」を追求しますが、それに対して、2024年12月7日、しし座で「逆行」を始めた火星は、自分のプライドや独立性を保とうとします。
でも、2025年1月20日頃からは圧倒的に、新しい流れが優勢となっていきます。風のエレメントであるふたご座、みずがめ座が優位なので、「SNSでよく見かけるから」というような、“空気”で動いていく面も大きいでしょう。3月2日からは、愛と美の星・金星がおひつじ座で「逆行」し、一時的に嫉妬や競争も生まれやすくなりますが、その後、3月29日のおひつじ座の日食や3月30日の海王星のおひつじ座への移動が起こるので、4月は、おひつじ座の「新しいことをしよう」というトライアルのムードでいっぱいです。4月13日には金星も「順行」し、18日には火星がしし座に入り直すこともあり、多くの人が「自分らしさ」や「卒業」を望み、古い場所にこだわらない姿勢が魅力的に見えるのです。
ただ、そこにトラップがあるかもしれません。5月25日には土星もおひつじ座に入ることは、もうお話ししました。土星は新しい時代のスタンダードを作る天体ですが、形だけ新しいことをしようとする危険性はある。でも、それでは成果は得られないでしょう。自分自身とつながって、本当に望んでいる方向へと歩き出してみて。
夏に向けては「住まいの安全」&「真実の情報」がキー

次に、2025年夏に向けての星の動きです。6月10日には拡大と保護の星・木星がふたご座から、かに座に移動します。木星は約1年間、ひとつの星座に滞在するので、冥王星、海王星などと違い、1年に1度は星座を動くもの。木星によって、トレンドやムードが変わるところがあります。かに座が象徴するのは、「居場所」。そのため、「心地のよい家やインテリア」も大きなテーマになるでしょう。また、2025年らしい現れ方として、「住まいの安全」があると思います。災害も強盗事件も多いなか、「防災・防犯」に備えた住まいづくりが緊急の課題になるはず。これまでのように、信頼や性善説に頼ることは許されなくなりそう。
外惑星の移動がまだまだ続くのが2025年のすごいところで、7月7日には、自立や変革の星・天王星がおうし座を去り、ふたご座へと入ります。ふたご座には6月10日まで木星も滞在しているので、ふたご座の「情報・伝達」という性質が木星によって、ときに行きすぎることもあるでしょう。でも、この7月7日からは、さらに変革が起こっていくことに。既存のメディアに対する不信感が満ち満ちている現在、「真実の情報」を求める声が高まり、情報の伝え方について、天王星がふたご座に滞在する2032年までの実に約7年間、大きく変わっていくはずです。今まで“非常識”とされていたことが“常識”になることもあるでしょう。
ある場の“空気”に支配されず、多層的に生きる人が魅力を発揮

では結局、今年は、どう過ごしていくといいのでしょう。欲求のままに激しく主張したり、抵抗したりは簡単ですが、それよりも、“空気”を作るほうが物ごとはうまく進みやすいとき。その場の“空気”に合わないと、排除されたり無視されたりもありそうですが、本当に自分らしく生きている人は、いくつもの場、いくつものコミュニティに身を置いているもの。ある場の“空気”に支配されることもなく、ローカルなルールをすり抜けていけるはず。閉ざされた場所にこだわることなく、多層的、多元的に生きている人こそが魅力を発揮できるでしょう。
とはいえ、星は見かけ上、行きつ戻りつしながら、時を進めていきます。9月1日には土星が、10月22日には海王星がおひつじ座からうお座へ、11月8日には天王星がふたご座からおうし座へと戻るので、秋になると、早く進みすぎたものに関しては揺り戻しが起こっていきます。でも、それは一時的なこと。2026年には海王星と土星はおひつじ座へ、天王星はふたご座へと進んでいきます。手放すことを怖がらず、勇気をもって前に進み、真実を伝えることが求められるようになるのです。
形式、年功序列、伝統などではなく、それぞれの個をリスペクトするのが大切な1年。ひとりひとりの心が動くのは、やはり本当のこと。我慢しながら、役割を続けるという時代はもう終わり。かといって、仕事や義務をすぐに放り出すこともできないのが大人です。生活のなかに、何かひとつでも魂が喜ぶものを加えていきましょう。そこでは、“私に戻れる”というものを見つけましょう。
どうぞ、すてきな1年になりますように。

text : Saya
Saya/1971年生まれ、東京出身の文筆業。1999年、月食の晩に占星術と出会い、さまざまなシンクロニシティに導かれて、ホロスコープ・リーディングをマスター。エルの 「Sayaの星占い」(隔週更新)、「星よみジャーナル」(月2回更新)を連載中。現在は京都に拠点を移し、晴耕雨読の日々。著書に、『星を味方につける生き方、暮らし方 ~不安な時代に翻弄されずに私を生きる~』(集英社)『「みずがめ座時代」の太陽的生き方 過去の扉を閉じて、“私”をバージョンアップする方法』(大和出版)ほか。2024年12月18日には新著『わたしの風に乗る目覚めのレッスン~風の時代のレジリエンス~』(説話社)を発売予定。