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『私の夫と結婚して』日本版が大反響を呼んだ4の理由

最終回を迎え早くもロス続出!

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私の夫と結婚して
© 2025. CJ ENM Japan/ STUDIO DRAGON all rights reserved

先週末最終回を迎えた、ドラマ『私の夫と結婚して』日本オリジナル版は、Amazon Originalドラマ作品において、配信開始後30日間の国内視聴者数で歴代1位を記録。世界最大のコンテンツ評価サイトIMDbでは8.2点(10点満点)という数字を叩き出し、世界のドラマファンの間でも注目を集めている。

大旋風を巻き起こした人気ドラマがもっと面白くなる4の注目ポイントを、韓国版と比較しながらお届け。

※こちらの記事はネタバレを含みます。

1

韓国版はローラーコースター系復讐劇、日本版は観覧車系人間ドラマ

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病気で入院中の美紗(小芝風花)が、小学生からの親友の麗奈(白石聖)と夫・友也(横山裕)の不倫を目撃。二人に殺害されたその瞬間、10年前へとタイムリープ。2回目の人生で、ゴミ夫との結婚を回避し、親友に押し付けようとする、というストーリーの大筋は日本版も韓国版も変わらない。韓国版に引き続き、日本オリジナル版が国内外で高評価を得た理由は何なのか?

韓国のCJ ENMとスタジオドラゴンが制作し、Netflixシリーズ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』で知られる監督アン・ギルホを始めとした韓国の制作スタッフが手がける本作。脚本は、これまで数々の日本ドラマや映画『九十歳。何がめでたい』『北極百貨店のコンシェルジュさん』を手がけてきた大島里美が担当し、日本の演技派キャストが集結。

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日本と韓国のタッグにより、冷静なまなざしを持つ日本ドラマと情熱的でスペクタクルな韓国ドラマ、そのどちらにもつかないオリジナルな味わいが醸し出されたのではないだろうか。韓国版のスリルがローラーコースター系復讐劇なら、日本版は観覧車系人間ドラマ。刺激として例えるなら、前者が韓国発マッサージのコルギなら、後者がじわじわ効いてくる温泉と言ったところか。

こうして、韓国のウェブ小説を原作に、異なる触感、味覚を往復しながら楽しめる、二つのドラマが生まれたというわけだ。

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2

佐藤健が演じる“不器用なヒーロー”のリアリティ

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まず、韓国版でカン・ジウォン(パク・ミニョン)にいつもそっと寄り添うユ・ジヒョク(ナ・イヌ)が、スマートで堂々とした、安心できる王子様タイプだとすれば、佐藤健演じる日本版の鈴木亘は、一度目の人生で、それが好きな子であっても他人の人生に関与しようとせず、遠くから見守ることしかできなかった過去を、韓国版に比べると、まあまあわかりやすく引きずっているように見える。

亘がなぜ自分を抑えるようになったのかは、中盤のエピソードで徐々に明かされていく。第1話、エレベーターで駆け込んできた美紗とぶつかり、初めて言葉を交わす亘の第一声が、「そのスカーフ似合ってませんよ」。

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何それ、中学生か、というぶっきらぼうな態度が彼の不器用さを露呈している。行動した後悔よりも、行動しなかった後悔の方が深い。同じ過ちを繰り返したくないという強い思いから、説明は極小なのだが、次第に視線や沈黙、そして小さな所作で愛情を示すようになる。自分の行動がストーカーじみているのではと案じ、自己制御しながらも、結果、どこにでも駆けつけてしまう。

第4話、オフィスシーンで「部長には関係ありません!」と立ち去ろうとする美紗の腕を、バッグを反対の手にさっと持ち替えて掴み、優しく手に触れる。かく言う筆者も、「何、今の動き?」と静止して、巻き戻して、二度見した。この何気ない仕草がSNSで反響を呼び、目で語るさまざまなバージョンの亘のクリップがタイムラインを駆け回り始めた。

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小芝風花が演じる美紗も、同じく一度目の人生で、言えなかった、できなかった自分を引きずっている。怒りや復讐心は持ちつつも、いきなり別人になりきれないし、狡賢くリベンジを遂行する自分にも、後ろめたさを感じてしまう。ストーカーのごとくいつでも現れる部長を警戒もするし、「御曹司が自分に興味を持つわけがない」と思い込もうとする。

現代の弱さ、自信のなさを抱える二人は、キャラクターにリアリティと深みを生んでいる。自己犠牲によって一度死んでいるのに、それでも自己犠牲精神を消しきれない亘と美紗だからこそ、視聴者にも二人を最後まで見守りたいと思わせたのではないだろうか。

3

崖っぷちに追い込まれた悪役たちの物語がある

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日本版には、韓国版のラスボス的悪役、ジヒョクの元婚約者、ユラ(BoA)は君臨しない。けれど、物足りなさを感じないほど、麗奈と友也が徹頭徹尾、底意地の悪いセリフと表情で視聴者をイライラさせる天才として存在している。やることなすこと最悪なのだが、俳優たちの演技力と脚本の勝利か、人間らしいが故の悪が描かれていたように思う。

韓国版の親友チョン・スミン(ソン・ハユン)は、あっぱれなほどのマクチャン系悪女であったし、夫のパク・ミンファン(イ・イギョン)は歴代のスレギことクズ男の記録を塗り替えた存在として、お互いを殺し合うという顛末は痛快なものとして描かれていた。

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しかし日本版では、白石聖演じる麗奈が、ただの悪女では終わっていない。麗奈は麗奈なりの絶望と孤独を抱え、友也も友也なりのコンプレックスと承認欲求を抱え、有毒な関係ではあっても二人が美紗を歪んだかたちでも愛していたということは伝わってくる。どこか憎みきれない、カラッと笑い飛ばすことができないほどのキャラクターの湿度の高さと粘着性は、もしかしたら、状況が違ったら、自分もそうなっていたかもしれないと思わせてくれるものだった。

麗奈と友也が美紗と亘の身代わりになるという筋書きは変わらなくても、崖っぷちまで来る前に選択できたかもしれない未来を示すような微かな救いがエンディングにはあった。

4

連続で投下される和エッセンスにニヤける

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日本版は、グローカルの視点を感じるほど、和の要素が多い。エピソードを追いながら、韓国版との違いと、和推しの要素を面白おかしく探している自分に気づいたという人も多いのではないだろうか。

韓国版の主な舞台となるのは、ジヒョクの祖父が創始者である大手フードメーカーU&Kである。対して、日本版の美紗の勤務先は、父親が豆大福を好きだったという和菓子屋「鈴兎屋」から発祥したSUZUTOYAホールディングスだ。ジウォンと亡き父親、そして、ジヒョクをつなげる青い小さなハートが描かれた紙幣は、キャンディの包み紙で折った折り紙に。U&Kフードマーケティング部のワークショップとミールキットの企画が、日本の特産品シャインマスカット企画と農園でのシャインマスカット狩りに。大学時代のジウォンの拠り所でその後ジヒョクが保護した猫は、亀のカメ吉に。美紗と麗奈が親しくなるきっかけは、日本で90年代に流行っていたミサンガになっていたり、美紗の思い出の場所が和カフェ「まめかめ堂」など、和づくしである。

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そして、韓国版では誰もが知っているBTSのヒット曲「Dynamite」と「Spring Day」でジウォンとジヒョクが互いのタイムリープを知る展開が「え、制作陣にARMYいるの?」と話題になったが、全10話という構成の日本版は、第5話でウイスキーを飲みながら、亘が美紗に彼女と過ごしたい未来について、珍しく静かに語るシーンに転換。2015年にはまだ公開していない『君の名は。』や『ラ・ラ・ランド』といったヒット映画のタイトルが登場する。第三次タピオカミルクティーブーム、コロナ禍、大谷旋風までに触れるものの、美紗は寝落ちして全く聞いておらず、亘のタイムリープの秘密が自ら明かされるのは、ギリギリ第9話まで持ち越されることになった。

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「タイムリープ × 復讐」という韓国ドラマの王道設定を踏襲しながらも、曖昧さを生かし、絶対的な悪を描かず、人間の弱さや環境が生む歪みを丁寧にすくい上げ、物語に新たな余韻と奥行きを与えた日本版。何かと何かの間を意味する、イン・ビトウィーンのまなざしがヒットを支えていることが証明された今、これからの日韓コラボレーションもますます楽しみである。

Amazon Originalドラマ『私の夫と結婚して』
Prime Videoにて配信中(全10話)

小芝風花が魅せる復讐劇。日本版「私の夫と結婚して」を語る

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