北欧パビリオンの名前は「ノルディック・サークル」。5カ国が協力し、共に持続可能な発展を目指すという意味で名付けられた。パビリオンの設計者は、イタリアの建築家、ミケーレ・デ・ルッキ。今年74歳になったデ・ルッキが初めて日本につくった建築だ。1,200㎡、高さ17m(3階建て)の木造建築で、北欧の伝統的な納屋がモチーフになっている。でもなぜ納屋だったのだろうか? デ・ルッキはこう語る。
「納屋はシンプルで機能的、さらに自然との深いつながりを象徴する建築です。万博が目指す『生活のための未来社会をデザインする』というコンセプトにあわせたもので、コミュニティと環境配慮への重要性を強調します。これは単なる構造物ではなく、パビリオン内で展示されるイノベーションとテクノロジーを保護するものでもあるのです」
寒さの厳しい北欧の地で、自然の脅威から大切な農作物を守り、さらに自然と調和しながら建つ納屋は、自然と建築との関係が見直される現代で参照すべき建築の「原型」といえるだろう。さらにこのプランが採用された理由を、デ・ルッキはこう答える。
「このパビリオンは、機能美とシンプルな素材使いをする北欧のデザイン哲学を強く表現しています。不必要な要素は排除され、形や素材の自然な質感が際立っています。この建築によって、より思慮深く責任ある生き方が育まれ、調和のとれた環境が創出され、人間と自然の関係が再定義されるのです」
<写真>建物内の階段。日本で調達されたスギ材を使い、柿渋に墨を混ぜた塗料を塗装。日本古来の方法を採用している点にも注目したい。