
【軽井沢】建築・アート・インテリアを巡る、1泊2日のフォトジェニックトラベル
『エル・デコ』おすすめのデザイン旅ガイド。新旧の軽井沢の魅力を余すことなく堪能できるモデルコースをご紹介。
東京からわずか1時間でアクセスできる軽井沢は、別荘地としても観光地としても長年高い人気を誇るスポット。美しい自然をはじめ、歴史を感じる名建築から注目の複合施設、数多くの美術館が点在しており、何度でも訪れたくなるエリアだ。忙しい日常をひととき離れ、目と心を潤すデザインの旅へ出かけよう。
まずは各スポットの位置をチェック!

本記事では、1泊2日のデザイン旅で訪れたいスポットをモデルコース付きで紹介。JR軽井沢駅前のバス停から乗車し、約20分ほどに位置するのが星野エリア。「ハルニレテラス」「石の教会 内村鑑三記念堂」「星野温泉 トンボの湯」などは徒歩圏内なので、一度に色々巡りたいなら、星野エリアからスタートするのがおすすめ。「軽井沢千住博美術館」と「軽井沢コモングラウンズ」は徒歩15分ほど、「シュティル」と「飯箸邸」は徒歩10分ほどで、そのまま歩いて行ける場所もあるので、マップをチェックしつつ、ぜひセットで訪れてみて。
軽井沢には魅力的なスポットがたくさんあるけれど、自然豊かな山間に位置することから、タクシーやバスでは10〜20分程度のところでも、徒歩だと1時間以上かかることも。しっかりと計画をたてて、効率的に軽井沢を満喫しよう!
ハルニレテラス

1日目/おすすめモデルコース① ランチ・ショッピング
軽井沢に到着したら、まず訪れたいのが「星野エリア」。JR軽井沢駅前のバス停から約20分ほど、豊かな自然と文化が交差する、静かな時間が流れる場所だ。大正時代には文豪や芸術家たちが集い、独自の文化的コミュニティを築いていたこの地。現在は「星野リゾート」が手掛ける複合施設を中心に、日帰り温泉や旅館、教会などが徒歩圏内に点在し、軽井沢らしい景観と心地よい過ごし方を提案している。
なかでも、春楡(ハルニレ)の木々に囲まれた「ハルニレテラス」は、このエリアのシンボル的な存在。清流沿いに建つ9棟の建物で構成されたこの複合施設は、“軽井沢の日常”がテーマ。食事からショッピングまで、多様な過ごし方を一度に満喫することができる。

ハンドメイドの家具や軽井沢発のオリジナル雑貨が並ぶ「NATUR terrace」、自然素材にこだわったライフスタイルショップ「TEAM7 軽井沢」などの洗練されたショップに加え、農場直送のミルクを使ったジェラートが楽しめる「HARVEST NAGAI FARM」、自然派ワインとフレンチデリが揃う「CERCLE wine & deli」など、個性豊かな16店舗が軒を連ねる。各店舗はウッドデッキでゆるやかにつながっているので、緑のなかを歩きながら、買い物や食事、散策を自由に楽しんで。
ハルニレテラス
長野県軽井沢町星野
公式サイト
石の教会 内村鑑三記念堂

1日目/おすすめモデルコース② 自然に癒やされる周辺散策
あわせて立ち寄りたいのが、すぐ近くにある「石の教会 内村鑑三記念堂」。現代を代表するオーガニック建築家、ケンドリック・ケロッグによる独創的な建築は、一歩足を踏み入れた瞬間から、その世界観に引き込まれる。
この教会は、明治・大正期に活躍したキリスト教指導者・内村鑑三の功績を讃えて建てられたもの。設計を任されたケロッグは、軽井沢の土地を何度も歩き、その自然と対話しながら、この場所でしか成り立たない建築をつくりあげた。

信州の山から切り出された石を積み上げた壁や太陽の軌道に沿って東から西へと弧を描く天井、自然光が差し込み、水の音が響くこの空間は、建物そのものが自然の一部として存在しているよう。まさに、オーガニック建築がめざす“自然と建築の融合”を体現した場所といえる。
石の教会 内村鑑三記念堂
長野県軽井沢町星野
公式サイト
星野温泉 トンボの湯

1日目/おすすめモデルコース③ 日帰り温泉
「星野エリア」で食事やショッピング、自然のなかの散策を満喫したら、締めくくりに立ち寄りたいのが、徒歩約5分の場所にある「星野温泉 トンボの湯」。ここは、1915年の開湯以来、避暑地・軽井沢の名湯として愛されてきた「星野温泉」を、源泉かけ流しで楽しめる日帰り温泉だ。

館内には、ヒノキや天然石を贅沢に使った内湯、池とひと続きのように広がる露天風呂、そしてオートロウリュを採用した本格サウナがあり、秋にはりんご湯、冬至にはゆず湯といった季節湯も用意されている。湯上がりには、隣接するカフェでクラフトビールやソフトクリーム、温泉卵プリンなどの軽井沢スイーツを味わって。
星野温泉 トンボの湯
長野県軽井沢町星野
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軽井沢ニューアートミュージアム

1日目/おすすめモデルコース④ アート鑑賞
「軽井沢ニューアートミュージアム」は、日本の現代アートを牽引する作家たちや、日本ではまだあまり知られていない海外アーティストの作品を、斬新な視点から紹介している注目の美術館だ。軽井沢駅北口から大通り沿いに徒歩約10分とアクセスもよく、どのルートで旅を組んでも訪れやすいのがうれしい。
〈写真〉ガラスを取り囲むようにあしらわれた白い柱は、カラマツ林をイメージしたもの。ホワイトと直線をメインとした現代的なデザインでありながらも、自然豊かな軽井沢の風景に溶け込んでいる。

館内は1階と2階に分かれており、1階は入場無料。およそ1カ月ごとに入れ替わる企画展やコレクション展を開催するギャラリーのほか、アートグッズや書籍が揃うミュージアムショップ、カフェ・レストランも併設されている。2階には6つの展示室があり、独自のテーマ展や企画展が楽しめる。

注目したいのが、全国の美術館としても珍しいチャペルの存在。このチャペルは、隈研吾によるデザインで、実際に挙式会場として使用可能だ。360度ガラス張りで周囲の白樺と苔と一体化した空間は唯一無二。アート好きのカップルはぜひ見学を。
〈写真〉チャペル《風通る白樺と苔の森〈チャペル〉》。年間数組の挙式が執り行われている。奥に見える彫刻は、 現代美術作家 ジャン=ミシェル・オトニエルによる《こころの門》。2つのハートが支え合うように立ち、そこをくぐることでふたりの結びつきがより強くなるように、という思いが込められている。
軽井沢ニューアートミュージアム
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1151-5
公式サイト
※チャペルの見学には美術館のチケット購入が必要
万平ホテル

1日目/おすすめモデルコース⑤ ディナー、宿泊
軽井沢を訪れたら、一度は泊まってみたい憧れの宿「万平ホテル」。1894年(明治27年)の創業以来、軽井沢を代表するクラシックホテルとして、国内外の著名人や文化人、政界人に愛されてきた。2024年には創業130周年を記念し、1年半におよぶ大規模な改修・改築工事済み。歴史ある佇まいを大切に守りながらも、現代の快適さを加えた新たな姿へと進化し、グランドオープンを迎えた。
〈写真〉ハーフ・ティンバー様式の外観が印象的な「アルプス館」。2018年には国の登録有形文化財に認定された歴史ある建物で、エントランスやカフェテラスもこちらに。

客室は、昭和11年から続く「アルプス館」、今回のリニューアルで新築された「愛宕館」、そして2001年に改築された「碓氷館」の3館で構成されている。それぞれに趣の異なるデザインが施されており、どの部屋も「万平らしさ」と軽井沢の自然との調和が感じられる設えだ。

このホテルの魅力は、滞在そのものが旅の目的になるというところ。建築美に心を奪われながら、クラシックなメインダイニングルームでの食事や自然の風を感じるカフェテラス、重厚感漂うオーセンティックなバーでの一杯など、館内で完結する上質な時間が待っている。
なかでも注目は、2025年4月に新たにオープンしたレストラン「檜(ひのき)」。明治時代に建てられた総檜造りの建物を活用した、歴史ある空間が特徴的。昭和30年代、軽井沢を訪れた文豪たちがゴルフ帰りに親しんだというすき焼きや鉄板焼きをメインに、信州プレミアム和牛や信州味噌を使った地産地消の料理が味わえる。
万平ホテル
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
公式サイト
軽井沢コモングラウンズ

2日目/おすすめモデルコース① 朝活、カフェ
「軽井沢コモングラウンズ」は、2023年3月にオープンした複合施設。豊かな自然に囲まれたこの場所には、「軽井沢書店 中軽井沢店」や「SHOZO COFFEE KARUIZAWA」「PUBLIC 食堂」、低温燻製の専門店「軽井沢いぶる」、さらにはインターナショナルスクールなど個性あふれるショップや飲食店が点在。マルシェやイベントも開催され、文化と日常が自然と交わる新しいかたちの森のコミュニティとして注目を集めている。
書店やカフェは朝9時から、食堂は平日8時半から、土・日・祝は7時半から営業しているため、「朝からしっかり動きたい」派にもぴったり。

施設の中心となる「軽井沢書店 中軽井沢店」では、アート・建築・デザイン・自然科学など、「生涯学習」をテーマに選書された本がずらりと並ぶ。食や暮らしにまつわる書籍、児童書も充実していて、世代や興味を問わず楽しめるラインナップ。
カフェやコワーキングスペースも併設されているので、本を片手に朝の一杯を楽しんだり、ジャーナリングや調べごとなど朝活をしてみたり……軽井沢の森を感じながら自由な時間が過ごせる空間となっている。
軽井沢コモングラウンズ
長野県北佐久郡軽井沢町長倉鳥井原1690-1
公式サイト
軽井沢千住博美術館

2日目/おすすめモデルコース② アート鑑賞
「軽井沢コモングラウンズ」から徒歩15分ほど、緑のなかを歩いた先に現れる「軽井沢千住博美術館」は、世界的に活躍する日本画家・千住博の作品を、美しい建築のなかで鑑賞できる美術館。設計を手掛けたのは、妹島和世氏とのユニットSANAAにて建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞した西沢立衛だ。
敷地には、150種類を超えるカラーリーフガーデンが広がり、ピンク、イエロー、パープル、シルバー、レッドなど色とりどりの樹々・草花が、ホワイトの建築に彩りを添える。

館内は、自然光が降り注ぐ、明るく開放的な空間。4カ所に設けられた吹き抜けと、軽井沢の地形をそのまま生かした床の起伏が特徴的だ。ひと続きのランドスケープのような建築と、自然と調和する千住作品が一体となり、まるで森のなかを散策しているかのようにアートを楽しむことができる。
軽井沢千住博美術館
長野県北佐久郡軽井沢町長倉815
公式サイト
飯箸邸

2日目/おすすめモデルコース③ ランチ
タクシーで10分、少し足を伸ばして追分へ。お目当ては、2024年1月に誕生した「飯箸邸」。ここは、日本のモダニズム建築を牽引した建築家・坂倉準三が日本で初めて手掛けたという名建築のなかで美味しいイタリア料理をいただける一軒家レストラン。
〈写真〉「飯箸邸」外観。この建物は1941年に東京・等々力で竣工し、のちに軽井沢へと移築されたもの。

クラシカルな店内には、坂倉準三がデザインした家具も配されており、当時の趣も味わうことができる。円卓を囲むテーブル席のほか、周囲の自然を望むことができる個室も。あたたかく丁寧な接客とともに、リラックスしながら食事を楽しめるのが魅力だ。
メニューは昼夜共通で、コースのほか、アラカルトも多数用意している。名店で修行を積んだシェフによる料理は、全国から旬の食材を厳選し、素材そのものの美味しさを活かした逸品ばかり。多種多様なワインとのペアリングも楽しんで。
飯箸邸
長野県北佐久郡軽井沢町追分46-13
公式サイト
シュティル

2日目/おすすめモデルコース③ カフェ、ショッピング
北欧の暮らしを日本に伝えてきた「ハルタ」が運営する複合施設「シュティル」は、追分に行ったら必ず立ち寄りたいスポット。
廃墟だったドライブインを改修したユニークな建物には、「ハルタ」のショールームをはじめ、ホテル、ベーカリー、レストラン、ギャラリーなどが集結。北欧の上質なライフスタイルを体感できる場所として、2022年のオープン以降注目を集めている。
〈写真〉「ハルタ」のショールーム。リペアされた1960〜70年代の北欧家具が並ぶ。