「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」は、毎年1月にフランス・パリのポルト ド ベルサイユ見本市会場で開催される下着、水着、ラウンジウェア、アクティブウェア、靴下などを扱うブランドが出展するトレードショー。世界中からバイヤーやプレスが集結することから“下着のパリコレ”などと例えられることも……。2025年は1月18〜20日に開催され、220ブランドが出展。3日間で99カ国から1万6000人が来場した。
日本からはランジェリーブランド「アロマティック」「ユウビ カワノ」「ラ・シレーヌ」とデリケートゾーン用アイテムを展開する「イロハ」が出展。3つのランジェリーブランドはそれぞれランウェイショーにも登場し、存在感を発揮。もちろん、「オーバドゥ」「シャンテル」「リズ シャルメル」「ワコール」などのビッグブランドも大きなブースを設け、華やかさを添えていた。大御所から新進気鋭のニューカマーまでそろい、ランウェイショーやトレンドセミナーも開催される同展は“ランジェリーの祭典”さながら。そんな同展でキャッチしたトレンドをご紹介!
【トレンド1】トランスペアレント
肌に薄くヴェールを重ねたような透明感と軽さが加速
ファッションの世界でもシアーな素材は定番となりつつあるけれど、もともとチュールやレースなど透ける素材が主なランジェリーはさらにその透明感が加速。まるで肌に1枚薄くヴェールを重ねたような軽い素材感で、それを生かすべく余計な装飾を省いているのも特徴。
フレンチランジェリーを代表するブランドでありトレンドをけん引する「オーバドゥ」からも“SHEER EMOTION”と名付けられたコレクションがラインアップ。チュールの縁にはグラフィカルなエンブロイダリーレースをあしらい、クールでシャープな印象に。
シモーヌ ペレール(Simone Pérèle)
ベージュにブラックを重ねたLIGHT TATOO
1949年創業の歴史あるフレンチブランド「シモーヌ ペレール」は、ベージュの土台にブラックのエンブロイダリーレースを重ね、エレガントなデザインとセンシュアルなムードをミックス。このカラー名は“LIGHT TATOO”。ベージュ×ブラックのカラーコンビはタトゥーエフェクトとも呼ばれ、2025年秋冬は多くのブランドで登場していた。
エッジ オー ビヨンド(EDGE O’BEYOND)
肌の透け感を強調するようなセンシュアルなレース
2014年創業にロンドン・ノッティングヒルで誕生した注目のブランド「エッジ オー ビヨンド」。小さいブランドながら、A〜Hカップまで展開し、イギリス国内で製造している。フェミニンなレースを使ったエッジの効いたランジェリーがこのブランドの持ち味。柄の間隔が広いレースは、肌の透け感が強調されるよう。ロングスリップはワンピースとして楽しみたい。
【トレンド2】レオパード
ブライトカラーやシアー素材で今年風にアップデート
プリントでもレースでも、とにかく多用されていたのがレオパード。ランジェリーのモチーフとしては定番的ではありながら、ブライトカラーにしたり、トランスペアレントな素材にプリントしたりして今年風にアップデート。エレガンスを漂わせて大人のレオパードに仕上げているのがポイント。
2024年秋にデビューした「シャンテル プルプ(CHANTELLE PULP)」は、ブライトなカラーレンジと豊富なサイズ展開が特徴。フロッキープリントを施した、鮮やかなブルーのレオパードはアンダー80/Hカップまでサイズ展開あり。
アンダーステイトメント(UNDERSTATEMENT)
シアーな素材にプリント、快適性と今っぽさを両立
女性をエンパワーするブランドとして、3人の女性によって2017年にスウェーデンで誕生した「アンダーステイトメント」。シアーな素材にピンクのトリミングをあしらってアクセントに。女性が自分のために選ぶランジェリーとしてノンストレスな心地よさを追求するだけでなく、ビジュアルには一切修正を加えないことをポリシーとしている。
エロミ(elomi)
レオパード柄でトレンド感をアピール
CカップからKKカップまで展開する、ワコールホールディングス傘下のブランド「エロミ」。スタイリッシュなデザインと確かなサポート力で若い女性を中心に人気上昇中。もちろん新作にはトレンドのレオパード柄を起用。「エロミ」の好調ぶりが示しているように、同展では、ブラジャーの平均カップサイズが大きくなっている事からプラスサイズの重要性を説いていた。
【トレンド3】ウォーターカラープリント
水彩画のような透明感が新たなトレンドに
初出展のニューカマーの中で目についたのが、まるで水彩画で描いたようなウォーターカラープリント。レオパードほどの広がりではないものの、いち早くトレンドを楽しみたいなら取り入れる価値あり。シアー素材との相性も良くキャミソールやスリップはウェアとしても着られ、見せブラとして楽しめそう。
現代のティーンのためのランジェリーとしてデビューした「21マーズ(21MARS)」も、ファーストコレクションにウォーターカラープリントを加えた。カジュアルなデザインと明るいカラーが身に着ける人のフレッシュな魅力を引き立て、揺らぎがちな心を元気にしてくれそう。
モン ティロワー(MON TIROIR)
ハッピーな気分になれるカラフルランジェリー
フランス語で「私の引き出し」を意味する「モン ティロワー」は、2020年に中国にルーツを持つ3人の女性が設立。ブランド名には“ランジェリーをしまう引き出しは、最もプライベートな場所であり、そこにたくさんの色が並んでいたらそれだけでハッピーになれる”--そんな思いが込められている。ブラジャーはキャミソールやTシャツの上にアクセサリー感覚で着けたり、同柄のシアートップスと重ねて透けさせたり、自由な発想でコーデを楽しめる。
ゴールデンアワー ランジェリー(Golden hour LINGERIE)
夏の思い出からインスパイアされたカラー
フランス・トゥールーズ出身の27歳のデザイナー、ジュスティーヌによって設立された「ゴールデンアワー ランジェリー」。彼女の“すべての女性の自然な美しさをたたえたい”という思いがベースになっている。夏の思い出からインスパイアされたカラフルなランジェリーは、ゴールデンアワーの美しい色合いを表現しているかのよう。ゴールドのビジュー使いも、昨今多く取り入れられてるアクセント。
【トレンド4】デザインボディスーツ
コーデの幅を広げる、見せるデザインが充実
日本でもランジェリー好きを中心に愛用者が増えているボディスーツ。ヨーロッパではすでにその人気は定着していて、2025年秋冬はさらにデザインのバリエーションが増えバージョンアップ。とくに目を引いたのは、ジャッケットインにしたり透けさせたり、見せる事を前提としたデザインが多いこと。ランジェリーとウェアのボーダーレス化はますます進化している。
初出展した日本の「ラ・シレーヌ」もボディスーツが得意なブランド。起毛感のあるアニマル柄のボディスーツは、ノンワイヤーでパッド付き。下着としてもウェアとしても幅広い着こなしが楽しめる便利な1枚。
シャンテル プルプ(CHANTELLE PULP)
バスト部分に裏当て付き。スタイリッシュに着こなして
ファッション性の高さと機能性、豊富なサイズ展開で注目の新ブランド「シャンテル プルプ」は、トレンドのレオパード柄ボディスーツをリリース。バスト部分は裏当てがあり、ブラジャーなしでも着られるデザイン。ワイドパンツやデニムと合わせて、スタイリッシュに着こなしたい。XSからXLまでと多様なサイズ展開。
アノエセス(ANOESES)
エロティシズムにインスパイアされたウクライナ発ブランド
エロティシズムにインスパイアされた「アノエセス」は、2018年にウクライナで誕生。そのブランド名は心理学用語の「anoesis」に由来する。トランスペアレントな素材を用いたプレイフルなデザインのランジェリーのほか、レザーやラテックスを使用したハードなアイテムやボンデージグッズもそろう。キャットウーマン風ボディスーツは一瞬にして注目を集めそう。
【トレンド5】グリーンシェード
あらゆるトーンのグリーンがランジェリーでも人気継続中
ファッションでも人気のグリーンは、ランジェリーでもトレンドカラーのひとつ。モスグリーンからペパーミントグリーンまであらゆるトーンのグリーンが展開されている。ここ数シーズン人気が継続している色だけに、レッドやピンクなどコーディネートする色や陳列したときに隣に並べる色で鮮度を出す工夫も。さまざまな表情が出せる色だから、その人気はしばらく続きそう。
1955年創業のスロベニアブランド「リスカ(LISCA)」は、パステル調のグリーンをベースにレースとゴムに赤を加えて、それと同色のパンツを合わせ、カラーコントラストを楽しむコーデを提案。スポーティーなディティールを取り入れたプランジブラは、相変わらず人気。
ネッテ ローズ(NETTE ROSE)
ブルーからグリーンのカラートーンをフィーチャー
南アフリカのケープタウンにあるスタジオをクリエイションのベースとする「ネッテ ローズ」。フラワーモチーフのエンブロイダリーレースが特徴のブランドで、毎シーズンのトレンドカラーを採用している。もちろん2025年秋冬はブルーからグリーンのカラートーンをフィーチャー。自然の中のグリーンと溶け合ったビジュアルが、ナチュラルな色の魅力を引き出している。
ラスカーナ(LASCANA)
機能性も備えたグリーンの総レースボディスーツ
ベーシックなランジェリーからトレンド感のある水着まで、幅広く展開するドイツブランド「ラスカーナ」。ヨーロッパでは定番アイテムのボディスーツもグリーンのレースで登場。ボディスーツはウエストまわりがもたつく事なくスッキリ着られるという機能性もあり。写真のようなボトムが総レースタイプは、スキニーボトムにもひびきにくくて便利。
【トレンド6】ウォームピンク
甘く飾り立てない大人のピンクに注目!
次なるトレンドカラーとして注目されるのがウォームピンク。ピンクというと甘くフェミニンなテイストの印象が強いけれど、2025年秋冬はちょっとクールでファッションコンシャスなテイストで使われているのが特徴。レースも大きな花をモチーフにして、無駄な飾りは施さず、レースの意匠性でオリジナリティを出した“大人のピンク”。
トレンド感満載のランジェリーを展開する「シャンテル エックス(CHANTELLE X)」はリバーレースの新作でピンクを起用。アジャスターをつなげたようなシャープな飾りが、レースの繊細さとマッチしてモダンな美しさを表現している。
フリュー オブ イングランド(FLEUR OF ENGLAND)
肌に重ねると美しさを増すエンブロイダリーレース
レースの美しさを最大限に引き出すブランドとして定評のあるUKブランド「フリュー オブ イングランド」。ブリストル在住のフリューによってデザインされ、23年にわたりポルトガルとウェールズの工場で縫製されている。薄手のチュールに刺しゅうされたビッグフラワーは、肌に重ねるとまるで直接描かれたような美しさを発揮し、素肌に映える。
オーガニック ベーシック(Organic Basic)
ベーシックなアイテムのアクセントカラーに
コペンハーゲンでデザインされ、地球環境に良い素材を選び、持続可能な条件を満たした工場で製造されている「オーガニック ベーシック」。どのアイテムもデザインは至ってベーシックで、時代に関係なく愛用される事を目指している。その定番カラーの中でアクセント的に使われていたのがピンク。あらゆるカラーと相性がいいのもピンクの特徴。
【番外編】プロが選ぶパリのランジェリーショップ8選
ここからは「パリランジェリー展」の期間中にリサーチした、パリのランジェリーショップ事情をリポート。東京と比べ、路面店の数も百貨店の下着売り場で扱うブランド数も段違いに多いのがパリ。それはパリジェンヌやマダムたちがランジェリーを大切に思っている証。パリを訪れたなら、その深いランジェリー文化に触れてみて。
ファッション通なら必須!注目のフレンチブランドショップ
ファッション通にもランジェリー通にも、ぜひ訪れてほしいのが今注目のランジェリーブランド「リヴィー」と「パロマ シャジール」のブティック。どちらも独創的なデザインで、ランジェリーの枠を超えたウェアとしても着られるアイテムを多く展開している。「それどこのブランド?」と聞かれる自慢できる逸品に出合えるはず。
①リヴィー(LIVY)
今やランジェリー界のトレンドセッターと言える存在の「リヴィー」。百貨店にもコーナーがある人気ブランドだけれど、その世界観を楽しむなら路面店を訪れたい。マレ地区にあるこの店は、ダークな色調のインテリアの壁にデザイナー、リサのインスピレーション源であるビジュアルが飾られ、まるで彼女の家に招かれたような雰囲気が楽しめる。
②パロマ シャジール(PALOMA CASILE)
エッジの効いたデザインでありながらフランスブランドらしいエレガンスを漂わせる「パロマ シャジール」。ハーネスやチョーカー、カフスなどのアクセサリーも豊富にそろう。店の奥にはアトリエがあり、クチュールラインはそこで職人の手によって創られている。デザイナーのパロマもアトリエで仕事していることが多いため、運が良ければ本人と会うことができるかも。
パリジェンヌを気取って体験したい老舗ブランドショップ
フランスを代表するブランドの旗艦店が並ぶのが、バリ左岸のサンジェルマンエリア。落ち着いた雰囲気の中、顔なじみのショップスタッフと会話しながらショッピングを楽しむおしゃれなマダムたちをウォッチできる。このエリアには下記意外にも「オーバドゥ」「フィフィシャシュニル」「メゾン ルジャビー」なども店を構えるのでランジェリーショップクルーズを楽しんで。
③シモーヌ ペレール(Simone Pérèle)
フレンチエレガンスを表現する老舗ブランド「シモーヌ ペレール」。そのエレガンスを、今の時代にアップデートしたシックなインテリアの中、フルコレクションが並ぶブティック。熟練のボディーフィッターに身を任せて、ジャストフィットを見つけてもらうのも良さそう。
④リズ シャルメル(LISE CHARMEL)
フランス・リヨン発祥の「リズ シャルメル」の旗艦店がここ。地下1階から2階まで3層からなる広いブティックでは顧客を招いてパーティーが催されることも。デコレーションも旗艦店ならではで、現在は地下1階にリズ シャルメル カフェが出現している。
ショッピング天国!欲しいが見つかるプチプラショップ
パリにだってプチプラランジェリーはある! もちろんプチプラでもフレンチテイスト。そんなお手頃価格のアイテムを見つけたいならショッピングセンター「ウエストフィールド フォーラム・デ・アール」へ。下記以外にも「ヴィクトリアズ・シークレット」「インティミッシミ」「H&M」「モノプリ」などが集結しているからとても便利。
⑤エタム(Etam)
予算を抑えたフランスっぽいランジェリーを買いたいなら、迷わずここ「エタム」へ。ラウンジウェアも含め、旬なデザインのお気に入りがきっと見つかるはず。かわいいプリントの箱入りショーツはお土産にも◎。時間があればオペラ地区にある旗艦店もおすすめ。
⑥アンディズ(Undiz)
「エタム」よりもカジュアルで妹ブランド的な存在の「アンディズ」は、価格もより抑えめ。スポーティーなデザインやカラフルなランジェリーが好みなら、こちらをチェック。日本ではなかなか見られない色や柄のメンズボクサーも豊富にそろっている。
あるゆるブランドが一堂にラインアップする百貨店
時間を節約しつつランジェリーショッピングしたいなら、便利なのはやはり百貨店。大御所ブランドはひと通りそろっているし、パリの百貨店はデビュー間もない若手ブランドのバイイングにも積極的だから、新たな出合いがあるかも。
⑦ギャラリーラファイエット(Galeries Lafayette)
パリを代表する百貨店と言えば「ギャラリーラファイエット」。とにかくフランス国内外のあらゆるブランドがそろっている。中でもキム・カーダシアンプロデュースの「スキムス」、UKランジェリー「エージェント プロヴォケーター」やアムステルダム発「ラブ ストーリーズ」は必見! できれば隣の「プランタン・オスマン」にも足を運んで。新しいブランドのポップアップイベントが見られるかも。
⑧ボン・マルシェ(Le Bon Marche)
左岸の百貨店「ボン・マルシェ」は、観光客でごった返すオペラ地区の百貨店とはまったく違う雰囲気で、パリジェンヌやマダムたちがゆったりとショッピングを楽しんでいる。ここにしかないブランドもあり、ランジェリー通ならぜひチェックしたいところ。フランスブランド「エレス」の売り場が広く、冬でも水着が充実しているのも見どころ。