記事に移動
カルティエ パビリオン 大阪万博
Victor Picon ©Cartier

「大阪・関西万博」で世界が注目する、大胆かつ軽やかな永山祐子の建築

4月13日から開幕する「大阪・関西万博」で永山建築にフォーカス。

By Michiko Inoue

「大阪・関西万博」がいよいよ開幕する。世界各国の建築家が手掛けるパビリオンが一堂に揃うこともあり、建築好きならぜひ足を運びたいイベントだ。この世界の大舞台で、建築家の永山祐子はふたつのパビリオン「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier(以下、ウーマンズパビリオン)」と「パナソニックグループパビリオン『ノモの国』」を手掛けている。本記事では、そのみどころを紹介しよう。

ドバイ万博の日本館を再利用、植物と調和する「ウーマンズパビリオン」

大阪万博
Victor Picon ©Cartier

永山が手掛けたふたつのパビリオンは、夢洲駅から歩いてすぐの「大屋根リング」の手前にある東ゲートゾーンにある。一つ目に紹介するのが、「カルティエ」、内閣府、経済産業省、博覧会協会が共同出展する「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」だ。女性の活躍とジェンダーの平等に焦点をあてたパビリオンで、テーマは“ともに生き、ともに輝く未来へ”。イギリス人アーティストのエズ・デヴリンが、グローバルアーティスティックリードを務めている。映画監督の河瀨直美、美術作家の千葉尋、女優・アーティスト・映画監督のメラニー・ロランも参加し、展示が予定されている。

<写真>「ウーマンズパビリオン」のエントランス。手前には日本の代表的な木のひとつである松が植えられている。

大阪万博
Victor Picon ©Cartier

さらにこのパビリオンでは対話とコラボレーションを生み出す“ハブ”として、2階に WAスペースが設けられている。万博期間中にさまざまな講演会やイベントが予定されている。

白い鉄骨部材で構築されたファサードに、美しい植栽たちが調和する軽やかな建築。この建築のファサードは、2021年に開催されたドバイ万博の日本館として設計したパビリオンのファサードを再構築したものだ。ボールジョイントで部材をつなぐことで、再構築ができる仕組みになっている。

今回の万博では、藤本壮介が手掛けた「大屋根リング」や、佐藤オオキが総合プロデューサーとなり日建設計が設計した「日本館」をはじめ、さまざまなパビリオンで、会期後に建材を再利用、建築そのものを移築することが検討されている。しかしどこのパビリオンも、まだ具体的な活用方法まで決まっていないのが現状だ。

<写真>エズ・デヴリンはドバイ万博で女性初のデザイナーとしてイギリスパビリオンを担当した人物。イマーシブオーディオで体験する没入型の展示空間なども。

ADの後に記事が続きます
大阪万博
Victor Picon ©Cartier

リユースという新たな取り組みを目指す万博建築たちのなかで、再度登場した「ウーマンズパビリオン」はその先駆け的存在だ。これが実現できたのは、永山自らがこの建築を再利用するために奔走し、さらにそれを実現するための協力者を見つけたことが大きい。

「当初からリユースは念頭に置いていたこともあり、組んだり外したりが可能なボールジョイントシステムを採用しました。部材の寿命としてもドバイ万博だけで終わらせたくなかったんです。ドバイから日本へ輸送し、さらにこの大阪・関西万博まで保管までしてくださった、山九さんと出会えたことでこの建築が実現しました。本当に感謝しています」

ライゾマティクスの齋藤精一の紹介で、橋の建材など大きな物を運ぶことが得意だという会社の山九と出会った永山。10000以上のパーツを手作業で解体したのち、部材にQRコードを取り付け、構造計算にあわせて再度組み立てていったという。

<写真>世界的な専門家や著名な活動家も参加するWAスペースは、ラグジュアリーかつ上品な空間。

大阪万博
Victor Picon ©Cartier

「ウーマンズパビリオン」のみどころはファサードだけではない。砂漠が広がるドバイと違い、ここ日本での展示では、植物によって彩りを与えている。大阪を拠点に活動する造園家の荻野寿也による植栽で、この地域の植物を中心に構成されているそうだ。

「ドバイ万博の時は寒暖差のある環境で、植物を植えることが難しかったのですが、今回は実現することができました。建物に入ってすぐの前庭は、生命の源を感じさせる生き生きとしたイメージで、荻野さんに庭をつくっていただきました。地球温暖化で植物にとっても厳しい環境となっているので、今回のようにファサードがシェードとなって植物を守ってくれている状況はとてもいいそうで、建築と植物のコラボレーションもぜひみていただきたいです」

<写真>エントランス入ってすぐの前庭。ミラーの壁が反射し明るい。木々が育つとまた違う印象になりそうだ。

ADの後に記事が続きます
大阪万博
Victor Picon ©Cartier

さらに建物の2階にも半屋外の庭があり、ほっと一息つけるような空間。日本の四季をテーマに木々が植えられ、楕円形のトップライトからの光が1階の展示室内へ落ちる設計になっている。

<写真>2階の庭の奥には会議のできるWAスペースがある。外壁や天井は土壁で、植物と調和する落ち着いた空間となっている。





可能性に満ちた子どもたちに向けた、時間によって表情を変える「パナソニックグループパビリオン『ノモの国』」

大阪万博
©︎パナソニックホールディングス株式会社

二つ目に紹介するのは、「パナソニックグループパビリオン『ノモの国』」だ。コンセプトは、“解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。” 次の世代を担う子どもたちに向け、感性を刺激し想像力を解き放つきっかけをつくりたいと生まれたパビリオンだ。

「私自身、アルファ世代の子どもを育てているのですが、万博は子どもの夢を刺激するものであってほしいと思っています。コンペでは子どものスケッチのような絵を提出しました。子どもの存在って、まだ形が決まっていない、どんどん形を変えていくようなものだから、あえて不定形なかたちにしたいなと思っていました。この不定形な曲げたスチールパイプが構造となっており、この特殊な構造を成立させるのがとても大変でした」

<写真>鏡面のような外壁に、循環を表す8の字のスチールパイプでできたモチーフがファサードになっているユニークな建築。

ADの後に記事が続きます
大阪万博
©︎パナソニックホールディングス株式会社

このパビリオンもファサードのデザインに注目したい。循環を表す「8の字」のモチーフを組み合わせ、そこにオーガンジーの布を施した。布が海風にはためき、色も変化する有機的な建築だ。夜にはライトアップされ、当てる光の色によっても大きく印象が変わる。

「ここは海風が強い場所なので、風を生かした建物にしたいと思いました。今回使用したオーガンジーという布は普段は建築に使うものではないのですが、金属スパッタリング加工を施したことで、さらに表情が変わるような建築になったと思います。ちょっと濃いめのピンクだったり、薄いピンクだったり、曇りの日と日が出た時でもう全然色が変わるんです」

<写真>ファサードに使われているモチーフの8の字が蝶のように見えることから、館内の展示にも蝶のモチーフが使われている。

大阪万博
©︎パナソニックホールディングス株式会社

こちらのパビリオンも、永山の働きかけで会期終了後に他のイベントで転用することを予定しているという。大胆かつ軽やかなふたつのパビリオンは、世界から注目されるこの大舞台で、大きな反響を巻き起こしそうだ。

<写真>パナソニックグループの光・映像・音・空気に関する「空間演出」技術が活用され、五感を刺激する展示空間となっている。


EXPO 2025 大阪・関西万博
会期/4月13日(日)~10月13日(月)

ウーマンズパビリオン
公式サイト

パナソニックグループパビリオン『ノモの国』
公式サイト

ADの後に記事が続きます
Page was generated in 7.6886539459229