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【岡山】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築15

全身で体感する現代アート、歴史が息づく倉敷の建築、瀬戸内の美食。岡山の魅力を余すところなく楽しむためのスポットを教えます!

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瀬戸内海の穏やかな海や、倉敷の白壁の町並みなど、美しい景観に恵まれた岡山県。建築やアートとも深く結びつき、この土地ならではの歴史や文化が息づくスポットも点在している。今回は、そんな岡山で訪れたい、強い個性を放つ15の建築を紹介。

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1

大原美術館/倉敷市

大原美術館

「大原美術館」は、日本で初めて西洋美術を中心に開館した私立美術館。1930年、倉敷出身の実業家・大原孫三郎、總一郎親子が民藝運動を支援していたことから、岡山県での開館が実現したという背景がある。本館では、虎次郎がヨーロッパで収集したエル・グレコ、ゴーギャン、モネ、マティスなどの作品を基盤に、近現代の西洋美術や日本美術の名作、中国やエジプトの古美術、さらに民藝運動に関わる作家の仕事まで、幅広いコレクションを展示している。いずれも、日本人の心情に深く根ざした独自の審美眼によって選ばれた作品群だ。

<写真>本館外観。ギリシャ神殿に見られるイオニア式の円柱が破風を支えるユニークなつくりで、正面の意匠を重視するローマ神殿の形式を意識して設計されたと考えられている。

大原美術館

展示施設は、薬師寺主計が手掛けた本館のほか、浦辺鎮太郎による分館(現在は改修工事のため休館中)、工芸館・東洋館、児島虎次郎記念館から構成されている。チケットは各館でスタンプを押す仕組みで、日をまたいで利用できるのも魅力。すべてを一日でまわりきれなくても、後日ゆっくり続きを楽しめるのがうれしい。

<写真>本館のアトリウム。吹き抜け空間で、ガラス天井からは自然光が差し込む。

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大原美術館

2025年4月3日には、美術館から北東約80mの場所に「児島虎次郎記念館」がオープンした。建物は、薬師寺主計が設計し、1922年に竣工した倉敷初の本格的な洋風建築「旧第一合同銀行倉敷支店」を活用したもの。虎次郎の絵画をはじめ、彼が収集した古代エジプトや西アジアの美術品が展示されている。

大原美術館
岡山県倉敷市中央1-1-15
公式サイト



2

林原美術館/岡山市

林原美術館

岡山市北区丸の内、岡山城内堀の西側。かつて岡山城二の丸屋敷の対面所があった場所に建つ「林原美術館」。ここでは、岡山県の実業家であり、古美術を愛好していた林原一郎が蒐集した、日本をはじめとする東アジア地域の絵画や工芸品と、旧岡山藩主池田家の大名調度品を中心とするコレクションを所蔵・展示している。


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林原美術館

本美術館は、前川國男が手掛けた初めての美術館建築としても知られている。中庭を中心とした単位空間が連続する構成で、来訪者を回遊させる動線を意図した設計が特徴。この平面計画や外壁のレンガ使いは、後の前川作品である「東京都美術館」や「福岡市美術館」にも通じている。

OR施設内には、前川による本館のほか、江戸時代に建設された3つの蔵が点在。2023年には、長屋門を含む建造物5件が登録有形文化財(建造物)に登録された。

<写真>岡山城周辺の景観に溶け込む、大きな長屋門。江戸末期の建設で、土蔵造入母屋造(いりもやづくり)の本瓦葺が特徴。文化財登録時には「岡山藩池田家およびその分家である生坂藩池田家の遺構としても貴重」と評価された。

林原美術館

館内には正面に竹林の中庭があり、これを中心として展示室がL字に配置されている。鑑賞を終えるとロビーへと一巡できるという空間構成だ。岡山県内には、前川が同時期に設計した「岡山県天神山文化プラザ」や「岡山県庁舎」があるので、あわせて訪れたい。

林原美術館
岡山県岡山市北区丸の内2-7-15
公式サイト


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3

倉敷国際ホテル/倉敷市

倉敷国際ホテル

JR倉敷駅から徒歩10分。伝統的建造物や古い町並みが残る美観地区の入り口に建つ「倉敷国際ホテル」は、1963年の開業以来、国内外の旅行者を迎えてきたクラシックホテルだ。皇族や要人の迎賓館として利用された歴史もあり、今なお多くの人に愛されている。

設計を手掛けたのは、倉敷市出身の建築家・浦辺鎮太郎。創設者・大原總一郎の構想をもとに、倉敷の風土に溶け込むよう、和と洋の融合を意識して設計された。1964年には、その功績により日本建築学会賞を受賞している。

倉敷国際ホテル

開放的な吹き抜けを有するロビーには、文化勲章を受章した画家・棟方志功による大板壁画《大世界の柵〈坤〉人類より神々へ》が飾られている。木版画としては世界最大級で、その大きさはおよそ13mに及ぶ。








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倉敷国際ホテル

このホテルを訪れたら、ぜひ注目したいのが空間のディテールだ。正面玄関(写真左)には、光と影のコントラストが美しい折り紙天井があり、エレベーター入口(写真中央)には、一枚一枚手で貼られたモザイクタイルが使われている。本館の階段(写真右)は、手すりの壁がゆるやかな曲線を描き、柔らかな印象を醸し出している。また、各階の踊り場には、倉敷産のデニムや倉敷帆布、畳縁、真田紐などでつくられたタペストリーが飾られ、地域文化の温もりを感じさせてくれる。

細部にまでこだわりの詰まった空間を、じっくりと味わいながら滞在を楽しみたい。

倉敷国際ホテル
岡山県倉敷市中央1-1-44
公式サイト

4

Junko Fukutake Terrace/岡山市

junko fukutake terrace

2014年、岡山大学津島キャンパスに完成した「Junko Fukutake Terrace」は、「人が集い、対話が生まれる場」をテーマに、「合理的で寛容でボーダレスな出会いの場」「自由で愉快なコミュニケーションを誘発する場」「セレンディピティを生み出す場」という3つのコンセプトを掲げて設計された施設。カフェを併設し、大学の学生だけでなく地域にも開かれた本施設は、街の憩いの場として親しまれている。

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junko fukutake terrace

設計を手掛けたのは、建築ユニット・SANAA。建物は、有機的な曲線と無数の細い柱によって構成されており、屋根下の広場や芝生のスペースも含めた、開放感あふれる空間となっている。

ガラス張りの建築のため、室内にいても外の風景とつながっているような感覚があり、反対に外からも内部の様子が自然に見えるようになっている。

Junko Fukutake Terrace
岡山県岡山市北区津島中1-1-1
公式サイト

5

S-HOUSE ミュージアム

s house ミュージアム

「S-HOUSE ミュージアム」は、花房香氏が新しい美術館のあり方を提案している実験的なミュージアム。現代アートを牽引する作家たちの創作活動を通じて、“同時代を生き生きと体感できる美術館”を目指し、2016年に開館した。

建物は、1996年にSANAA(妹島和世+西沢立衛)が初めて手掛けた木造の個人住宅を改修・転用している。各室は可動壁でつながっており、開閉の仕方によって空間の使い方を柔軟に変えることができる。大机の制作、作家の展示を担当したのは、SANAAから独立した建築家・周防貴之。芸術家と建築を結びつける空間コーディネートが行われた。

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s house ミュージアム

参加作家は、加藤泉、Chim↑Pom、目[Mé]、毛利悠子ら11組。いずれも、現代における多様な芸術表現を探る作家たちだ。展示作家を固定し、10年をかけて各作家が毎年新作を発表していくという展示システムも、このミュージアムの大きな特徴となっている。館内は、畳敷きの和室や浴室、クローゼットなど、かつての住宅の要素がそのまま残されており、作品はそれぞれの空間に点在している。

S-HOUSE ミュージアム
岡山県岡山市南区浦安南町445-8
公式サイト

6

高梁市成羽美術館/高梁市

高梁市成羽美術館

高梁市指定史跡である成羽陣屋跡の石垣の上に建つ「高梁市成羽美術館」は、成羽町出身の洋画家、児島虎次郎の遺徳を顕彰するため1953年に開館した。岡山県初の町立美術館として誕生し、現在の建物は3代目にあたる。1994年に現在地へと移転・新築された。

設計を手掛けたのは安藤忠雄。直交するコンクリートの壁で構成されており、水庭や周囲の山々といった自然の風景と展示空間が見事に調和している。この美しい景観も、本美術館の大きな魅力の一つだ。

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高梁市成羽美術館

館内には、児島虎次郎の作品をはじめ、彼が1920年代に収集した中国、朝鮮、オリエント地域の古代美術品、そして新種化石が多産する成羽町で採掘された日本最古の植物群化石など、ここでしか見ることのできない貴重なコレクションが収蔵・展示されている。







高梁市成羽美術館

美術館の周辺には地下水を活用した人工の池である「流水の庭」が、館内には「静水の庭」が設けられており、どちらも建築と自然をゆるやかにつなげている。カフェテラスでは、その風景を眺めながらくつろげる空間が広がっており、併設のショップでは所蔵品にちなんだグッズのほか、高梁市ならではのご当地アイテムも用意。作品鑑賞と合わせて訪れたい。

高梁市成羽美術館
岡山県高梁市成羽町下原1068-3
公式サイト


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7

奈義町現代美術館/勝田郡奈義町

奈義町現代美術館

1994年に磯崎新の設計により開館した「奈義町現代美術館」は、作品と建物とが半永久的に一体化した国内でも例を見ない美術館だ。特筆すべき点は、“従来の美術品と展示空間の関係が逆転している”ということ。磯崎は、荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子ら4人の作家に、一般の美術館では収集不能とされる巨大な作品の構想を依頼し、対話を重ねながら、その作品や空間を包み込むように建築を設計した。

本美術館は、建築の形態から見立てられた「太陽」「月」「大地」と名付けられた3つの展示室で構成され、それらがこの土地の自然に呼応するように配置されている。各室では、訪れる人が全身の感覚を使って作品と向き合うという、ここでしか体験できない鑑賞空間が展開されている。

奈義町現代美術館
© 1994 Reversible Destiny Foundation. Reproduced with permission of the Reversible Destiny Foundation

写真は、展示室「太陽」のなかにある荒川修作+マドリン・ギンズによる《遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》。斜めに立ち上がる黒い円筒の内部には、京都の「龍安寺」を思わせる石庭に曲面のベンチ、斜めに置かれたシーソー、鉄棒などが上下左右に配置されており、これまで経験したことのない非日常的な身体感覚へと誘う。






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奈義町現代美術館

岡崎和郎が手掛けた《HISASHI-補遺するもの》を有する展示室「月」は、緩やかな曲線を描く、三日月のかたちをした大きな部屋。「太陽の部屋」とは対照的に、訪れる人に休息を与える空間だ。曲面に沿った2つの石のベンチと、生物のようなブロンズ彫刻《HISASHI》が、静謐な時間を作り出す。






奈義町現代美術館

展示室「大地」では、宮脇愛子の《うつろひ-a moment of movement》に出合うことができる。軽やかに連なるステンレスのワイヤーの弧が内部から外部へと続いており、長細いこの空間を歩くにつれ、光や影、水、風のうつろいを感じさせる。

奈義町現代美術館
岡山県勝田郡奈義町豊沢441
公式サイト




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