【ルームツアー】ナポリの家で出合う、メンフィスとマイアミのカラフルなデザイン
ナポリの古民家が、色とアートで蘇った。
ジョヴァンニ・イッツォとアンナ・マゼッロ夫妻は、ミラノ、マイアミ、ロンドンと、これまで様々な場所に生活の拠点を求めてきた。そして今、このイタリア人カップルは、可能な限りジョヴァンニの故郷であるナポリへと足を運んでいるという。1300年代に建てられたそのアパートは、街の植物園を見下ろす場所にあり、高い天井、大理石の床、そして鮮やかなまでの色とストライプに彩られたインテリアが何よりの魅力を放つ。UK版「エル・デコ」より。
このアパートは、ナポリによくある長い廊下が「サローネ・ドノーレ（正餐の間、あるいは栄誉の間とも呼ばれる、家で最も格式の高い広々とした空間）」へと続き、そこからいくつもの部屋が枝分かれしている間取り。しかし、そんな伝統的な造りの中に、オーナー夫妻は見事に伝統とモダンが調和した空間を作り上げている。
この空間には様々な要素が大胆に混ざり合っている。エキゾチックな壁紙、パッと目を引く色使い、昔ながらの美しいデザイン（彼らは新古典主義と呼ぶ）、そして現代的なデザイン。さらに、イオーレ・サルノ、リッカルド・アルバネーゼ、サルヴァトーレ・リベルティ、ルイージ・ティリーノといったイタリア人アーティストの作品が飾られ、彼らの作品がこの家のナポリらしさをさらに引き立てている。
この家のデザインのアイデアは、私たち夫婦がミラノのブレラ地区で過ごした数年間に育まれたものです。当時住んでいた家を『クラブ・デッラールキテットゥーラ（建築クラブ）』と呼んでいました」と妻のアンナは説明する。
「そこはデザインオフィスのスタッフや建築家の友人たちが集まる場所で、毎年部屋の雰囲気を変えていたんですよ。この家にある家具の多く、例えば1968年製の「スティルウッド」のソファ“ララ”や、ヴィンセント・インシンガによるオーダーメイドのテーブルは、その頃から使っているものなんです」
建築用の貴重な石材や大理石の専門家である夫のジョヴァンニは、アパート全体に敷かれた美しいピンクのポルトガル産大理石の床をそのまま残すことにした。そしてこの個性的かつ開放的な家で1番目を引くのは、なんと言ってもストライプが施された腰壁だ。
「リビングの色の組み合わせが、この家全体の万華鏡のような雰囲気を生み出す大きなきっかけになりました」とアンナは言う。
「この家づくりで一番満足しているのは、それぞれの空間に統一感を持たせられたことです。大胆な色で元々彩られていた壁を背景に、空間に鮮やかなリズムを生み出しているんです。私たちは、昔ながらの美しいデザイン、つまり新しい古典主義とポップアート、1970年代のデザインとトロピカルなアールデコを融合させるのが何よりも好きなんです」
このアパートの改修を始めた頃、夫妻はまだフロリダに住んでいた。そのため、リビングの壁紙には、葉っぱや目の錯覚を起こすようなストライプ、オウムの絵など、マイアミらしい雰囲気が取り入れられている。
「立体的な装飾と視覚的なトリックを起こすようなビビッドな柄は、意外と相性がいいんですよ」とジョヴァンニはにこやかに話す。
彼にとってこの家を造ったことは、ナポリとの関係を変えるきっかけになった。「アンナが新鮮な目でナポリを見つめ直してくれたことで、僕もまたナポリを好きになれたんです。それは、昔から知っていたのに忘れてしまっていたことに、もう一度気付くような感覚でした。今ではロンドンからここに帰ってくると、改めてホッとするような安らぎを感じるんです」
original text : Clio de Maria
