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modern architectural design featuring cantilevered structure and sustainable landscaping
Photo by Noda

【千葉】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築16

「幕張メッセ」だけじゃない、千葉県の隠れた名建築をチェック!

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東京のベッドタウンというイメージが根強いけれど、名建築も豊富な千葉。数百年の歴史を誇る観音堂に、槇文彦の「幕張メッセ」、インパクトたっぷりの「ホキ美術館」をはじめとするモダンなミュージアムなど、思わずカメラを向けたくなる個性豊かな16の建築をご紹介。海や豊かな緑など自然との調和にも注目しつつ、建築めぐりを楽しんで。


1

千葉県立美術館/千葉市

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

メタボリズム建築運動を牽引した建築家のひとりであり、千葉県の文化施設に広く携わった大髙正人が設計し、1974年に開館した県立美術館。50周年を迎えた2024年、「アートを問う」を新たな理念に生まれ変わり、 これまでの蓄積を生かしながらアートに親しんでもらう活動を続ける。




建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

全体はこの時期に大髙が取り組んでいた「傾斜屋根」(最新の技術を使い、日本の伝統的な屋根を解釈)の系譜に連なり、大きな傾斜屋根をもつ第7展示室を中心に各展示室が広がっていくという構成。この屋根とせっ器質タイルによる外壁が、外観にまとまりをもたせる。大髙はまた、人々の生活に密着し親しく利用される美術館を目指し、段差のないバリアフリーの展示室とした。

<写真>傾斜屋根を支える列柱が印象的なエントランス空間。




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建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

美術館としては、近現代以降の千葉県にかかわりのあるアーティストを中心に、国内外の作品及び関係資料を所蔵・展示する。2023年には、芝生広場の一部に、屋外テーブルとしても利用できる全長約70mの「リボン」とアート遊具 「木のかたまり」を設置した憩いの空間 、「みちのにわ」(写真)がオープンした。

千葉県立美術館
千葉県千葉市中央区中央港1-10-1

公式サイト


2

千葉市美術館/千葉市

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

1995年11月3日に千葉市中心市街地の一角に中央区役所との複合施設として開館した。辰野金吾らに建築を学んだ矢部又吉が設計し、1927年に竣工した旧川崎銀行千葉支店を、新たな建築が包み込むという、特徴的な構造であることが見どころ。歴史的建造物を美術館の中核に内蔵する、この「鞘堂方式」を採用し、千葉市美術館を設計したのは、丹下健三に師事した大谷幸夫。歴史と文化を保存し、次世代へ繋げる美術館のあり方にも共鳴する手法だ。

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建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

旧川崎銀行千葉支店は、現在「さや堂ホール」と名を変え、来場者を出迎えている。美術館の骨格を形成するコレクションの収集方針は、「近世から近代の日本絵画と版画」「1945年以降の現代美術」、そして館が立地する「千葉市を中心とした房総ゆかりの作品」の3つを大きな柱とする。

<写真>市指定文化財である旧川崎銀行千葉支店を保存・修復した「さや堂ホール」。





千葉市美術館

開館25周年を迎えた2020年7月には、拡張リニューアルオープン。地下3階、地上12階の建物全体を美術館とした。これまでの展示室などに加え、常設展示室のほか、参加・体験型のアーティストプロジェクトを行うアトリエ、美術にまつわる親しみやすい図書をそろえた開放感のある図書室が誕生。「いつでもだれでも」アートと触れ合える機会を提供していく。

千葉市美術館
千葉県千葉市中央区中央3-10-8

公式サイト

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3

ホキ美術館/千葉市

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築
Photo by Noda

千葉県最大級の公園、千葉昭和の森に隣接するインパクト抜群の建築。大きく曲げられた躯体が3層に重なり、1階の一部30mほどが跳ね出した構造が特徴的だ。

「ホキ美術館」は、「1対1で写実絵画と向き合える場所を作り、公開したい」という創設者、保木将夫の思いから生まれた、世界でもまれな写実絵画専門の美術館。地上1階、地下2階の3層を流れる、計500mの回廊型ギャラリーが来場者を写実の世界へといざなう。設計を担当した日建設計の山梨知彦は、「自然光を展示空間へと導き入れることで森の中を散策しながら絵画を鑑賞しているような状態をつくった」とコメント。

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

細密画の繊細さを壊さないように、ギャラリー空間は可能な限りシンプルに仕上げた。大きさの異なるそれぞれの作品へ最適な距離を確保し、壁面の継ぎ目やピクチャーレールは排除。鑑賞の妨げとなるものが入らないよう、徹底した。展示照明は、全館ほぼLED。白色と暖色の2種類の色温度のLEDを無数に混ぜあわせ、それらを調光することで、約60名の作家一人ひとりのアトリエの光環境に近づけている。

<写真>床には、長時間の鑑賞に疲れないゴム素材を採用。

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建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築
Photo by Noda

館内では、こうした細やかな配慮に助けられて写実の名品約120点をゆっくりと堪能できる。空中に浮いたような感覚を味わえる窓から森を見渡すギャラリーやレストラン、カフェも入るので、こちらも、ぜひ訪れてほしい。

ホキ美術館
千葉県千葉市緑区あすみが丘東3-15

公式サイト






4

幕張メッセ/千葉市

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

1980年代前半に千葉県による幕張新都心開発の一環として計画され、1989年に開業。設計は、槇文彦。敷地面積約21万㎡、総展示面積約75000㎡を誇る、日本を代表する複合コンベンション施設で、国際展示場、国際会議場、幕張イベントホールの4つの建物から構成される。




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槇は、設計意図について「さまざまなイベントに対応する機能・性能を確保するとともに、各々の空間に特徴的な表情をもたせ、賑わいのあふれた都市性と祝祭性を演出」したとコメントを残している。展示ホール1~8の中央プラザに設置された幕張メッセのシンボル、赤いキャノピーは、神社の鳥居をイメージ。屋根の外観は、千葉県房総半島の山並みに着想を得た。





建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

展示ホール9~11の屋根は、千葉県の外房・内房の波を思わせる弓なりの造形が特徴だ。国際会議場には、1600名を収容できるコンベンションホールを始めとした22室が入る。









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「現代技術によるダイナミックなスケールと、ヒューマンスケールの細やかなディテールのバランスをとりながら、全体として密度の高い大空間」をつくり出したという槇の言葉通りの未来的な建築群が、幕張新都市の街並みと調和している。

<写真>最大約9000人収容の大型イベントスペースである幕張イベントホール。

幕張メッセ
千葉市美浜区中瀬2-1

公式サイト

5

千葉ポートタワー/千葉市

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

1983年に千葉県の人口が500万人を突破したことを記念してオープンした、千葉港を象徴するランドマーク。竣工は1986年。日建設計が設計を担当した。高さ125mながら、地上4階建て(30階建てのビルに相当)。塔の形は、一辺15.1mの菱形。表面は、熱線反射ガラス(ハーフミラー)5571枚に覆われている。

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建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

4階の「ビュープロムナード」には、地上113mの展望台がある。ここからは、幕張メッセや高層ビルが林立する幕張新都心エリアが見える。西側を眺めると、東京タワー、東京スカイツリーを見つけるができる。建物内には、不定期で特別開放される屋上オープンデッキや展望レストラン、恋人の聖地「サンセットプロムナード」、ショップなども入居している。

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

周囲を囲むのは、千葉ポートタワーと時を同じくしてオープンした千葉ポートパーク。「千葉港発祥の地」である千葉中央地区に、港の玄関にふさわしい景観を備え、各種の文化施設を含んだ市民との交流の場である臨港公園として造成された公園だ。

千葉ポートタワー
千葉県千葉市中央区中央港1

公式サイト

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6

千葉大学 ゐのはな記念講堂/千葉市

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

千葉大学亥鼻キャンパスにある同大学医学部設立85周年を記念して建設された千葉大学記念講堂。槇文彦がアメリカから帰国後、名古屋大学豊田講堂(1960年)に続いて手掛けた、国内2作目の建築となる。緑豊かなキャンパスの小高い丘で広場と向き合い、強い存在感を放つ。銅板屋根を乗せた、力強く開放的な梯形架構は、設計において槇が意識した「鎮守の森の社」のイメージを保ち続けている。

建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

竣工から半世紀を経た2014年、老朽化に伴う改修の要望と耐震補強の必要性から、改修を実施。プロジェクトを率いた槇は、本来のデザインを損なうことなく、構造面においては耐震補強を、外装では杉板本実型枠コンクリート打放し壁の再生、ホワイエカーテンウォールのアップデート、それから屋根の防水工事を行った。館内では、天井をルーバーとし、講堂1階の客室を720席からゆとりある576席に変更した。

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建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築

エントランスで学生や来場者を迎えるのは、鑼(どら)をモチーフにした流 政之による彫刻。流による作品は、講堂舞台の後壁や前庭などでも見つけることができる。

千葉大学 ゐのはな記念講堂
千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1 千葉大学亥鼻キャンパス内

公式サイト

※内部の見学は原則不可

7

三菱館(三菱銀行佐原支店旧本館)/香取市

三菱館

1914年、川崎銀行佐原支店として建設。当時の建築設計図には、清水満之助本店(現在の清水建設)技術部の設計によるものであると、記されている。1943年に川崎銀行は三菱銀行と合併し、三菱銀行佐原支店となったが、1989年に銀行の新店舗が完成したことに伴い、この旧店舗は香取市に寄贈された。千葉県有形文化財に指定。

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