
都心からもアクセスがよく、夏は新緑、冬は雪の風景も楽しめ一年中人気の軽井沢。近年では、新しいホテルや美術館もオープンし、更なる注目を集めている。この記事では、なかでも建築・デザイン好きが必ず訪れるべき宿を厳選して紹介。静かな時間が流れる軽井沢で、癒やしのひとときを満喫して。
SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA(ししいわハウス軽井沢)

坂茂による「SSH No.01」と「SSH No.02」、そして西沢立衛による「SSH No.03」という3つの建築で構成される「ししいわハウス」。プリツカー賞受賞建築家たちによるホテルということもあり、建築好きにとっては必ず訪れたいディスティネーションとなっている。
「SSH No.01」は、軽井沢の自然の樹々に沿うように設計された曲線の建築で、内部スペースに広々と流れるような空間を生み出している。写真は宿泊者がまず初めに足を踏み入れるライブラリー兼レセプション。国内最大級を誇る木枠のガラス扉からは豊かな緑を臨む。

「SSH No.01」の客室は全10室。3つのユニットに分かれており、それぞれにリビングルームと簡易キッチン、プライベートテラスやガーデンを備える。
自然との共存やシンプルさをテーマにしたインテリアには、坂茂建築のシグネチャーである紙素材が随所に活かされており、照明やドアノブといった細部に至るまで洗練されたデザインが施されている。

「SSH No.02」は、「SSH No.01」とは対照的に直線的な建築。温かみのある杉の木材とガラス壁面によってランドスケープとの一体感を感じられる空間で、専門家のキュレーションによる写真アート作品の展示も行っている。
客室は1階に位置し、職人による檜風呂や森林に囲まれたテラスが付いた全12室。紙素材で編まれた座面の椅子や幾何学的デザインの“SSHテーブル”など、オリジナル家具を揃える。
2階のパブリックスペースは、切り妻屋根の小屋組に無柱のトラスを組んだ構造デザインが特徴的。レストランやバー、テラスがあり、「SSH No.01」と「SSH No.03」の宿泊者も利用することが可能。

2023年にオープンした「SSH No.03」は、伝統的な日本の旅館を現代の解釈で表現。縁側や回廊、中庭によってゆるやかにつながる10棟のパヴィリオン建築で、客室10室とヴィラ1棟で構成されている。室内は天井から床まで上質な総ヒノキ張りになっており、ほのかな木材の香りが空間を包み込む。

西沢立衛がゲストのために厳選した世界的な家具のコレクションにも注目したい。アルネ・ヤコブセンの“スワンチェア”やピエール・ジャンヌレの“イージーチェア”、ミヒャエル・トーネットの“ベントウッド・スツール”などが配され、名作家具とのステイを楽しむことも。
「SSH No.03」には他にも、檜風呂や現代のお茶会を気軽に楽しめる「ティーハウス」、ヨガのプライベートレッスンなどを受けられるウェルネスルームも用意されている。

2023年にオープンした 「SSH No.03」によってついに完成した「ししいわハウス軽井沢」。2026年には同じ軽井沢にて石上純也による新たなウエルネスリトリートも開業予定。さらに、妹島和世による「ししいわハウス」第2弾がまもなく箱根に誕生するというニュースも。「ししいわハウス」コレクションの今後の展開にも目が離せない。

SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA
長野県北佐久郡軽井沢町長倉長倉2147768
公式サイト
星のや軽井沢

各施設が独創的なテーマで非日常を提供する「星のや」の始まりの地である「星のや軽井沢」。「谷の集落に滞在する」をコンセプトに、軽井沢野鳥の森に面した豊かな自然を囲む約1万3000坪の敷地を有し、さまざまなタイプの部屋を77室を展開している。
「もっと日本らしさを大切にしながら近代化したとしたら」「和の文化が熟成を重ねて今を迎えていたとしたら」......。そんな仮想の「もう一つの日本」を思いながら創られており、日本の原風景である集落を思わせる分棟型の建築・ランドスケープ設計となっている。

「庭路地の部屋」は、中心から少し奥まった路地に位置する戸建ての部屋。別荘のように使うことができるため、家族旅行や数人での滞在、長期滞在に適しており、川につながる水路のある棟や坪庭のある棟、メゾネットタイプの棟、愛犬と泊まれる棟など、1棟ごとに趣も異なる。

「水波の部屋」は川に面した客室。ゆるやかに流れる川の水景やせせらぎを目の前に堪能でき、開放的な気分での滞在が叶う。広々としたテラスには、テーブルや椅子、さらにソファーベッドがあり、屋外での時間もゆったりと過ごせる。

「山路地の部屋」は緑に包まれた客室。敷地全体を見渡せる眺望の良さが特徴で、四季折々の自然の風景とともに静かな時間を過ごすことができる。

写真は宿泊者のみが利用できる「メディテイションバス」。光と闇に包まれる空間を行き来するうちに、無心となる感覚を体感できる。
近隣には北原白秋や与謝野晶子など歴代の文人に愛されてきた名湯・「星野温泉 トンボの湯」もあるので、合わせて利用するのもおすすめ。

滞在中に欠かせないのが、周辺の散策。敷地内にある棚田には約20もの小滝があり、「棚田ラウンジ」では水の音を聞きながらの散策や椅子に座っての読書などを楽しめる。さらに国設「軽井沢野鳥の森」に面していることから様々なネイチャーツアーも開催されている。
極上の休息時間を満喫できる「星のや軽井沢」。泊まる部屋や季節を変えて何度でも訪れたくなるはず。
星のや軽井沢
長野県軽井沢町星野
haluta hotelli still(ハルタホテリ シュティル)

浅間山麓森の手前に位置し、かつては交通の要所でもあった軽井沢・追分。2022年、廃墟となっていたドライブインを改修した複合施設「still(シュティル)」が誕生した。
良質なヴィンテージ家具が揃う「ハルタ」のショールームやベーカリー、コーヒースタンドの他、レストラン、ギャラリーなどが入居し、北欧の暮らしを体感できるスポットとして開業当初から注目を集めていた「シュティル」。2023年9月には、待望のホテル「haluta hotelli still」がついにオープンした。

暮らすような滞在ができるゆとりのある「grand room」、ワーケーションで軽井沢を訪れた人をイメージした「studio」、コンパクトでありながら広いテラスを有する「terrace」といった3つのテーマを持つ客室を用意。
全ての部屋に、ツインベッド、ダイニング、キッチン、バスタブ、トイレが備え付けられており、部屋の中で生活が完結するプライベートな滞在を叶えてくれる。

家具の選定や内装デザインは、 2000年からヴィンテージ家具を扱ってきた「ハルタ」が手がけており、椅子やダイニングテーブル、ポットや器にいたるまでが、貴重なヴィンテージで揃えられている。

馬のテールヘアー100%でできたマットレスや信州でつくられたシリカライムによる左官仕上げの壁、樹齢200年のアラスカヒノキ材を使用したバスタブ、オーガニックのアメニティなど、身体や環境にも優しい天然素材を組み合わせた空間も魅力。

さらに、2023年11月には、ホテルに隣接する形でサウナもオープン。サウナの本場フィンランドにいるかのようなデザインの異なる個性を持つ3棟からなり、軽井沢のせせらぎの中での外気浴はここでしかできない贅沢な体験。

ショッピングやグルメ、サウナまでも楽しめる「haluta hotelli still」。北欧好きはもちろん、軽井沢のニュースポットとしてマッピング必須のホテルだ。
haluta hotelli still
長野県北佐久郡軽井沢町追分1372-6
公式サイト
森の離れ

2020年9月にオープンしてから、建築好きの間で話題となっている「森の離れ」。軽井沢駅から車で5分の2,600平米の森の中に位置し、5棟ヴィラで構成されている。
設計を手掛けたのは、武井誠+鍋島千恵による設計事務所TNA。豊かな自然を様々な角度から楽しめる全方面のガラス張りでありながら、ウッドスクリーンや植栽を配置することでプライベート面でも不安のない設計となっている。また、平屋にすることで背の高い草木の中に溶け込み、360度自然に囲まれた空間を実現している。