記事に移動
 
Hearst Owned

【栃木】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築10

さまざまな魅力あふれる観光地が点在し、人々を惹きつける栃木県。明治時代の名建築から気鋭建築家の話題作まで、栃木の魅力を存分に取り込んだ、建築家のユニークなアイデアが見どころ。

By miki tamura

豊かな自然が楽しめる那須塩原エリアから、国際的な観光地として人気を集める由緒ある日光エリア、グルメ巡りも人気の県央に、里山の風景や陶芸も楽しめる県東など、さまざまな魅力あふれる観光地が県内のあちらこちらに点在する栃木県。地元の魅力を発信する名建築をめぐるのも楽しみ方の一つ。モダニズム建築の巨匠から今をときめくスター建築家まで、地域の個性をユニークに表現したデザインを見に行こう!

【東京】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築20

【大阪】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築20

【福岡】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築20

【茨城】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築10

1

JR日光駅/日光市

日光駅
Getty Images

明治時代から国際的な観光地として賑わってきた日光。その玄関口として多くの貴賓や公使、そして観光客を出迎えてきたのが1912年に竣工した「日光駅(現JR日光駅)」だ。

ハーフティンバー様式の木造二階建て建造物となり、西洋の美しさを取り入れたネオルネサンス建築が特徴。随所に幾何学的要素や対称性が用いられ、遠目から見ても近くから見ても優美なデザインが楽しめる。淡いピンクで縁取られた白亜の洋館はその美しさから「白い貴婦人」とも呼ばれ、改築から100年以上経ったいまも多くの建築ファン、鉄道ファンを魅了している。

JR東日本では、JR日光線の活性化を図り2009年と2016〜17年と、2度にわたる駅舎の改修をおこなっている。駅舎の伝統的な価値を守りながら内装を刷新。大正時代のデザインや配色を取り入れ、外装と内装の一体感を目指した。改修された待合室には、日光東照宮からヒントを得て天井面に「折り上げ格天井」のデザインを採用。クラシックな外観とマッチしたエレガントな内装が完成した。

JR日光駅
栃木県日光市相生町

2

イタリア大使館別荘/日光市

あ

前川國男や吉村順三、ジョージ・ナカシマなど多くの著名建築家を育て、日本の現代建築に最も影響を与えた外国人建築家、アントニン・レーモンド。

1919年に「帝国ホテル」建設のために、フランク・ロイド・ライトと共に来日したレーモンドは、その完成を待たずして日本で独立。その後、数々のモダニズム建築の傑作を手掛けてきたが、彼の代表作の一つで初期の作品となるのが、日光市中禅寺湖畔に立つ「イタリア大使館別荘記念公園本邸」だ。

明治時代以降、豊かな自然に囲まれた中禅寺湖周辺は、イタリア屈指の避暑地のコモ湖に似ていると、多くの各国大使や外国人別荘が建てられ、国際避暑地として発展した。その一つで1928年に完成した「イタリア大使館」の夏季別荘は平成9年まで歴代の大使が使用していたという。

ADの後に記事が続きます
イタリア大使館

最も目を引くのが、杉の樹皮と薄板で構成された美しい市松模様の外観だ。周囲の豊かな自然環境の中に調和しながら見る人を魅了する。内装にもスギ材は多用され、パターンを変えながら杉皮張りで各部屋とも美しく仕上げられ、見応えもたっぷり。

1階が食堂と書斎、リビングスペースからなる大きなオープンスペースで、湖に向かう広々とした広縁がつながっている。



イタリア大使館別荘

2階には3部屋の寝室が並び、どの部屋からも中禅寺湖を望める設計に。湖の景観を最大限に生かしたデザインは、まさにため息の出て素晴らしさだ。

イタリア大使館別荘
栃木県日光市中宮祠2482
公式サイト





ADの後に記事が続きます
3

英国大使館別荘/日光市

英国大使館別荘

明治時代以降、たくさんの外国人別荘が立ち、国際避暑地としてにぎわった奥日光の中禅寺湖畔。その中で最も古い外交官別荘となるのが、奥日光をこよなく愛した英国公使、アーネスト・サトウの別荘だ。明治29年に個人別荘として建てられたもので、その後サトウが日本を離れる際に後任の英国公使に譲り渡され、平成19年まで「英国大使館別荘」として使用されてきた。


英国大使館別荘

具体的な設計者は不明とされているが、サトウが残した日記から、別荘の設計にあたり「鹿鳴館」や「三菱一号館」、「ニコライ堂」など明治時代を代表する近代建築の英国人建築家、ジョサイア・コンドルからのアドバイスがあったことが具体的に残されている。







ADの後に記事が続きます
英国大使館別荘

室内は、中禅寺湖に面して幅2.2m以上もある開放的な広縁が設えられ、各居室から中禅寺湖、白根山など奥日光の雄大な自然を堪能することができる。中でも2階からの眺望が素晴らしく、現在はティールーム「南4番Classic」で、駐日英国大使館シェフの監修を受けたスコーンと紅茶のセットなどを楽しむことができる。

英国大使館別荘
栃木県日光市中宮祠2482
公式サイト


4

栃木県立美術館/宇都宮市

栃木県立美術館
撮影:村井修

日本における公立近現代美術館の先駆けとして、1972年に開館。1981年に増築された常設展示室を含めて、設計はモダニズム建築の旗手として早くから注目を集めた建築家、川崎清が担当した。

ハーフミラーガラスが印象的な建物は、内外を緩やかにつなぐ役割を持ちながら、敷地内に立つスズカケの大木がガラスに映り込むように設計され、その様子がまた美しい。

ADの後に記事が続きます
栃木県立美術館
撮影:椎木静寧

所蔵するのは栃木県ゆかりの作家、清水登之や川上澄生から、ヨーロッパの近現代美術作品など。マイセン磁器コレクションも人気を博している。

敷地中央に設けられた白い屋外広場に立ってみると、建物自体も芸術作品の一部のように見えてくる。内部の設計も変化に富んだ空間が連なり、見る人を飽きさせない構成も見どころの一つに。

栃木県立美術館
栃木県宇都宮市桜4-2-7
公式サイト


5

フォレスト益子/芳賀郡益子町

フォレスト益子

陶器の町、益子にある県立自然公園「益子の森」内に立つ公共施設。手掛けたのは、鳥羽市の「海の博物館」をはじめ数々の文化施設・公共施設を世に送り出した名建築家、内藤廣。





ADの後に記事が続きます
フォレスト益子

建物はレストラン、展示室(写真)、研修室、10室の宿泊施設が入る、湾曲する二つの平屋からなり、木材とガラスを素材に、光と風を取り込みながら周囲の豊かな自然と共存する形でデザインされている。








フォレストイン益子

2つの建物の間に敷き詰められているのは地元、益子焼の陶板。アーチ状に続くガラス屋根の長い庇のルーバーを通して日差しが差し込み、陶板の石畳に落ちる影も美しい。

宿泊施設の客室は全部で10室。全ての部屋にロフトが設けられ、天井が高く開放感があるのが特徴。ロフトの大きな窓からは、夜には星空が望めることができ、朝になれば爽やかな光が差し込み居心地も抜群だ。

自然公園の敷地内には約4kmの散策路やアスレチック、那須連山を見渡す展望台や吊り橋に天体観測施設もあり、自然を満喫することができる。

フォレスト益子
栃木県芳賀郡益子町大字益子4231
公式サイト

ADの後に記事が続きます
6

石の美術館/那須町

石の美術館

人口1800人ほどの、日本の原風景と言える里山が広がる栃木県の芦野地区。
江戸時代に五街道の一つして整備された奥州街道の宿場町で、関東最北の宿場として栄えた歴史好きに人気のエリアだ。
そこに2000年に完成したのが、建築家、隈研吾による「石の美術館」。



石の美術館

「石の美術館」という名の通り、主役となるのは地元で採掘される芦野石。100~700万年前頃の噴火によって生成されたと言われる芦野石は、古くから古墳の石室や城の石垣などに用いられ、現代建築にも欠かせない石材となっている。過疎化が進む芦野地区の新たな挑戦として、街のアイデンティティともなるある石の可能性を探るプロジェクトとしてスタートした。

<写真>芦野石の壁に囲まれた中庭と水盤。



ADの後に記事が続きます
石の美術館

敷地内には大正から昭和初期に作られた3つの石蔵があり、カフェや茶室(写真)、ギャラリーに再生しながら3棟をつなぐスペースを新設。










石の美術館

新たな建物にある「石と水のギャラリー」では、50㎜の薄さに切った芦野石を積み上げた「石格子」を採用し、開口部から届く風や光の様子が楽しめる。また光を通すことで浮かび上がる白大理石の表情など、随所で石の魅力や可能性を感じさせる仕掛けに。中庭の水庭を囲むように配された建物は石橋でつながり、水盤に移る姿もフォトジェニックだ。

石の美術館
栃木県那須郡那須町芦野 2717-5
公式サイト

ADの後に記事が続きます
7

リゾナーレ那須「POKO POKO」/那須町

リゾナーレ那須

2019年にオープンした「リゾナーレ那須」のコンセプトはアグリクルトゥーラ(農業)とツーリズモ(旅)を掛け合わせた「アグリツーリズモリゾート」。栃木県北部・那須岳の麓、標高約500mの場所に4万2千坪もの敷地を有し、その土地の生産活動に触れる体験を軸に、ホテルでの食事やさまざまなアクティビティを楽しむことができる。

リゾナーレ那須

敷地内には、渡辺明が手掛けた宿泊棟をはじめ、農園、アクティビティ施設「POKO POKO」、そして2つのレストランが点在し、自然の中で過ごす体験が満喫できる。

ADの後に記事が続きます
リゾナーレ那須

滞在中のさまざまなアクティビティの拠点となる施設が、クライン・ダイサムアーキテクツが手掛けた「POKO POKO」。その名の通りポコポコと連なる3つの大屋根がなんとも愛らしいアイコニックな建築だ。

日中は大屋根に設けられたトップライトから自然光が降り注ぎ、光に包まれた温かな空間に。大屋根が作り出す広い内部は、ピザ窯を併設し「食」のアクティビティが楽しめるキッチンエリア、子どもたちが思い切り体を使って遊べるネット遊具とボールプールのプレイエリア、そして暖炉の炎を眺めながらゆったりと過ごせるBooks&Cafeエリアと3つの空間で構成され、それぞれがおおらかにつながっていく。

那須連峰を思わせる印象的な森の建築は、夜になると開口部全体から暖かい光が溢れ、屋根だけが森の中に浮かび上がる幻想的な風景を作り出す。

リゾナーレ那須「POKO POKO」
栃木県那須郡那須町高久乙道下2301
公式サイト

8

那須塩原市立図書館 みるる/那須塩原市

みるる 那須塩原市立図書館

本を読んだり調べ物をするだけでなく、地域の魅力を知ったり、交流を楽しんだり、くつろいだりと、さまざまな楽しみ方がデザインされている最近の図書館。栃木県内ならJR黒磯駅に隣接する「那須塩原市図書館 みるる」が有名だ。

黒磯地域の活性化を目指した都市再生事業の一環で建設された施設で、図書館を中心にホール、ギャラリー、カフェなどが同居する市民の交流拠点。地元出身の建築家、「UAo」の伊藤麻理が設計を行い、那須塩原地域のアイデンティティでもある「森」をテーマに空間をデザインした。

Page was generated in 6.208281993866