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建築も見逃せない瀬戸内の美術館&野外ミュージアム

建築とアートを堪能できる香川県のアートスポットをご紹介。

By YUKIKO TAKASE
直島新美術館
直島新美術館 Photo: GION

香川県をはじめとする瀬戸内エリアは、世界的建築家が手掛ける名建築の宝庫。アーティストが建物をまるごと手掛けた作品や、歴史的な建物を公開する野外博物館もある。瀬戸内を巡る旅の計画にぜひ加えたい、美術館や建築ミュージアムをご紹介。

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直島新美術館

直島新美術館

直島を中心に展開される「ベネッセアートサイト直島」で、建築家・安藤忠雄が手掛けた10番目のアート施設として2025年5月末に開館。丘の稜線をつなぐような大きな屋根を抱く建物は、焼杉の外壁が多い集落の景観になじむよう、外壁は黒漆喰で仕上げられた。地下2階、地上1階の3層で構成され、内部に直線状に続く階段室へ天窓から光が差し込み、階段の両側に4つのギャラリーを備える。

直島新美術館

展示はアジアの現代美術を軸に、2025年は、日本、中国、タイなどの著名作家から新進気鋭の作家まで12組が、代表作やこの場所から構想した作品を展開。アート、建築、自然、コミュニティのさらなる調和・融合を目指し、島内のアート施設をつなぐ“ハブ”の機能を担う。

直島新美術館
住所/香川県香川郡直島町3299-73

公式サイト

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地中美術館

地中美術館

2004年に開館した地中美術館は、瀬戸内の海が見渡せる丘にある。景観を損なわないよう、その名の通り建物がほぼ地中に埋設された。設計を手掛けた安藤忠雄は、四角形などの幾何学的な穴の開口部を地表に数カ所設けることで館内に自然光を届け、光と影が織りなすドラマティックな空間をつくり出した。

この光の演出が、恒久展示されている3名の作家の作品と呼応する。クロード・モネの『睡蓮』の部屋は柔らかな間接光で包まれ、“光の芸術家”ジェームズ・タレルの部屋では開口部が作品そのものを構成。ウォルター・デ・マリアの部屋は、長方形の天窓から差し込む光が荘厳な空間を照らし出す。天候や時間により変化する光の表情を楽しみたい。

地中美術館
住所/香川県香川郡直島町3449-1

公式サイト

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李禹煥美術館

李禹煥美術館

1960年代後半から「もの派」の中心的な役割を担い、世界で活躍する現代美術家・李禹煥(リ・ウファン)の初の個人美術館として、2010年に開館。海の見える谷間という地形に溶け込むよう、安藤忠雄は半地下構造の建物を設計した。正面から見えるのは、横長のコンクリート壁のみ。壁の前の「柱の広場」では、水平と垂直の対比が凛とした緊張感を生んでいる。

館内には、絵画や、『関係項-合図』(2010)をはじめとする自然石と鉄板を組み合わせたミニマルな彫刻など、1970年代から現在に至るまでの作品が、コンクリートの静謐な空間で余白の美を放つ。 2019年には、海を望む広場に巨大なステンレスのアーチと石からなる『無限門』も加わった。

李禹煥美術館
住所/香川県香川郡直島町字倉浦1390

公式サイト

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直島銭湯「I♥湯」

直島銭湯「i♥湯」

瀬戸内で数多くのプロジェクトを展開しているアーティスト・大竹伸朗。2009年に制作した本施設では、実際に銭湯を利用しながら大竹ワールドに浸ることができる。

大竹が目指したのは、明るく色彩豊かな空間。外装だけでなく、浴槽、風呂絵、カランなど内装の細部に至るまで、自身のライフワークであるスクラップブックの手法を3次元で展開した。

<写真>女性を象った看板、船底、カラフルなタイルなど、さまざまなオブジェを組み合わせたユニークな外観。

直島銭湯「i♥湯」

北海道の定山渓(じょうざんけい)にあった「秘宝館」に展示されていた巨大な象のオブジェをはじめ、日本中から集めた素材や新たに制作したパーツなどを建物の内外にコラージュ。夜にはネオンがともり、日中とは異なる表情を見せる。入浴できるアート作品としても、島民や国内外の来島者の交流の場としても、常ににぎわいを見せている。

直島銭湯「I♥湯」
住所/香川県香川郡直島町2252-2

公式サイト

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豊島美術館

豊島美術館

湧水が豊富で、かつては農業が盛んだった豊島。昔の景観をよみがえらせ、アートの島としても活性化させるため、住民とともに棚田を再生させ、その敷地の一角に2010年に開館した。建築家・西沢立衛が考案したのは、水滴をイメージした、地形のカーブに沿うドーム状の建物。アーティスト・内藤礼との協働により、空間自体が『母型』という作品になった。

柱が1本もないコンクリートシェル構造の建物は、天井にある2カ所の大きな開口部から光や風を取り込む。床の無数の穴からは水の粒が湧き出し、床の起伏で転がり集まって泉になる。雨や風などの自然状況で風景が刻々と変化していく、有機的な空間にゆったり身を委ねたい。

豊島美術館
住所/香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607

公式サイト

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丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

丸亀市の市制施行90周年の記念事業として、同地で少年期を過ごした画家・猪熊弦一郎(1902-1993)の協力のもと、1991年に開館。丸亀駅前の広場から門型のファサードが緩やかにつながり、猪熊が手掛けたオブジェや壁画作品を額縁のように包み込む。「おおらかでスケール感のある空間を」という猪熊の願いを受け、建築家・谷口吉生は自然光をふんだんに取り込む建物を設計。

<写真>門型の巨大なファサードが、猪熊が手掛けたオブジェや壁画作品を額縁のように包み込む。

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丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

高さを抑えたエントランスを抜けると、吹き抜けや天井の高い展示室など開放的な空間が広がる。猪熊が寄贈した約2万点の作品を所蔵し、常設展のほか、現代美術を軸とする企画展も開催。猪熊の遺志に基づき子ども用の造形スタジオもあり、高校生以下/18歳未満の観覧料は無料だ。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
住所/香川県丸亀市浜町80-1

公式サイト



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四国村ミウゼアム

四国村ミウゼアム
photo: Courtesy of SHIKOKUMURA

古民家を保存する目的で、1976年に開館した野外博物館。屋島山麓に広がる約5万㎡の敷地に四国各地で使われていた建物が移築・復原され、国指定重要文化財2棟を含む33棟が点在。江戸から大正時代に建てられた茅葺き屋根の民家、農村歌舞伎舞台、和三盆や醤油の製造施設などが公開されている。

<写真>円錐形の茅葺き屋根が愛らしい「宮崎家砂糖しめ小屋」は、香川の特産品である和三盆糖の生産に使われた建物。

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四国村ミウゼアム
photo: Courtesy of SHIKOKUMURA

2002年、敷地内に安藤忠雄の設計による「四国村ギャラリー」が開館し、創設者が収集した仏像や西洋絵画などを収蔵。2025年は猪熊弦一郎の企画展を開催(~2025/12/14、展示替え期間休館あり)。階段状の水景庭園も見どころだ。2022年に建築家・川添善行が設計した新エントランス棟も誕生した。

四国村ミウゼアム

住所/香川県高松市屋島中町91

公式サイト


NEWS
瀬戸内・香川県の魅力を伝える特別タブロイド『A Journey Through the Hidden Charms of SETOUCHI』(発行:ハースト婦人画報社)が誕生! 7月17日より電子版を公開、プリント版は「瀬戸内国際芸術祭2025」夏会期がスタートする8月1日より、香川県、岡山県の芸術祭案内所や高松空港、高松駅など主要観光案内所にて無料配布します。

電子版:特別編集タブロイド 『A Journey Through the Hidden Charms of SETOUCHI』
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