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パンマニアが今夢中の「ロブロ」とは? 本場デンマークのパン屋で最新事情をキャッチ

いまパン巡礼に行くべき、デンマークの人気パン屋を池田浩明さんがリポート

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コペンハーゲン

いまパン巡礼に行くべき都市は? パリ? NY? いえいえ、最注目はデンマークのコペンハーゲン! ライ麦パン「ロブロ」が世界から脚光を浴び、ロブロで作るオープンサンド「スモーブロ」が日常食。オーガニック農家から直送の麦が普通に使用される最先端のパンシティ。ブレッドギーク(パンオタク)池田浩明さんがレポート。

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Lille bakery/リル・ベーカリー

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世界一のレストランといわれる「noma」系列の「108」で出会った料理人MiaさんとSaraさんがオーナー。レストランほど堅苦しくなく、楽しく過ごせるコミュニティを作りたいと、コペンハーゲン中心部からやや離れたこの場所にオープン。2人に共感した地域の人たちの寄付によって成り立つ。生産者との触れ合いも目的とし、月に1度ファーマーズマーケットを開催。

生産者がお店に持ってきてくれた、オーガニックの乳製品やとびっきりおいしい季節の野菜や果物でなにを作ろうかスタッフがみんなで考えて、パンや料理にする。

さらにその中から、農作物の少ない冬に備え、シロップやジャムやドライハーブも作って保存。食品ロスをなくし、すべて使い切る。

たとえば、残ったパンは発酵させてブレッドビネガーに。そんな生産者や自然への思いが、いい空気感となって、店の中に充満している。

テラスでパンをイートイン

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(右)卵のスモーブロ。しっとりと繊細な卵のそぼろ。たっぷりのオリーブオイルでなめらかに、チーズ、マヨネーズが渾然一体となって溶け、ロブロのコクが全体の味を支える。

(左)ドライハーブのデニッシュ。デンマーク産の豊潤なバターの風味がごちそう。濃厚さ、鼻腔をくすぐる発酵の香り、甘さ。トッピングのかりかり砂糖もバターと生地といっしょにじゅわりとろける。巻き込んでいるのは自家製のハーブ。バニラやシナモンのような外国産を使わず、地産地消で菓子パンを作る工夫も見事。

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重厚な焼き色も魅力のロブロ

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押しライ麦をトッピングしたロブロ。ロブロならでは、水分たっぷり、成形もできないようなどろどろの生地を型に入れる。ぎりぎりまで焼き込んでこの色合いに。


発酵を促進させるためのモルト(麦芽)さえ手作り。ゆえに、粗挽きのライ麦から甘さが、香りが、力強く立ち上がる。それでいてテクスチャはしっとりやさしい。口溶けもなめらかで、合わせる料理も引き立てる。




サワードウからペストリーまで攻めたパンが並ぶ

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1年かけて見つけた建築学校の作業場だった建物を改装。ヴィンテージの家具や植物が置かれ、手作り感あふれる。肩肘貼らない抜け感がやすらぎを与えてくれる。








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すべてがさりげなく、それでいておしゃれ

lille bakery

(左上)使用する小麦は、コペーンハーゲン近郊のオーガニック生産者コーンビーから、ライ麦・オーランド小麦も、同じく近郊のオーガニック生産者ブリンクホルムから直送されたもの。その他、穀物も信頼のおける生産者のものを厳選。(右上)グルテンフリーグラノーラなど自家製の食雑貨。(右下)ナチュラルワインや卵や牛乳などよりすぐりの食材を販売。(左下)窓ガラスにパンのメニューが描かれている。

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コペンハーゲン中心部からバスで約20分のレフス・ヘレス島に位置。以前は工業地帯だったが、港におしゃれなカフェができたり、工場をリノベしたフードコートができたり。都市の中のリゾートのようなエリア。


Lille bakery(リル・ベーカリー)
Refshalevej 213B, 1432 København, Denmark
インスタグラム/@lillebakery

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THE BREAD STATION/ザ・ブレッド ステーション

the bread station

オーガニックのベーカリーカフェチェーンであり、デンマークでサワードウの認知に大きく貢献した「エマリーズ」を立ち上げたレジェンド、ペア・ブロンさんがオーナーシェフを務めるお店。

十分な日照時間と温度があるサムソー島(デンマーク・中央ユトランド地域)の生産者から直送されたオーガニックの小麦・ライ麦を自家製粉。選び抜いた麦をじっくり醸し、理想のパンを作り上げる。

まさに、美食の殿堂

the bread station

デンマーク伝統の「ティビアケス」などのデニッシュペストリーはイタリアから輸入の小麦から。とにかく上質なもの以外見向きもしないのがペア・ブロンさん。









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革新をもたらしたロブロサンド

the bread station

ロブロといえば、スモーブロのようなオープンサンドしかなかったデンマークに、はじめて2枚のスライスで具材をはさむサンドイッチを持ち込んだのが、ブロンさんだ。

一般には出回らないデンマークの美食界を牽引する料理人ダニエル・レッツ氏のスモークサーモンを使い、注文後にできたてを提供する究極のサンドイッチ。ファノ島産のサーモンは舌触りはなめらかにして、香りは清らか、泳ぎ出しそうなほどの逸品。



注目のパンを食べ比べ

the bread station

左側プレート、左上から下へロブロ、シード入りロブロ。ひよこ豆のような滋味と栗のような甘さへと変化、赤ワインのような馥郁たる香りを放ち、ライ⻨の深みをまざまざと教える。基本のロブロにはシードを使わない。それが「もっともデンマークらしい伝統かつ基本のロブロ」とペアさんは話す。

左側のプレート、右側、バンズ。上2種は自家製粉の全粒粉と、厳選したイタリア産小麦粉(中でも灰分の高い香り豊かなもの)のブレンド。下は自家製粉したパープルウィート(紫小麦)。あずきに似た華やかな香り、玄米のような奥深さ。食感はぷるぷる、湿りが口溶けをうながす。

右側のプレート一番上は、定番であるケシのデニッシュ「ティビアケス」。左は、デンマークのお祝い菓子「クランセケーエ」。右はシグニチャーである焼菓子「ヒンベア・スニッテ」(ラズベリースライス)。

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レジェンドが作るサワードウバンズ

the bread station

サワードウバンズの製造風景を実演。自家製粉した全粒粉を自家製のルヴァン種で一晩醸す。高加水生地を保管庫から出したら、1個分の大きさに切って、すぐオーブンへ。シンプルな作り方だからこそ、生地にストレスがかからず小麦のおいしさを引き出せる。まさに小麦のおにぎり。これって日本の「高加水チャバタ」にすごくよく似ている! (右下)ごろごろ積んで無造作に販売される様子も愛らしい。

なんと駅舎がパン屋

the bread station

コペンハーゲン中央駅から電車で約15分のシャルロッテンルンド駅がそのままパン屋というおとぎ話のようなロケーション。パンを買ったら電車にすぐ飛び乗る、パン好きの夢が実現。電車から流れる風景を眺めながらかじれば『世界の車窓から』気分に浸れる。

The BREAD SATION(ザ・ブレッド・ステーション)
Charlottenlund Stationsplads 2, 2920 Charlottenlund, Denmark
http://thebreadstation.com/

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Juno the bakery/ジュノ・ザ・ベーカリー

juno the bakery

元NOMAのエミール・グラセアさんがオーナーを務める大人気店。交差点の角にあり、週末は行列で沸き返る。木々で彩られたテラス席は居心地よいガーデン。

グラセアさんはスウェーデン出身。ゆえにスウェーデン発祥のパンであるカルダモンロールやセムラをシグニチャーとしている。

人々が押し寄せる人気店

juno the bakery

高加水のサワードウや、ロブロといった日常のパンはもちろん。カルダモンロールやデニッシュペストリーといったスイーツ系も得意とし、一日中こまめに焼き上げていつも焼き立てを並べているのもうれしい。デンマークのロースタリー「プロローグコーヒー」の豆を使ってコーヒーも提供。






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シンプルにして華やかなロブロ

juno the bakery

「ジュノ・ザ・ベーカリー」のロブロは、オーガニックライ麦を使用したシード入り。焦げるほど焼いた表面が発するモルティな甘さ。濃厚な香ばしさと、カラフルな酸味、そしてスパイシーさは、スペシャティコーヒーを思わせる。

ぼろぼろと崩れてくれる表面と、シードのつぶつぶ感が快ちよい食感を生む。ナッツではなく、発芽ライ麦を使用して、生地の風味を邪魔しないのもうれしい。




チーズパン「BMO」はマストバイ

juno the bakery

「ジュノ・ザ・ベーカリー」でみんなが買っていっていたのが、BMO(Bolle Med Ost=チーズ入りバンズ)。レジで注文するとオーダーがBMO製造カウンターに伝えられる。バンズを切り込みを入れ、スライサーでコンテチーズを削って、たっぷりのバターとともに目の前ではさんでくれるのだ。

このサワードウバンズもすごかった。バーベキュー会場かという濃厚な香ばしさと、ばりっと弾ける食感。なのに高加水生地で中身は湿って、舌の上にオンした途端にとろけだし、バターのとろけと一体に。そして、コンテチーズの熟成感がたなびく、完璧な食べ物。

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シグニチャーはカルダモンロール

juno the bakery

「ジュノ・ザ・ベーカリー」名物のカルダモンロール。このあふれるミルキーさ、芳醇極まりないデンマーク産バターの香り、とろとろの溶け味……生地がホワイトチョコを彷彿とさせるとは!そんなまったり感の中で粗挽きのブラックカルダモンが咆哮、アクセントに。1日中こまめに焼きあげ、常に焼き立てを提供し、クオリティを保っている。ゲットしたなら即かじりつく勢いで、テラス席で食べたい。

Juno the bakery(ジュノ・ザ・ベーカリー)
Århusgade 48, 2100 København, Denmark
インスタグラム/@juno_the_bakery

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Il Buco/イル・ブーコ

ilbuco

99%の食材をデンマーク国内から調達する地産地消のレストランがベーカリーとカフェも併設。冬が長く農産物のとれない時期が長いデンマークで、これは驚異的だ。

提携している生産者や農家から仕入れた食材を使用。地下の食品庫には、夏の間にとれた食材を干物や発酵などさまざまな方法を使って熟成・保管されている。

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カウンターでペストリーを選んでイートイン

ilbuco

朝食やランチ、コーヒーブレイクとさまざまなシーンで利用できる。カウンター上には、デンマークの定番ペストリーであるスパンダワーをはじめ、クイニーアマンやクロワッサンといったヴィエノワズリー、クッキーやカヌレが並ぶ。

もちろん、これらのスイーツも素材はデンマーク産だけ。ゆえに、マジパンをアーモンドではなくデンマーク産インゲン豆から作る。シナモンロールも南国でしか取れないシナモンは抜き、シンプルなシュガーデニッシュが提供される。

サワードウ&ロブロはまじめに手作り

ilbuco

店の奥では、オーガニックの小麦粉・ライ麦を100%使用し、パンを手作り。ロブロの製造には4日をかける。初日に玄麦を水に浸し、2日目にサワー種とライ麦を仕込み、3日目に焼き、香りが馴染みスライス可能となった4日目に販売する。

(左上)サワードウ製造風景。右上、自家製粉に使用する玄麦。(左下)サワードウに使用するルヴァン種。(右下)燕麦(えんばく)のオートミールを混ぜ込んだサワードウバンズのBMO。燕麦の香りは味わい深く、染みるようだ。北海チーズをはさんで。

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