
食文化の宝庫・博多には、定番の名物だけでなく、ここでしか味わえない一皿や空間ごと楽しめる個性的な店が次々と登場している。ニュースポットで心ときめく時間を過ごすもよし、ホテルで優雅な朝を迎えるもよし。福岡の今行きたいおいしい場所を、旅好きエディターがレコメンド!
福岡でいま行きたいホットなスポット

路地裏の一軒から話題のニューカマーまで、福岡のグルメシーンはいま、どんな風に進化してる? 味の奥行きはもちろん、空間のしつらえや素材へのこだわりにも注目したいところ。まずは、地元の感度の高い人々をも魅了する、洗練と遊び心を兼ね備えた注目店をご紹介。
「SABOE HAKATA」@御供所町

気持ちが整う、静謐な茶時間
博多旧市街の御供所町。賑やかな博多駅から歩いて10分ほどなのに、まるで別世界のよう。寺社が立ち並び、時間がゆったりと流れるこの街に、2024年秋、「SABOE HAKATA」がオープンした。
1階のショップを抜けて、2階の茶房へと続く階段を上がると、漆喰の白壁と黒いカウンターが印象的な空間が広がる。今回注文したのは「T., Collection」のお茶と、季節のお菓子、あて八寸がセットになった「茶と菓子とあて」。まず、10種類の茶葉が詰まった木箱が目の前に置かれる。ひとつひとつの香りを確かめながら、自分の気分にぴったりの一杯を選ぶのが楽しい。この日、迷った末に選んだのは「5 紅 Beni」というブレンド。紅茶、烏龍茶、黒葡萄葉をブレンドしていて、香りはキンモクセイ、梅干し、プルーン。味わいははちみつ、焼きりんご、葡萄。
選んだお茶を淹れてもらったら、まずは茶の香りを楽しむ。これは「聞香(もんこう)」と言うそうで、お茶を味わう前の準備体操のようなもの。お茶から漂う甘やかな空気を吸い込んでから「5 紅 Beni」をひと口飲むと、深い甘みと穏やかな渋みが広がり、口の中にじんわりと長く余韻が残る。

木箱にお行儀よく並ぶ中から、お菓子は「柿衣」をセレクト。干し柿にバターをサンドした人気商品で、ねっとりとした柿の甘さに、バターの塩気とコクが加わり、紅茶の芳醇な香りとの相性も抜群。
「あて八寸」は、かりんとうと豆菓子、棗バターが少しずつお皿にのっていて、味わいが絶妙に変化した二煎目以降のお茶と一緒に食べるためのお茶の「あて」。
茶房では、お菓子とお茶の気軽なセットや「一服一煎の小茶会」と名付けられたお茶とお菓子のコースのほか、日本茶をベースにしたカクテルも楽しめるので、夜にはバーとして利用するお客さんも多いそう。

茶器のひとつひとつや茶房内にさりげなく配されたアートのどれもが美しく、非日常的なお茶の時間を後押ししているよう。「SABOE HAKATA」は、歴史とモダンが溶け合いながら、茶の新しい楽しみ方を提案してくれる場所。日常の喧騒を忘れ、ただお茶と向き合う。そんな贅沢な時間を過ごしたくなったら、ぜひ訪れてみて。
1階のショップスペースには洗練されたパッケージの「T., Collection」の茶葉が並ぶほか、「HIGASHIYA」の和菓子もセレクトされている。とくに気になったのが、店頭の小窓で販売される蒸したての饅頭。これを片手に博多の町を歩くのも楽しそうだ。
SABOE HAKATA(サボエ ハカタ)
福岡県福岡市博多区御供所町5-27 グラムビル御供所町
tel.092-260-8855
営業時間/売店 11:00〜19:00、茶房 13:00〜23:00(日曜・祝日 13:00〜19:00)
定休日/水曜
https://saboe.jp/
「mêek」@大手門

カオソーイ専用の特注麺を使ったこだわりの一杯を堪能
「mêek(メーク)」は、この地で50年続いた喫茶店「雲」の名をタイ語で受け継ぎ、2022年6月にオープンしたタイ料理店。その歴史を感じさせるレトロな店内にはカウンター8席と小さなテーブルが一つ。窓から見える公園の緑が、穏やかな時間を感じさせてくれる。
今回のお目当ては、山田製麺(以下補足あり)に特注したという平打ち麺を使用したカオソーイ。最近もっぱらエスニックがマイブームで、福岡に行くならここのカオソーイが絶対に食べたい! と、旅行の数週間前からInstagramをチェックして、事前に予約をしてからいざお店へ。
カオソーイは、ココナツミルクの風味豊かなカレースープに、茹で麺と揚げ麺を合わせたタイ北部の名物。ココナツミルクの甘みが感じられるスープは濃厚かつスパイシーで、もっちりとした食感の平打ち麺によく絡む。食感のアクセントになっている揚げ麺もポリポリと食べつつ、ライムや高菜で味変しながらおいしく完食。

ランチはメインのほかサラダがセットになっていて、この日は無農薬のケールと挽き肉のサラダに、ココナツソースのドレッシング。ココナツ好きにはたまらない一皿で、大満足のランチタイムに。
店主の橋本博さんは、19歳の頃からタイに通い詰め、エスニック料理店や中東料理店での経験を積んだ後、念願のタイ料理店をオープンしたそう。 夜はコースを楽しめるらしく、次回の福岡旅行ではぜひトライしたい!
mêek(メーク)
福岡県福岡市中央区大手門3-1-21
営業時間/11:30~14:00(13:30L.O.)、18:00~22:00(ディナーは予約制のコースのみ、最終スタート19:00)
定休日/日・月曜、不定休
Instagram/@meek_kumo
番外編:「山田製麺」

フーディに愛される製麺所の生麺をお土産に
「mêek」を訪れたきっかけは、山田製麺のInstagram。山田製麺は、地元のおいしい天然水をいかし、うどんや中華麺など多彩な麺類を製造している福岡県宗像市に位置する製麺所。フーディな知人から、ここの麺がとにかくおいしくて普段から取り寄せていると聞きつけ、福岡に行くならぜひ食べたいとInstagramをウォッチしていて見つけたのが先ほど紹介した「mêek」。
製麺所は宗像市にあるものの、山田製麺の麺を使ったメニューを提供するお店は福岡市内にもいくつかあり、また「スーパーマーケット マキイ」で麺の取り扱いがあるという情報をゲットして、お土産麺も大量購入。パスタ麺やうどん麺、中華麺などラインナップも豊富で、形状も太さもさまざまなこだわり麺をぜひ食べ比べてみてほしい。とんこつラーメンやうどんが有名な博多だからこそ、麺のお土産は喜ばれるはず。
ちゅるんとした喉越しともっちり食べ応えのある食感はやみつきになるファンが生まれるのも納得のおいしさ!
山田製麺
Instagram/@yamadaseimen
「EL DORADO」@春吉

一皿ずつに個性が宿る、季節のガラディナー
つい予定を詰め込みがちな旅先では、意識して食事の時間にゆとりを持つのもひとつの選択肢。「ホテル イル・パラッツォ」内のレストラン「EL DORADO」では、「特別」「祝祭」という意味を持つ“ガラディナー”と名付けられたフレンチのフルコースを楽しめる。
料理を手がけるのは、名店で研鑽を積んだシェフ・笹尾十三夫さん。“楽しさの後の爽やかな余韻”をテーマに、素材の持ち味を生かした料理には、一皿ごとにちょっとした仕掛けが潜んでいる。
季節の食材を主役に据えながらも、和のニュアンスをさりげなく効かせた料理が多く、どこかほっとする味わい。メインの食材に香ばしさや酸味、ハーブの香り、食感などのアクセントを添えることで、ほかでは味わえない繊細なバランスが生まれている。

この日は、軽く炙ったマグロにエシャロットを合わせたアミューズからスタート。しっとりとしたうま味の中に、香ばしさとシャープな香りがアクセントに。スープは、まいたけの風味を効かせたかぼちゃのポタージュ。甘やかでコクのあるひと皿に、きのこの香りがふわりと重なる。
フォアグラと季節野菜、ゆり根を合わせたリゾットや、カレー風味のソースを合わせた鰆は、軽やかな酸味が効いていてするすると食べ進められてしまう。
アミューズからデザートまで全6品+食後のコーヒーとミニャルデーズという構成で、存分に優雅な時間を過ごせる。

ゆったりとした気分で過ごせるソファ席と、カーテンで仕切られた半個室の空間のプライベート感も心地いい。落ち着いた色調でまとめられた空間が特別な夜に寄り添い、会話も料理もワインも、時間を気にせず楽しみたくなる。
EL DORADO(エル・ドラド)
福岡市中央区春吉3-13-1 ホテル イル・パラッツォB1
0570-009-915
ガラディナーは19:00一斉スタート、コース¥16,500
無休
https://ilpalazzo.jp/lounge
「Filles et Garcons」@大手門

パリの片隅を思わせる、福岡のとっておきカフェ
パリの街角を思わせる赤い扉に思わず目を留めてしまう、入る前から気分を高めてくれるカフェ「Filles et Garcons」。店名はフランス語で「女の子と男の子」という意味で、フランスの片田舎出身の二人がパリで始めたカフェをイメージしているのだそう。
パリのカフェ文化をなぞるように、エスプレッソやカフェクレーム、濃厚なホットチョコレートまで、クラシカルなドリンクがラインナップ。
コーヒーと相性抜群のスイーツは、クレームブリュレや季節のパルフェが人気。ほかにも、ウィークエンドシトロンやフィナンシェなどの日替わりで登場する焼き菓子も見逃せない。ショーケースには個包装された焼き菓子も並んでいるので、お土産やちょっとしたギフトにもぴったり。
夕方以降はナチュールワイン片手にゆったりとした時間を過ごすのも◎。昼と夜で空気が変わり、どの時間に訪れても居心地がいい。
Filles et Garcons(フィーユ エ ギャルソン)
福岡県福岡市中央区大手門3-2-26-10
営業時間 / 11:00〜23:00(日曜のみ18:00まで)
定休日 / 月曜
Instagram/@fillesetgarcons_cafe
「COFFEE COUNTY Fukuoka」@高砂

福岡で愛され続けるロースターでこだわりの一杯を堪能
久留米発のロースター「COFFEE COUNTY」が、福岡・高砂に構えた「COFFEE COUNTY Fukuoka」も、福岡に行くなら一度は訪れたいカフェの一つ。産地との密なつながりと、豆のキャラクターを最大限に引き出す技術が共存していて、こだわりの詰まった浅煎りの一杯が旅の疲れをほっと癒やしてくれる。
この日は、ニカラグアのイエローパカマラをオーダー。なんとカップ・オブ・エクセレンスで6位を獲得したロットだそう。ニカラグアのセルヒオさんは、「COFFEE COUNTY」が長く信頼関係を築いてきたという生産者で、まさに特別な一杯。口に含むと、マイヤーレモンや杏、青りんごなどの多彩な果実感が弾けて、透明感ある酸とジューシーさが心地よく感じられる。
そして、福岡県内に3店舗を構える「COFFEE COUNTY」の福岡店でしか食べられないのが、このブラジリアンプリン。練乳の風味を感じる濃厚な甘さのプリンで、食感もぎゅっと固くもっちりとしているのが特徴。しっかりと甘いのでコーヒーとの相性も抜群だ。
COFFEE COUNTY Fukuoka(コーヒー カウンティ フクオカ)
福岡県福岡市中央区高砂1-21-21
092-753-8321
営業時間/11:00~19:30
定休日/水曜
Instagram/@coffeecountycc
朝ごはんがおいしいホテル

旅先の朝食は、一日のはじまりを彩る大切な時間。博多には、地元の食材をいかした郷土料理を味わえる朝食や、洗練された空間で優雅に過ごせるモダンな朝食など、ホテルごとに異なる魅力が広がっている。その日の気分や旅のスタイルに合わせて、朝のひとときを特別なものにしてくれる朝食をお届け。
「ホテル イル・パラッツォ」@春吉

名建築で自分好みの朝ごはんを堪能
2023年10月にリニューアルオープンした「ホテル イル・パラッツォ」の朝食はビュッフェスタイル。
和食から洋食、フルーツやデザートまで幅広いラインナップの中でも、とくにパンの種類が豊富で、数種類のデニッシュやクロワッサンをリベイクして食べられる。スプレッドやチーズ、サラダと合わせれば、自分だけのこだわりワンプレートが完成!
一方、和食コーナーには博多名物の明太子や、ジューシーな唐揚げなど、しっかりと食べたい派にもうれしいメニューが充実。炊きたてのご飯にたっぷりの明太子をのせれば、それだけで大満足の一杯に。だしがしっかりしみた煮物や香の物も揃い、洋食派も和食派も、それぞれの理想の朝食を叶えられる。

日本初のデザインホテルとして1989年に開業した「ホテル イル・パラッツォ」はリニューアルを経て、当時の意匠を引き継ぎつつも現代的に蘇った。
20世紀を代表する世界的な建築家イタリア人のアルド・ロッシと、日本を代表するインテリアデザイナー内田繁がタッグを組んだデザインホテルは、外観も内装も圧倒的に華やかで、一歩足を踏み入れれば非現実的な雰囲気を味わえる。
黄金のファサードがそびえ立つラウンジはまさにホテルの顔とも言える鮮やかな空間。そんな場所で朝食を食べられるなんて贅沢すぎる!
生まれ変わった客室も、シンプルながら各所にデザインの息吹を感じるモダンな雰囲気。旅の高揚感に浸るには、これ以上ない舞台が整っている。壁や照明、家具の一つひとつに、ロッシと内田の美意識が宿り、ホテル全体がまるでアートのようで、ただ滞在するだけで心が満たされるはず。

「ホテル イル・パラッツォ」では、朝食ビュッフェ以外の時間帯には、「オールデイダイニングブッフェ」を提供していて、そちらも見逃せない。宿泊者はチェックイン後、このビュッフェで自由にスイーツやドリンクを楽しめる。ディナーのためのお腹の余裕を残しつつ…かわいらしいスイーツや旅の疲れを癒やす温かい飲み物でひと息つけるのがうれしい!
ホテル イル・パラッツォ「EL DORADO(エル・ドラド)」
福岡市中央区春吉3-13-1 ホテル イル・パラッツォB1
0570-009-915
営業時間/朝食ブッフェ7:00~11:00、オールデイダイニングブッフェ11:15~21:00
無休
https://ilpalazzo.jp/lounge
「WITH THE STYLE FUKUOKA」@博多駅南

出来立ての幸せを頬張る、特別なモーニング
博多駅から徒歩5分のアーバンリゾートホテル「WITH THE STYLE FUKUOKA」の朝食は、セミビュッフェとアラカルト。
ビュッフェは、濃厚でミルキーなチーズへと進化したミル爆(ミルク爆弾)生乳からこだわって作ったチーズや、糸島市で育った野菜から作られたフレッシュドレッシングのサラダ、鹿児島の牧場から特別に取り寄せた濃厚でコクのあるハモンセラーノなど、地産地消にこだわったラインナップ。
さらに、メインは席で注文し、出来立てを持ってきてもらえる。メインのメニューは、「博多一番鶏 水炊きフォー」や「海鮮丼」、「明太茶漬け」、「熊本県産 延寿牛赤牛ステーキ」、「フレンチトースト」などどれも魅力的な一品ばかり。メインも何度でもおかわりできるので、ついつい欲張ってしまう。
また、ドリンクも豊富で、コーヒーや紅茶はもちろんスパークリングワインやビールもセレクトできるので、朝から贅沢な気分を味わえること間違いなし。
時間は7時30分から12時30分までとゆったり設定されており、朝食後に部屋でくつろいだ後、再び訪れるのもOK。4階の「The Pent House」での朝食は宿泊者限定なので、存分にのんびりできるのも満足度が高いポイントのひとつ。

博多駅から徒歩数分とは思えないほどのグリーンが広がる「WITH THE STYLE FUKUOKA」は、16室すべてがスイートルームになっていて、それぞれが個性豊かで洗練されたデザイン。ミッドセンチュリーの家具やアートが配され、スタイリッシュな空間になっている。
客室内の冷蔵庫に用意されたドリンクはすべて無料で、追加注文も可能という太っ腹なサービスも。また、プライベートサウナやジェットバスも完備されているので、心身ともにリフレッシュするウェルネスな滞在を堪能できる。
宿泊者限定のペントハウスのほかに、ホテル内には宿泊者以外も利用できるレストラン&バー「ALL DAY DINING COTTON.」が併設されていて、そちらで美食の数々を楽しむのもよさそうだ。
WITH THE STYLE FUKUOKA(ウィズザスタイル フクオカ)
福岡県福岡市博多区博多駅南1-9-18
092-433-3900
https://www.withthestyle.com/Google Map
「三井ガーデンホテル福岡中洲」@中州

あれこれ楽しみたくなる、贅沢なうま味を味わうビュッフェ
「三井ガーデンホテル福岡中洲」の朝食は、福岡の名店「小野の離れ」が監修した贅沢なメニューがずらりと並ぶ、圧巻のビュッフェスタイル。長浜市場から届く新鮮な魚介や、九州各地の食材をふんだんに使っていて、土地の魅力がぎゅっと詰め込まれている。
必食の目玉メニューは、目の前で職人が握るお寿司。羽釜で炊き上げた糸島産の米に、鹿児島の黒酢と熊本の赤酒を合わせたシャリのまろやかな酸味とほのかな甘みが、玄界灘の魚介と絶妙に絡み合う。
福岡の郷土料理である胡麻魚や九州風だし巻き卵なども見逃せないけれど、焼き物やご飯のお供も充実しているのでぜひチェックを。脂ののったとろさばと、ピリッと辛みのきいた明太子を合わせた「博多明太とろさば塩焼き」は、ご飯がすすむ一品。ほかにも、くらげ明太子、いか昆布ふりかけ、自家製からし高菜、野沢菜漬物などが揃い、糸島米のふっくらとした甘みを存分に堪能できる。

「小野の離れ 福岡本店」は、博多の伝統・山笠をイメージした空間が広がり、まるで祭りの始まりのような高揚感に包まれている。寿司を握る音、湯気の立つ蒸し寿司、焼き魚の香ばしい香り——五感を刺激するひとときがと九州の美食を心ゆくまで楽しみ、エネルギーに満ちた一日をスタートさせたい。
三井ガーデンホテル福岡中洲
福岡県福岡市博多区中洲5-5-1
092-263-5531
営業時間/朝食6:30~11:00(最終入店 10:00)
https://www.gardenhotels.co.jp/fukuoka-nakasu/restaurant/