
トレンドパンは韓国から!といっても過言ではないほど、新しいパンが次々と誕生しているソウルのパンシーン。“サンドイッチを作らせたら右に出るものなし!”といわれる、 奥渋谷の人気カフェ「CAMELBACK sandwich&espresso」オーナーで、ソウル通でもある成瀬隼人さんをナビゲーターに、注目のソウルベーカリーを巡ったパンラボこと池田浩明さんが、その魅力をレポート。
【聖水】Cafe Onion Seongsu/カフェ オニオン聖水店

あっちを向いてもこっちを向いてもカフェ! というぐらいカフェシーンが盛り上がる韓国で、ブームを牽引する存在がベーカリーカフェが「onion聖水(ソンス)」。今回ソウルのベーカリーを案内してくれた「CAMELBACK」の成瀬さんも必ず訪れる大のお気に入り。
もともと工場街だった聖水が「onion」の進出によって一躍トレンドのエリアに。同店も元々は工場だった物件をリノベ。いい感じに古びたコンクリートやレンガの壁に、インダストリアルなインテリアと植物が相まって、どこを切り取っても映え、映え、映え。おしゃれした女性たちが至るところで記念写真をパチリ。ここにくれば誰でも韓流アイドルになれる!?
リッチな風味にノックアウトな、人気№1商品

ベーカリーカフェとしての「onion」の名を一躍高めたのが、東方神起チャンミン御用達の「パンドーロ(パネトーネに似た、イタリアでクリスマスに食べられる特別なパン)」。
「onion」グループのパンの製造を一手に引き受けるのは、レジェンドシェフ、カン・ウォンジェさん率いる「BREAD 05」。定番のパンドーロに粉糖をトッピング、まるで雪をかぶったモンブランのようなフォルムは、カンさんがアルプスを見たとき思いついたという。
レーズン種を用いて製造になんと3日を要する。思いきり縦伸びした生地を噛み切るさっくり感、水和しきった生地が溶けるふんにゃり感、濃厚な卵とバターの贅沢感、粉糖がしゅわっと消えるはかなさ。雪のように見えるトッピングは粉糖のみで、日持ちするので、ソウルみやげはこれで決定。
総菜パンから菓子パンまで”キャラ強系"アイテムがそろう

「BREAD 05」が焼く、映えまくりのパンたち。どれもコーヒーと相性抜群。
「プルコギのパイ」はプルコギの甘みにコチュジャンの辛みを重ねた韓流ミートパイ(写真右上・左上)。韓国産甘栗をごろごろと入った横長スタイルのパンは分け合えるサイズ感がうれしい(写真右下)。なんとクイニーアマンの上にシュークリームをのせちゃったパンは中にはコーヒーメープルクリームというさらなるサプライズ付き(写真左下)。
ずらっと並んだパンは圧巻!

透明のフードカバーを開けてパンを取るスタイル。ずらっと並んだパンは約30種類ほど。クロワッサンにイチゴなど季節のフルーツとクリームをはさんだパンなど、この店でブレイクして韓国に広がっていったパンも多いとのこと。どこを見ても映えるパンばかりでワクワク、ドキドキ。あっという間にトレイはパンでいっぱいになってしまうので、ご注意ください!
特等席は建物の屋根?!

店内には、個室や巨大な長机やテラスなど、さまざまな席があり、気分に合わせて自由にイートインできる。緑が豊かな中庭や屋上の席もおすすめ。今やソウルのブルックリンとも呼ばれるほど注目を集めているトレンドの発信地である聖水は、カフェのみならず、アートやファッションなど、ライフスタイルショップが立ち並び、感度の高い若い人たちが集まるエリア。「onion」に来たら、ぜひ街も散策して。
Cafe Onion Seongsu/カフェ オニオン聖水店
8 Achasan-ro 9-gil, Seongdong-gu, Seoul, 韓国
Instagram/@cafe.onion
【漢南】TARTINE The Bakery/タルティーンベーカリー漢南

西海岸サワードウムーブメントの発火点「タルティーンベーカリー」は大西洋の向こう側? いえいえ、海峡を越えればすぐそこソウルに!
伝説の「カントリーブレッド」はここでもシグニチャー。高温で焼いた黒光する堂々たる駆体。中身は輝くようなミルキーさと後味の酸味のさわやかさが同居。
サワードウのバインミーも韓国風テイスト

バインミーをサワードウで!? 驚くのはまだ早い。定番なますの代わりにカクテキキムチの千切りを入れたなんと韓流バインミー!
サワードウの酸味がプルコギ風のお肉とパンをつなぐ感動の一体感。キムチのさわやかさは小麦の甘さをますます快いものに。これにはサンドイッチ職人成瀬さんも夢中になって、そのおいしさに舌鼓。
店全体で西海岸を感じられる!

クロワッサン(右下)はもうひとつのシグニチャー。こっくりと焼き込んで重厚な香ばしさ。見事にボリュームを出してふわふわさっくりに。
大通りに街路樹が並ぶ漢南(ハンナム)。その洗練された空気感は、どこかサンフランシスコのダウンタウンを思わせる。吹き抜けの大空間に圧倒され、サンドイッチをほおばったり、コーヒーを飲んだり、お客さんがおのおの楽しむ自由な雰囲気にも、西海岸らしさが漂う。
また「タルティーンベーカリー」はソウルに5店舗ほど展開しているので、合わせてチェック!
TARTINE The Bakery/タルティーンベーカリー漢南
22 Hannam-daero 18-gil, Yongsan District, Seoul, 韓国
Instagram/@tartinebakeryseoul
【瑞来村】Artisan Bakers Seorae/アルティザンベーカーズ ソレ

東京・青山界隈をほうふつさせる、高級住宅街とセンスのよいお店が立ち並ぶ「ソレマウル」。その一角にある、王道のフランスパンを高い技術で極めるブーランジュリー。
店内もヨーロッパのようなしつらえで、ワインのおつまみになりそうなフォカッチャや、フランスを思わせる「パン・オ・ショコラ」など、パンの完成度、うつくしさが衝撃的。ざくざく割れて、小麦の風味も存分に楽しめるクロワッサン系には特に注目したい(写真下)。
なかでもみんなのお目当て、人気商品の「ラウゲンクロワッサン」はスモーキーな香ばしさと岩塩のインパクトで食べさせる(写真上)。
総菜からサンドイッチまで種類豊富

色とりどりのトレイにパンをのせてもらったら、2階・3階のカフェスペースへGO。広々とした店内やテラスでゆったりとパンとドリンクを楽しめる。
モルタデッラとモッツァレラをはさんだサンドイッチ(写真手前)には、「CAMELBACK」の成瀬さんも太鼓判。エスプレッソマシンでいれたコーヒーもGood。
外国人が多く暮らすグローバルビレッジの人気店

お店のあるソレマウルは、”ソウルのプチフランス”といわれるエリア。フランス人が多く住み、周囲にはベーカリーやパティスリーが立ち並ぶ。
そんなヨーロッパのような雰囲気にぴったりのピンクの外観がキュート。1階がパン売り場で、2階、3階がスタイリッシュなイートインスペース。屋上にもテラス席があって居心地抜群です。
Artisan Bakers Seorae/アルティザンベーカーズ ソレ
35 Seorae-ro, Banpo-dong, Seocho District, Seoul, 韓国
Instagram/@artisanbakersseorae
【良才】Fritz Yangjae/フリッツコーヒー ヤンジェ

生豆バイヤーや韓国バリスタチャンピオンシップの優勝者、焙煎士らスペシャリスト集団が創業。韓国全土にダイレクトトレードの豆を卸すコーヒーカンパニーの直営店5店舗のうちのひとつ。
フランス産小麦を使用し、2階の厨房で製造した焼きたてのパンを食べられる。パリで見かけるような、バゲットを使ったジャンボンサンドイッチから、進化系クロワッサンまで、スペシャルティコーヒーに合うパンを取りそろえる。
店内でひときわ目を引くのが世界的トレンド、“立ってる”クリームドーナツ。コーヒーにはやっぱりコレ。
「ラズベリークリームドーナツ」は、もっちり生地から甘酸っぱいクリームがあふれ、コーヒーをフルーティなフレーバーで彩る。韓国のベーカリーはどこもトレンドのキャッチアップ力に秀でているけれど、なかでもフリッツはピックアップの感度も再現力も高い。
あの手この手でアレンジされたデニッシュを楽しむ!

クラッシュアーモンドとキャラメルをまとわせた「クイニーアマン」は日本に持って帰りたくなるナイスアイデアな一品(右手前)。層がくっきりと浮き出したばりばりの「クロワッサン」(写真奥)。レモンクリームがきゅーんとなる「レモンパイ」は酸味とグラサージュの甘さがナイスバランス(写真左)。
意外性が連発のベーカリーカフェ

冷麺屋?という外観で、中に入ると純喫茶、その実体は自家焙煎のスペシャルティーコーヒーのカフェという意外性の連発にギャップ萌え。
韓国文化を積極的に取り入れた「コリアン・ヴィンテージ」がコンセプト。コーヒー豆も、おっとせいのマークをあしらったカラフルでかわいい韓国茶風パッケージで、カップなどグッズも充実している。
最先端のカフェにベーカリーを併設することも多い韓国は、パン好きにはとってもうれしい。しかも、単なるカフェの自家製パン以上の本気度とクオリティ。菓子パンなど持ち帰りが厳しいパンも存分に楽しめるのが旅行者としてはありがたい存在。
Fritz Yangjae/フリッツコーヒー ヤンジェ
24-11 Gangnam-daero 37-gil, Seocho District, Seoul, 韓国
Instagram/@fritzcoffeecompany
【江南】FLOUR Artisan Bakery Cafe /フラワー アルティザンベーカリーカフェ

モダンで広々としたベーカリーカフェ。進化系クロワッサンなど人気の折り込み生地を数多くラインナップ。と同時に、サワードウやバゲットなどハード系もハイレベルだ。そのうつくしさに一目惚れ、「CAMELBACK」の成瀬さんもサワードウをおみやげにしたほど。
これは映えてる! バイカラーのボウタイ(蝶ネクタイ)クロワッサンは、見た目以上に薄くてしなやかなクロワッサン生地が破れると、中から抹茶チョコクリームがたっぷりあふれだす。(写真左上)。進化系デニッシュだけではない! 写真右上の「シナモンロール」や写真右下の「パン・オ・ショコラ」といったクラシックなデニッシュも秀逸。ペーパーバッグのデザインもポップでかわいい(写真左下)。
カリッ、しゅわの食感コントラストに感激!

バーナーであぶったかりかりのシュガーコーティングに、分厚いのに口溶けがよいブリオッシュ生地というコントラストの「フレンチトースト」。トップのとろとろカスタードクリームが甘く溶け、悩殺のダメ押し。
店名からもこだわりが! 小麦粉にこだわった、職人系ベーカリー

2024年、ベイカーのキムさんが韓国のバゲットコンクールで優勝。2年連続で優勝者を輩出した実力派ベーカリーだ。
目の前でパンを焼く姿が見える圧巻のオープンキッチンに広々としたイートインスペースはしっかりと作り込まれていて、エンタメ性の高い一軒。ソファや長机などいろんな席があり、休憩やおしゃべりなど使い勝手がよさそう。
FLOUR Artisan Bakery Cafe /フラワー アルティザンベーカリーカフェ
45 Apgujeong-ro 2-gil, Gangnam District, Seoul, 韓国
Instagram/@flourartisanbakery
【梨泰院】Maybell Bakery/メイベルベーカリー

梨泰院(イテウォン)に位置、自家培養したサワー種で作るカンパーニュや定番のバゲットなど食事パンをメインにした高級住宅街の地域密着ベーカリー。
地元っ子が足しげく通う、ハイセンスなベーカリー

エントランスはデザイナーズマンション、中はまるで高級ブティックのようなスタイリッシュな建物は、このベーカリーのために建てたもの(写真左上)。
オーナーシェフのジョンさんはアートも手がけ、日本、ヨーロッパの膨大なパンの蔵書を持つクリエイター(写真左下)。くるみあんぱんはあんぱんは韓国でも人気だ。このお店のは特にくるみとこしあんの相性がよく、ソフトな生地に雑穀を入れアクセントに(写真右上)。バゲットが人気で早々に売り切れることも。パン棚もクールでディスプレイが映える(写真右下)。
Maybell Bakery/メイベルベーカリー
11번지 745 Hannam-dong, Yongsan District, Seoul, 韓国
【蚕室】Sofitel Ambassador Seoul/ソフィテル アンバサダー ソウル

焼きたてのパンの香りとともにソウルの朝を迎えたい。そんな人におすすめのフランス系5つ星ホテル。大のパン好きである成瀬さんも、朝食を楽しみにここを定宿に。
注文後に目の前で作るオムレツに、韓国料理からさまざまなシャルキュトリーまで目移りする料理の数々。石村湖水公園を高層階から見下ろす抜群のロケーション。