文化・芸術関連の活動などを支援するニューヨークの非営利団体「92nd Street Y」は先ごろ、新進のフェイシャル・ジュエリー・アーティスト、クラウディア・レピックの活動を一定期間にわたって支援することを発表した。つまり、この新しいジュエリーは2020年春に大きな注目を集めるトレンドの一つになるかもしれない。
現在開催中の2020年春夏パリ・ファッション・ウィークでも、「スキャパレリ」のダニエル・ローズベリー、「ヴァレンティノ」のピエールパオロ・ピッチョーリ、ジャンバティスタ・ヴァリといったデザイナーたちがそれぞれのショーで、色鮮やかに光り輝くフェイシャル・ジュエリーをつけたモデルたちをランウェイに送り出している。
これらのフェイシャル・ジュエリーは、芸術性をより高めたメイクアップというよりも、ラグジュアリーなドレスを生み出す職人技の延長として実現したもの。
また、注目を集めるこの繊細なアクセサリーは、HBOのドラマ『euphoria』(ユーフォリア)にも影響を受けているかもしれない。風変わりなアイメイクやその他の大胆さは、ニューヨーク・ファッション・ウィークに登場したモデルたちの姿にも表れていた。
エストニア出身のレピックは、自国の先住少数民族セトゥ人が何重にもして身に着けるコインをつなげたようなネックレスにインスピレーションを得たという。銀色に光るセトゥ人のネックレスは、歩くと鈴の音のような音をたてる。レピックは「ジュエリーの後ろに隠れることを思いついた」と述べている。
レピックのフェイシャル・ジュエリーは、つける人の顔を隠し、ゆがめて見せる。それは従来、魅力的だとされてきたことでもある一方、ジュエリーに対してこれまで求められてきたものに挑戦するものでもある。
少数ながら増えつつあるフェイシャル・ジュエリーのアーティストたちは、このジュエリーを新しい、そして思考を喚起するものとして利用している。彼らが伝えようとするメッセージには、政治的なものも含まれる。プロダクトデザイナーのエヴァ・ノヴァクは、顔認証システムをブロックするものとして、エレガントなゴールドのマスクをつくった。
ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ・カレッジで学んだデザイナーのジョアン・タンは、ゴールドやパール、ダイヤモンドをあしらったノーズカフのシリーズを発表している。鼻ピアスではなく「使う人が自由にカスタマイズ」できるデザインだ。
日本人デザイナー新里明子もまた、実際に体に何らかの変化を与えなくても、身に着ける人が自分に自信を持てるようになるジュエリーを生み出している。また、メディアにも取り上げられているフランスのデザイナー、カミーユ・モンコンブルがデザインした目の周りを取り囲むようなジュエリーは、人間の感情を表現している。
フェイシャル・ジュエリーは、デジタルフィルターとフォトショップの時代に、私たちが世界に向けて自分を表現するための次のステップとなるものかもしれない。少なくとも、何粒かのダイヤモンドを身に着けるためのいい口実にはなるだろう。
レピックの新作は、現地時間2019年11月18~24日に開催されるニューヨーク・ジュエリー・ウィークで92nd Street Yが行う「Hall of Mirrors」で発表される。来年のオフランウェイはフェイシャル・ジュエリーをまとったファッショニスタが増殖するのか、注目したい!
Courtesy of Claudia Lepik and Joanne Tan via Instagram Photo: Getty Images From TOWN&COUNTRY