
休日のお出かけスポットや旅先での行きたい場所リストとしても人気の美術館や博物館。全国には、常設展や企画展の作品のほか、写真映えする撮影スポットや設置されている名作椅子、建築のエピソードなどが堪能できる美術館や博物館が多数存在する。そんな、館全体を堪能できる美術館や博物館でデザインの旅を楽しんでみては?
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青森
十和田市現代美術館 / 西沢立衛
2008年に“アート作品のための家”というコンセプトで西沢立衛により設計された「十和田市現代美術館」は、個々の展示室を独立させることでそれぞれの作品を新鮮な感覚で楽しむことができる美術館だ。

屋外に配置された作品もガラスの回廊を歩きながら鑑賞することができる(写真左)。
大小さまざまな大きさの展示室がガラス廊下でつながれている開放的な空間。エントランスホールに展示されている、ジム・ランビーによる『ゾボップ』。建物にガラスを多用することにより全体に余白が多いつくりとなり、外の通りを歩く人からも中が見え街と共存するような工夫がなされている。
十和田市現代美術館
住所/青森県十和田市西二番町10-9
tel. 0176-20-1127
開館時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日/月曜(休日の場合は翌日)、年末年始
公式HP

青森
八戸市美術館 / 西澤徹夫、浅子佳英、森純平
1986年に開館し、2021年に西澤徹夫、浅子佳英、森純平による設計でリニューアルした「八戸市美術館」。“出会いと学びのアートファーム”をテーマに、アートを通した出会いをきっかけに人が成長することを目指し、活動の空間を大きく確保した作りとなっている。

互いに学び、何かを作り出す機会がうまれる空間として、可動式のパーテーションや家具を備えた天井高17メートル、広さ約800平米の“ジャイアントルーム”と内容により最適な展示を行うことができる個室を備え、出会いや発見を促す新しい美術館としての機能を持たせた。
八戸市美術館
住所/青森県八戸市大字番町10-4
tel. 0178-45-8338
開館時間/10:00~19:00(入館は18:30まで)
休館日/火曜(休日の場合は翌平日)、年末年始

青森
弘前れんが倉庫美術館 / 田根剛
2020年、田根剛により設計され開館した「弘前れんが倉庫美術館」。元々は1923年に建造された組積造りによるれんが造りの酒造工場であったが、現在日本ではこの工法で建物をつくることができないため、建物を継続するという“延築”という手法で近代産業遺産を未来に向けた美術館へと作り替えた。チタンを使用した屋根は、太陽の当たる角度によってさまざまな色に光り輝き、美術館のシンボルとしての役割も果たしている。

2階に位置するライブラリーは誰もが利用できるフリースペース。「マルニ木工」のチェア“HIROSHIMA”が配置された開放感あふれる空間が魅力(写真左)。
弘前のりんごからインスピレーションを得た、ジャン=ミシェル・オトニエルによるガラスの彫刻作品『エデンの結び目』(写真右)がれんが壁に映える。
弘前れんが倉庫美術館
住所/青森県弘前市吉野町2-1
tel. 0172-32-8950
開館時間/9:00~17:00
休館日/火曜(休日の場合は翌日)、年末年始

青森
青森県立美術館 / 青木淳
2006年、青木淳の設計により開館した「青森県立美術館」は、美術館の隣接する「三内丸山縄文遺跡」の発掘現場から着想を得て建てられた美術館だ。発掘現場に発生する無数の入組んだ遺構(トレンチ)に凹凸のホワイトキューブを被せることで今までにない展示空間を実現した。

展示室空間の中央に位置する、縦21メートル、横21メートル、高さ19.5メートルもの巨大なアレコホール(写真左)。ここには、幅約15メートル、高さ約9メートルのマルク・シャガールによる『アレコ』の背景画4点が展示されており、床は赤土や砂利などに消石灰とにがりを混ぜて練り固めた三和土(たたき)が使用されている。
地下1階にある創作ヤードと呼ばれる屋外トレンチ(写真右)。地下2階の屋外には、青森県出身の美術作家、奈良美智による高さ8.5メートルの『あおもり犬』が佇んでいる。
青森県立美術館
住所/青森市安田字近野185
tel. 017-783-3000
開館時間/9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日/第2、第4月曜(休日の場合は翌日)、年末年始
公式HP

秋田
秋田県立美術館 / 安藤忠雄
1967年に開館し、2013年に安藤忠雄が設計を手がけリニューアルした「秋田県立美術館」。“ここにしかない魅力のある美術館”をコンセプトにした、安藤建築の特徴でもある力強いコンクリート造の外観が目を引く建物で、県民に親しまれた「旧秋田県立美術館」の三角屋根を継承した三角形モチーフを、外観や美術館ロゴ、床のタイルなど随所に散りばめた印象的な空間が広がる。

美術館建築の見どころは、壁の支えや柱のないエントランスの螺旋階段。三角形のモチーフが施された天窓から自然光が降り注ぎ、清閑とした雰囲気が来館者を出迎える。ほかにも、水庭越しに千秋公園の美しい風景を堪能することができるラウンジや三角階段など、展示作品以外にも楽しめる建物となっている。
秋田県立美術館
住所/秋田県秋田市中通1-4-2
tel. 018-853-8686
開館時間/10:00~18:00
休館日/不定休

宮城
宮城県美術館本館 / 前川國男
前川國男により設計され、1981年に竣工した「宮城県美術館」本館。仙台の都心部を流れる広瀬川河畔に位置し、自然豊かな環境が魅力。前川國男の“美術館は美術を正しく見せるためのわき役”との考えから、展示がしやすく、演出しやすいデザイン設計がなされた。建物の周囲には彫刻作品もあり、美術館全体を散歩しながら楽しめる工夫がなされている。

正面玄関を抜けた先には、トップライトから自然光が降り注ぐ開放的なエントランス・ホールが広がる(写真左)。
館内の椅子(写真右)などのインテリアは、建設当時に前川國男建築設計事務所がデザインし、天童木工が制作したもの。
宮城県美術館
住所/宮城県仙台市青葉区川内元支倉34-1
tel. 022-221-2115
開館時間/9:30~17:00(チケット販売は16:30まで)
休館日/月曜(休日の場合は翌平日)

東京
国立西洋美術館 / ル・コルビュジエ
20世紀を代表する建築家のひとりであるル・コルビュジエにより設計され、1959年に開館した「国立西洋美術館」本館。ル・コルビュジエによって提唱された“近代建築の5つの要点”は、1階入り口部分を柱で建物を浮かせた「ピロティ」と呼ばれるスペースで表現されている。建設にあたっては、ル・コルビュジエの弟子である坂倉準三、前川國男、吉阪隆正が協力し完成させた。2016年には、世界文化遺産へ登録された。

ル・コルビュジエが1929年から亡くなるまで36年にわたって練り続けた美術館の建築コンセプト“無限成長美術館”の基本的な原理に基づいて設計された「国立西洋美術館」。美術館の中心に置かれる吹き抜け空間である「19世紀ホール」(写真左)と2階を繋ぐスロープは、作品と空間をゆっくりと楽しみながら移動することができる導線を確保。型枠に使用された姫小松という木の木目が美しく浮き出ているコンクリート製の柱と梁も見逃せない。
2階展示室(写真右)では、ル・コルビュジエが提唱した人体の寸法をもとにした寸法規格「モデュロール」が用いられた。「国立西洋美術館」では、ほかにも柱の間隔や前庭の石畳など様々なところでこのモデュロールが使われることにより、建築に統一感が生まれている。
国立西洋美術館
住所/東京都台東区上野公園7-7
tel. 050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間/9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日/月曜(休日の場合は翌平日)、年末年始

東京
東京国立近代美術館 / 谷口吉郎
日本で最初の国立美術館として1952年に開館し、1969年に谷口吉郎により設計、移転開館した「東京国立近代美術館」。アプローチやエントランスには、小さな広場を設けたピロティ構造を採用し、谷口が掲げた“街角の小公園”として役割も果たしながら、自然光がたっぷりと入る開放感のある空間となっている。2002年には、坂倉建築研究所の設計による増改築が行われ、ミュージアムショップやアートライブラリなどが新設された。

2002年の改築時に休憩スペースとして開放された、美術館最上階の4階に位置する“眺めのよい部屋”(写真左)。2012年には建築家の西澤徹夫によって、オレンジの床にハリー・ベルトイアがデザインした“ベルトイア・チェア”が設置された現在の姿に生まれ変わった。“眺めのよい部屋”はジェームズ・アイヴォリー監督作品の映画タイトルより命名。
3階の日本画コーナーに設置されているのは、剣持勇による“ラタン・スツール”(写真右)。
東京国立近代美術館
住所/東京都千代田区北の丸公園3-1
tel. 050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間/10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日/月曜(休日の場合は翌平日)、展示替期間、年末年始
公式HP

東京
東京都美術館 / 前川國男
1975年、前川國男の設計により竣工。レンガ色の打込みタイルでできた現在の「東京都美術館」(開館は1926年)は、メインエントランスを地下に配置し、上野公園の木々にとけ込む設計になっている。中央広場を中心にそれぞれ独立したブロック状に各棟を配置することによる、都市的な要素を取り入れた空間構成が特徴。また、シンボル的存在の球体、井上武吉の作品のほか、敷地内に展示されている彫刻作品も見逃さないで。

館内各所でみられるヴォールト(かまぼこ)天井にオリジナルのペンダントライトが並ぶ。建物にあわせてデザインしたカラフルな椅子も前川國男によるもの。

1階にある「佐藤慶太郎記念 アートラウンジ」では、フィン・ユールなど北欧デザインのテーブルやチェアでゆっくりとくつろぐことができる。
東京都美術館
住所/東京都台東区上野公園8-36
tel. 03-3823-6921
開館時間/9:30~17:30、特別展開催中の金曜日は9:30~20:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日/第1・第3月曜(祝日・振替休日の場合は翌平日)、年末年始、整備休館
※特別展・企画展は毎週月曜休室(祝日・振替休日の場合は翌平日)

東京
国立新美術館 / 黒川紀章
2007年、黒川紀章・日本設計共同体の設計により開館した「国立新美術館」は、“森の中の美術館”をコンセプトに周囲の森と共生する、訪れる人々の新しい芸術文化のサロンになるような交流スペースを重視した建物だ。波打つような三次元曲面のガラスカーテンウォールは、自然光と緑を感じられる気持ちの良い空間を生み出している。メインエントランスには、緋色のリングを配した円錐形のモチーフを設置し一目でエントランスだとわかる工夫がなされ、建物全体を楽しみながら滞在できる美術館となっている。