
開催中の3年に1度開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。春、夏、秋と11月まで3会期に渡る本芸術祭は、美しい島々で展開されるアート作品はもちろん、島ならではのローカルカルチャーや船での移動など、“子どもと行くアート旅”の入り口としても注目したい。本記事では3歳の娘を持つエディターが子どもと一緒に楽しみたいアートをピックアップ。2025年の旅の参考にしてみて。
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《赤かぼちゃ》草間彌生/直島

「地中美術館」や2025年5月末にオープンする「直島新美術館」などがあり”現代アート島”としても世界中から多くの人が訪れる直島。「瀬戸内国際芸術祭」が開催される直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島の7つの島への玄関口となる高松港からは高速船で約30分。子どもにとっても丁度よい距離にあり、船旅を楽しみつつ島に到着することができる。
直島の宮浦港に近づくと見えてくるのが、草間彌生による《赤かぼちゃ》。ビビッドな赤と丸いドット、船が陸に近づくにつれて大きなかぼちゃであることが分かる…。そんな驚きとともにアートな旅を始めるのにぴったりな作品だ。草間が詩の一部で語った「太陽の『赤い光』を宇宙の果てまで探してきて、それは直島の海の中で赤カボチャに変身してしまった」というストーリーもぜひ聞かせて作品に思いを馳せたい。
同じく草間作品の黄色い《南瓜》もバスで10分ほどの距離なので、あわせて鑑賞するのもおすすめ。
《直島パヴィリオン》藤本壮介/直島

《赤かぼちゃ》から歩いて5分ほどの海沿いにあるのが、建築家の藤本壮介が手掛けた、地面から浮いているようなフォルムの真っ白いパビリオン。パビリオンの中には入ることができるので、中からメッシュごしに青空を見上げ、不思議な感覚を子どもと楽しみたい。宮浦港から高松港までは夜まで(最終出発19:45)フェリーが運航しているので、夜のライトアップした様子もあわせて堪能したい。
<写真>直島パヴィリオン 所有者:直島町 設計:藤本壮介建築設計事務所 写真/福田 ジン
《直島銭湯「I♥湯」》大竹伸朗/直島

《直島パヴィリオン》から徒歩5分。強烈な個性で子どものインスピレーションを刺激してくれそうな作品が大竹伸朗による《直島銭湯「I♥湯」》。外観から子どものワクワクが止まらないこちらは、実際に入浴できる美術施設で、浴場には巨大な象や蛸の壁画、カラフルな天井画が描かれている。シャンプーなどは設置されているので、タオルだけ持参すればよいところも荷物が多い子連れには嬉しいポイント。
<写真>大竹伸朗 直島銭湯「I♥湯」(2009) 写真:井上嘉和
《海を夢見る人々の場所》ヘザー・B・スワン+ノンダ・カサリディス/豊島

高松港から高速船で35分、直島からも20分で行ける豊島は湧き水が豊富でお米を生産する棚田が美しい、人口700人ほどの島だ。この島で見ておきたいのは、海と瀬戸内の島をのんびりと眺めることができるベンチのようなアート作品。オーストラリア人アーティストのヘザー・B・スワンと建築家のノンダ・カサリディスによるもので、その作品名の通り、《海を夢見る人々の場所》として多くの人がくつろいできた。砂浜の上に展示された、作品の柔らかな曲線が海の波とも調和し、しばし日々の喧噪を忘れさせてくれるはず。ベンチに腰掛けた後ろ姿がフォトジェニックなので、写真撮影もお忘れなく。
《線の記憶》塩田千春/豊島

生と死という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求し糸で紡ぐ塩田千春の新作《線の記憶》。塩田の作品のエネルギーを子どもはどんな風に感じるのだろう?赤い糸で埋め尽くされた圧巻の空間を、子どもの表情を逃さずに鑑賞したい。
《ピンポン・シー NEW!》原倫太郎+原游/女木島

高松港からフェリーで20分の女木島、女木島からフェリーでさらに20分の距離にある男木島は両島あわせて回るのが効率的。「お店」をテーマにした≪小さなお店プロジェクト≫に展開される作品は、ヘアサロンや書店、カフェなど“お店屋さんごっこ”のような楽しさを作品に反映した9作品。
原倫太郎+原游による卓球場シリーズは今年リニューアル! 木が貫通した7面のカラフルな卓球台が子どもたちの遊び心をくすぐる。
《ランドリー》レアンドロ・エルリッヒ/女木島

≪小さなお店プロジェクト≫では、金沢21世紀美術館に展示されている《スイミング・プール》でも多くの子供の心を掴むレアンドロ・エルリッヒの作品《ランドリー》が展示されている。展示空間に対面に置いてあるのは、本物の洗濯機と乾燥機で、一方は洗濯物が回転する映像が流れ、一方は空っぽ。思わずドアを開けてみたいという衝動に駆られるような現実と仮想が交差するような仕掛けが施されている。
《ゆめうつつ~ミライのワタシ》松井えり菜/男木島

個性的な自画像やウーパールーパー作品で多くの人を惹きつける松井えり菜の作品は男木島にて展示されている。作品のコンセプトは「未来の男木島人」。男木小・中学校に通う14人の子どもたちの自画像を重ね合わせた版画と松井の絵画がコラボレーションしたインスタレーションは必見。所々に隠れているウーパールーパーも探してみて。
《タコツボル》TEAM 男気/男木島

松井えり菜の作品から2分ほど海に向かって歩くと、男木港がありその小さな空き地に設置されているのが、TEAM男木による《タコツボル》。男木島で昔から行われているタコ漁に使うタコ壺をモチーフとした遊具で中に入ることもできる。タコ壺内にはしっかりとタコも捕まっているので小さい子でも分かりやすく、楽しめること間違いなし。
《歩く方舟》山口啓介/男木島

《タコツボル》から歩いて10分ほどの堤防に設置されているのが、山口啓介による立体作品《歩く方舟》。旧約聖書のノアの方舟に着想を得た作品で白と青の4つの山をもった方舟から脚が生え、海に向かって歩き出している様子が青い海に映える。想像より大きいので、存在感も抜群。作品に近づくことも可能だが、しっかりと手をつなぎ安全に鑑賞してほしい。
《「Journey of SHIP’S CAT 2025」 瀬戸内をめぐるシップス・キャットの旅》ヤノベケンジ/小豆島

「オリーブの島」としても知られ、芸術祭会場の中で最も大きな面積の小豆島。高松港からは高速船やフェリーで35分~1時間の距離で、運航便数も多いので旅の予定が立てやすいのが魅力。島が大きいので、船の発着港も4つと多いため、見たい作品近くの港をしっかりチェックしておくのがポイント。
小豆島の南東にある坂手港に、2025年4月にオープンしたばかりの「小豆島坂手ポートターミナル さかてらす」に出現したのは、「大阪中之島美術館」や2024年4月の「GINZA SIX」でのインスタレーションが記憶にも新しいヤノベケンジによる彫刻作品《SHIP’S CAT(Jumping)》。船の帆やロープをかじったり、積み荷や食料を食べて船員を困らせるネズミを退治する存在として親しまれてきた「船乗り猫」をモチーフにした作品で、「さかてらす」から船に飛び乗ろうとする躍動感ある様子が人々を惹きつける。
この作品を鑑賞する際におすすめなのが、《SHIP’S CAT(Jumping)》と対で制作された《SHIP’S CAT(Boarding)》とあわせての鑑賞。神戸と坂手を結ぶジャンボフェリー「あおい」の甲板に乗った《SHIP’S CAT(Boarding)》が坂手港に到着するタイミングにあわせると2匹の猫がセットで楽しめる仕掛けだ。
《ヤザイモン蛸》尾身大輔/小豆島

ヤノベケンジの《SHIP’S CAT(Boarding)》から車で15分ほど(徒歩だと1時間以上かかるので要注意)、二十四の瞳映画村内の瀬戸内海を見渡す海岸沿いに展示されるのが、尾身大輔による《ヤザイモン蛸》。香川に伝わる妖怪のヤザイモン蛸をモチーフにした作品で、海を背景にした大きな蛸がダイナミックに存在感を放っている。「ヤザイモン蛸」は、八左兵門という男が昼寝中の大蛸の足を1本ずつ持ち帰っていたところ、8日目に残った足の1本で海に引きずり込まれたという言い伝えだが、そのストーリーを話しながら子どもと楽しむのもいいかもしれない。また、この大蛸は木彫りでできているので、ディテールを堪能するのもおすすめ。
《物語るテーブルランナーと指人形 in 大島青松園》鴻池朋子/大島

大島は、高松港から旅客船で30分ほどの距離にある小さな島。1909年にハンセン病の療養所が設立され、入所者が強制隔離されてきた歴史がある。現在も入所者が暮らしており、瀬戸内国際芸術祭ではハンセン病の正しい知識と大島の歴史を伝える活動を続けている。
大島で子どもと見ておきたいのは、絵画や彫刻、アニメーション、絵本、手芸などを使い、トータルインスタレーションを行う鴻池朋子による作品。大島で生活し仕事をする人々の興味深い物語をテーブルランナーとして制作したもので、さまざまな色やテクスチャーの生地を使って制作された作品は思わず見入ってしまうものばかり。新作の指人形たちは物語の語り部として今回加わっており、その独特なキャラクターに、子どもは思わず手を伸ばしてしまいそう。
※入所者への健康配慮のため、フェリー内および社会交流会館等の屋内ではマスクを着用してください。
≪屋島アートどうぶつ園 ー 海と森のむこうがわ≫≪臨‐Rin‐≫ 西島雄志/高松港エリア

2022年に屋島山上にできた交流拠点「やしまーる」での展示≪屋島アートどうぶつ園 ー 海と森のむこうがわ≫は子どもと必訪したいアートのひとつ。起伏のある地形を生かした美しい曲線がアイコニックな施設の中庭に展示されているのは、山や海でのびのびと暮らす動物たち。
群馬を拠点に活動する西島雄志による《臨‐Rin‐》は、神に使える神鹿と八咫烏(やたがらす)の彫刻。太陽に照らされる神々しい姿は必見。
≪屋島アートどうぶつ園 ー 海と森のむこうがわ≫《アニマルストーリー》岡山富男/高松港エリア

建築内装の職人としても活動する岡山富男は、キリンやブタなどをモチーフに擬人化したアート作品を展開。現代家族を象徴するかのようなキリンの親子やブタさんたちのサーカスには思わず笑顔がこぼれる。ここでは動物作品たちと沢山写真を撮って思い出を残そう。
《宇野のチヌ》淀川テクニック/宇野港エリア
