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studiotamat rome apartment living room
ZhangHuiqi

クラブ音楽から着想したローマのカラフルなアパートメント

かつてDJとして活躍した建築家が、ローマ中心街の自宅をリノベーション。

By Clare Sartin

「パーティーを開いたのは、今のところ1回だけです。ものすごく騒々しかった」とマテオ・ソッドゥは笑う。彼は建築・デザインスタジオ、スタジオタマトの共同設立者。このアパートメントには、パートナーで、マテオと同じくDJだったこともある同僚のセルジオ・マラスと共に住んでいる。リビングに置かれたオーディオシステムからは、夜更けにアシッド・ハウスのトラックでも聴こえてきそうだが、彼らがここで経験したのは、違うタイプの盛り上がりだった。

UK版「エル・デコ」より

ローマ 海外インテリア実例 studiotamat
ZhangHuiqi

「リノベーションを始める前、友人たちを招いて壁を一緒に取り壊したんです。ほとんどすべての扉をなくしました。通常のクライアントだとしたら、受け入れ難い提案だと思います」とマテオ。

しかし、今回クライアントとデザイナーという2役を担った彼にとって、本プロジェクトはクリエイティビティを発揮できる絶好のチャンスだった。

マテオとセルジオがここを初めて訪れた際、この95平方メートルの空間は、もの悲しささえ誘うような有様だった。壁の状態は悪く、家の中央を通っていた15メートルに及ぶ廊下も、2人に不安を抱かせた。

ローマ 海外インテリア実例 studiotamat
ZhangHuiqi_Seven

彼らの気持ちを変えたのは、窓から飛び込む景色だった。ここからは、トラバーチンに覆われたローマ、テルミニ駅と1940年代にアンジョロ・マッツォーニがデザインした管制塔が大きく見える。カオス、それから好奇心を掻き立てるような要素の融合が空間を支配していたのだ。

「鉄道が走る音と車のクラクションに、路面電車の発射音が混ざり合って聞こえるんです」

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オープンプランのリビングエリアをつくるために壁を取り去った2人が次に行ったのは、天井に何層も塗られていたペンキをはがし、美しいレンガをあらわにすることだった。これは、ラウンジ、キッチン、ダイニングが入る、この空間の主役となった。レンガの存在を強調するため、フローリングの素材にはニュートラルな色合いの樹脂をセレクトした。







ローマ 海外インテリア実例 studiotamat
ZhangHuiqi

リビングエリアでは、スタイリングの選択肢は限られたが、他の部屋では、創造力を遺憾なく発揮した。注目したいのは、マテオとセルジオが共同で使うオフィス。ここには、2人が育ったサルデーニャの海を思わせるコバルトブルーを塗った。

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使った塗料は、「リトル・グリーン」の"スマルト"。地元のインテリアショップ、ブルディ・プルッシアの設立者で友人でもあるサビーナ・グイドッティにすすめられたカラーだ。

「家に楽しさや生き生きとした雰囲気を持ち込んでくれるようなものを求めていました。私たちがかつてよく遊んだクラブにも似ていますね」とマテオ。

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イエローにピンク、赤紫—バスルームのカラーリングも同じように大胆だ。隣のベッドルームでは、マスタード色の壁に、一見すると相容れないような2色づかいの伝統的なカーテンを合わせた。

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マテオとセルジオは、デザインの細かいところまで合意してプロジェクトを進めたのだろうか。

「何年も一緒に暮らしてきたので、お互いのテイストや考えていること、それからニーズもかなり似てきました。そもそも、基礎となる部分の共通点が多いんです。主に話し合ったのは、ディテールについてですね」。とマテオ。

この家に足を踏み入れ、エントランスの上に掲げられたネオンのスマイリーフェイスを見上げたなら、それだけで、この先にハッピーでデザイン的にも調和の取れた空間が広がっていることを、誰もが想像できるだろう。


original text : CLARE SARTIN
translation : CHISATO YAMASHITA

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