メンズ・ファッションファッションウィークとクチュールのはざまで、「マーク ジェイコブス」が、“ニューヨークはまだ健在である”と業界に証明した。その夜、ブランドは2026年のランウェイショーをニューヨーク公共図書館本館で開催。ジュリア・フォックス、『RHONY』のサイ・デ・シルバ、ティナ・リャンなどがゲストとして来場。昨シーズンのボリューム満点のコレクションを身にまとい、大理石の階段をつハイヒールの長い足先で軽快にたたきながら上っていった。
「マーク ジェイコブス」のショーの魅力は、彼の選択のおもしろさにある。前シーズンの流れをリセットしてゼロから始めるのか、それともアイデアを継続し、限界まで突き詰めるのか? 今回のコレクションはその両方だった。インビテーションに記載の通り、ショーは午後7時30分きっかりに開始。午後7時36分には全19ルックが披露され、すべてが夢であったかのような余韻を残した。
お気づきの通り、デザイナーのマークは過去数シーズン“プロポーションと次元”に夢中だ。モデルたちは人形のようで、誇張されたシルエットやカートゥーン的な美しさは、さながら『Flat Stanley(ぺちゃんこスタンレー)』のモード誌版で、まるで時間が止まったような印象を与える。今季はそのコンセプトをさらに推し進め、ピンナップ風の丸みを帯びたフォルム、肉厚にパッドが入ったヒップ、四角く落ちたウエストライン、そして空間を飲み込むほどの巨大なパフショルダーが登場した。そのゆがんだ身体が放つ不気味な雰囲気は、まるで廃虚と化したアンティーク人形の家に流れるBGMのような音楽でより強調された。
素材とスタイリングの両面で、破壊のエッセンスが加わり、絵画のようなシルエットの中に、パンクなアティチュードが混じる。前回のコレクションがアメリカのクラシックなアイコンの装いを研究したものだとすれば、今回はいわば「その反抗的な弟」。『世にも不幸なできごと』の世界観に夢中になって育ったような人物像が浮かぶ。
真のパンク精神にのっとり、ビクトリア調のロマンチックなシルエットは構築され、ねじ曲げられ、目の前で解体されるかのよう。ネックラインは高く、ヒールはそれ以上に高い。リボンは大きく膨らみ(ブランドが過去数シーズンにわたって採用したモチーフ)、レースは下着の上に不規則に重ねられ、パールはコーンブラならぬバレット(弾丸)ブラのようなビスチェに無造作に垂れ下がっていた。
今季のコレクションは、マーク・ジェイコブスによる“解体のマスタークラス”とも言える仕上がりだ。まるで1枚のコインのような二面性をもつ人形のようである。どちらの側面を選ぶか——それは見る者に委ねられている。