
早くも今年のNo.1韓ドラとの呼び声が高い『未知のソウル』のジニョンにフィーチャー。今年はGOT7としても復活、アイドル俳優のなかでも高い演技力を誇り、泣きの演技に定評があることから新・涙の王子としても知られるジニョンの、これまでの出演作からベスト5を渥美志保さんが選出!
つい先日最終回を迎えた『未知のソウル』が評判上々
世の中が『イカゲーム』に踊らされてる6月末、いやもちろん『イカゲーム』のラストを見届けるのもいいですけど、時間がないし韓ドラばっかり何本も見てられないんだよ!という人に「今必見の1本」をおすすめするならこれしかない!という作品は、誰がなんと言おううと『未知のソウル』です!!
作品選びに定評のあるパク・ボヨンに、キム・ソニョン、チャン・ヨンナム、リュ・ギョンスという上手すぎる脇役たちが演じる「どん底まで傷ついた人たち」と「できることはなにもないと知りながら、できることを探す周囲の人たち」の繊細な物語なんですけど、その両方を体現するのが、実はジニョン演じる男性主人公なんですね!昨今の韓国で主役級大スターになるイケメンって「不幸すぎる主人公を、どんだけ美しく繊細に演じられるか」って大事な要素だと思うんですけど、ジニョンはその最右翼のひとり!何しろあの黒目がちな瞳にぶわーっと涙が溜まっていく、こぼれおちる!でも目が大きすぎなかなか落ちませーん!みたいな塩梅に、見てるこっちがドキドキうるうるハラハラ(ハラハラ?)つうんでしょうか!その上、いちいちブロマンスってのもイカしてます!今回はそんなブロマンス上手の新時代の涙の王子、ジニョンを愛でる5本をピックアップ!イケメン涙活をお楽しみください!
未知のソウル(2025)

一人二役のパク・ボヨン(『照明店の客人たち』)とジニョン共演のドラマは、恋愛モノと思っている人も多いと思いますが、人と人が寄り添いながら生きていくことを感動的に描いた作品。主人公はボヨン1(ミジ=未知)&ボヨン2(ミレ=未来)の双子の姉妹で、ジニョンは幼い頃にそのお向かいに越してきた幼馴染み。幼い頃に子供好きだった父親を失った双子ボヨンは、折り合いの悪い母親チャン・ヨンナム(『恋のゴールドメダル』)と祖母と4人ぐらし。でもそろそろ30歳になろうかという段階で、故郷の田舎町に残っているのはボヨン1のみです。

勉強より体を動かすのが得意で明るい愛されキャラのボヨン1は、入院中の祖母の介護を手伝いながら、農繁期の手伝いとか学校の用務員とかバイトで食いつないでいます。一方、家族の生活を支えているのはソウルで暮らすエリート会社員のボヨン2です。母親ヨンナムにとって、ボヨン1は頭痛の種で、ボヨン2は自慢の娘なんですが、実はこのボヨン2も、ある事情から会社で嫌がらせ的に窓際に追いやられています。同じくソウルでエリート弁護士として働くジニョンから「様子がヘンだった」と聞いて姉妹を訪ねたボヨン1は、ギリギリまで追い詰められながら家計を思って会社をやめられないボヨン2を案じ、入れ替わりを提案。そんなわけで「未知(ボヨン1の名前)のソウル」が始まるわけです。

さてドラマは現代の「入れ替わった2人のボヨン」と「高校時代のボヨン」を同時並行に描いていくわけですが、ここに深く関わってくるのがジニョンです。ジニョンは幼い頃に遭った交通事故で片耳の聴覚を失い、その時に負った大火傷の後遺症で激しい運動ができません。そんな彼の高校時代の心の支えが元気印のボヨン1。二人がお互いに好きあってるのは周囲にはバレバレですが、「常に見守る優しすぎジニョン」と「韓ドラ的察しの悪さのボヨン1」の組み合わせで、ボヨン1だけがその気持ちに気づいていないんですね。

そんな中、ボヨン1はボヨン2のフリしてジニョンと接するようになり、ジニョンは「なんか事情があるんだろうな…」て感じで、何も聞かずに大根役者の演技に付き合ってあげることに。あちゃこちゃするボヨンちゃんの可愛さと、それを愛しげに見守るジニョンという構図が、もうそれだけで可愛すぎるし幸せすぎ、なんですが!そのボヨン1が引き受けたボヨン2は会社中から後ろ指さされ、あからさまにいじめられ、絶対に無理な仕事押し付けられ……という具合でピンチが連続し、ここにジニョンが弁護士として絡んでゆきます!

と、ここまで言っといて何ですけど、私が思うにこのドラマの真のラブラインは、ジニョンと血の繋がらない母キム・ソニョンなんですよ!ジニョンは父親の再婚相手ソニョンが嫌いだったんだけど、再婚した途端に父親が事故死。わけです。ソニョンは親類の反対や心配を押し切って身体に大きな障害を抱えてしまったジニョンを息子として育てることにしたわけですが、ジニョンはそれを知っていて、でも彼の面倒を見てくれる人はソニョン以外におらず、反発と申し訳なさと感謝と遠慮が複雑に入り混じった思いをずーっと抱えて生きてきたわけです。だからジニョンは常に「自分は誰かの足手まといでしかない」という思考回路で、ボヨン1にも積極的にでていけない!いろんなことが丸く収まりかけ幸せになりそうな9話から、ジニョンが「かわいそう」へと急転直下していく10話、11話のソニョン、その泣かせっぷりは、『照明店の客人たち』のイ・ジュンヨンのレベルと言うか、「来年の百想の女優賞はヨム・ヘランでなく私がいただく!」という感じというか、とにかくすごいです!ソニョンの言葉で、ジニョンの大きな瞳にみるみるうちに涙が溜まってゆくさま、ぽってり唇がぷるぷる震えるさまを、ハンカチ片手にぜひぜひお楽しみください!
※Netflxにて配信中
ユミの細胞たち シーズン2(2022)

アラサーOLユミ=キム・ゴウン(『シスターズ』)の恋の彷徨を、インサイド・ヘッドのアニメな細胞たちの脳内会議とともに描く大ヒットシリーズ(って書いても見たことない人には「なんのこっちゃ」かと思いますが、韓国ドラマ史に残る傑作なので騙されたと思って見てください!)。大失恋で恋愛から遠ざかっていたゴウンと変人理系男子アン・ボヒョン(『軍検事ドーベルマン』)との恋と別れを描いたシーズン1、その第8話から登場した文学系しっとり男子ジニョンはゴウンの同僚で「大韓ククスの2大イケメン」の一人(もうひとりはSHINeeミノ!)。「え、もしかして私に興味が…?」と混乱したゴウンの細胞たちが「女子に変換すればいいんじゃね?」ってことで、めっちゃ可愛い女装も披露しているわけですが、案の定ゴウンのことが好きだったわけで、シーズン2では新たな恋人に!
これがもうなんつうか、配信当時も大評判だったんですけどまさに「理想の恋人」なんですね。びっくりするほどまっすぐ見つめながら、これっぽっちも照れずに正直な気持ちを口にするんだけども、紳士的で強引なところはひとつもなく、ゴウンが寒くなる前に上着をそっとかけ、ゴウンが気まずそうならば自分がそっと姿を消し、ゴウンのために車を買い、「ボイラーが壊れた」という電話で夜中に迎えに行き、ソファで寝落ちしたゴウンを起こさないように枕をそっと差し入れ、寝起きでも寝起き顔とは思えないキラキラぶりだし(演出)、でもいざという時にゴウンを支えられる大胸筋をキープするためのハードな筋トレも欠かしません!

あまりに甘やかしてくれるので「公主(お姫様のこと)病になる」というゴウンの台詞があるんですけど、いたれりつくせりのまさにお姫様扱いで、常にゴウンを一番に考えてくれちゃう完璧彼氏なんですよ!そして同時にジニョンがゴウンのことが大好きだっていうのもわかる!クリスマスのディナーをジニョンの家でやる、と決めたところのシーンで、ジニョンがこっそりと、でもめちゃくちゃ嬉しそうな笑顔とかマジで幸せの局地!ところが!このクリスマスが、二人の運命の分かれ目になってしまうのですーーー!!

このドラマ、恋愛モノのようでいて、実はアラサー女子が自分の人生を見つけ出すまでを描いた物語で、シーズン1とシーズン2の両方を通しで見るとそれがすごくよくわかります!作品は3人を通して「自分より相手を優先させる人生」をそれぞれの方向から描き、そのことがそれぞれに何を決断させるのか?ってことを描いておると渥美は感じました。まあそれはおいといても、ボヒョンとジニョンを比べながら「自分ならどっちを選ぶか?」とか「どっちのキスシーンが好きか?」とかを語り合う女子の飲み会が何度も楽しめること請け合いです!
※Prime Videoにて配信中。
悪魔判事(2021)

2年にわたる疫病の大流行を経て荒廃した架空のソウルで、金と権力で好き放題の一部の金持ち&権力者たちの肝いりで、国民投票型の公開裁判ショーがはじまることに。これを推し進める大富豪のスター判事チソン(『被告人』)の元に、最高裁判事アン・ネサン(『錐』)の教え子で元不良の新人判事のジニョンが送り込まれます。彼の使命は、厳罰主義の上に政財界と強いつながりがあるチソンが好き放題できないよう監視して報告すること。チソンは「2人死ぬ展開を防げるなら1人を殺す」とかいうし、いちいちマーケティングとかテレビ映りとか、んなことばっかりいうので、新人らしい正義感を持つジニョンは「法律家としてありえない」とか思い探り始めるわけですがーーなんと最初の裁判で、めちゃたかい視聴率と国民投票を逆手に取り、権力者をバッサリ死刑にしちゃうんですね。

「まあまあ、チソン判事には狙いがあるんでしょう」と余裕ぶっこいていた金持ち&権力者たちはあまりの想定外に腰抜かすわけですが、かと思えば感謝して泣きすがる原告のおばあちゃんの背中をトントンしながら「めんどくせえな」って感じであくびしたりする。過激なエンタテイメントに対する全国民の大喝采をパワーに変えて世の中を手玉に取るチソンは、正義か悪か、その狙いは何なのかーーそれをジニョンが探ってゆきます。

さてここまで読むと、ジニョンとチソンはさも対立しているかに思えるんですけど、第2話のラストで起きた謎の爆発事件をきっかけに二人の関係はちょっとずつ変わっていきます。チソンは、自分をかばって大怪我したジニョンを敵からのさらなる攻撃から守るため、自分の豪邸にジニョンを連れ帰り、二人の同居生活がはじまるんですね~。これって韓国のラブコメでよくあるパターンで、ヒロインは悪い男だと思いつつもなぜか気になるし、男はヒロインの無謀なまでの真っ直ぐさが気になってつい守ってしまうわけです。ええとつまりこのドラマはですね、初主演作『彼はサイコメトラー』でジニョンが確立した「ブロマンスにおける愛され弟キャラ」を更に発展させた、いうたら「ほぼヒロイン」です!
その証拠に、っていうのもヘンですが、例えばチソンは眠るジニョンの包帯を代えるために、服脱がそうとボタンを外したら、ジニョン起きて「な、何してるんですか?」みたいな場面とか、お金持ちチソンが自分のクローゼットで貧乏ジニョンをコーディネートして着替えさせようとしたら、(っていうか、出ていってくれないと着替えられません)みたいなやりとりとか、歯向かうジニョンをチソンが壁ドンとか、料理上手なジニョンの料理でバラバラだったチソンファミリー(姪、女性執事)が仲良くなっていくとか、今や女性ではなかなか描きにくくなった「韓国ラブコメの”女らしさ”の記号」みたいなことを、一手に引き受けてるんですね~。ジニョン=元ヤンキーという設定とか、見てるうちに完全に忘れる可愛さ!でもってチソンの方は、近づいたかな?と思うたびにジニョンを突き放し、その割には周囲の悪からジニョンを懸命に守っていたりなんかしちゃったりして!そしてチソンがジニョンを大事にする裏には、また別のブロマンスがあるのですーー!

『知ってるワイフ』とか『キルミー、ヒールミー』などで知られるチソンですが、昔からのディープな韓ドラファンにとっては「絶対ハズさない手堅い俳優」として知られる存在です。無理めな設定でもチソンがやると抜群の安定感でつい見ちゃう俳優なんですが、なかなかサイコパスなこのSFもそういう感じ。「いかにも近未来風景」としか思えない実在のロケ地、こんな建物あるんか!と思わせる撮り方で上手に見せてて、ロケ地ツアー心をそそる作品でもあります!
※Netflixm、U-NEXTで配信中。
花様年華 -人生が花になる瞬間- (2020)

財閥の娘婿ユ・ジテ(『ヴィジランテ』)は、金に汚い義父の罪をかぶって服役させられるなど、都合よく使われています。でもって出所そうそう任されたのは、グループ内のスーパーの不当解雇を巡る労働争議で、「分かりました!」と従いながら、内側では「いつか義父を引きずり下ろしたる…」と虎視眈々と機会を狙っています。一方、その不当解雇デモのおばちゃんたちをサポートしながらともに声を上げているのが、バツイチのシングルマザー、イ・ボヨン(『Mine マイン』)です。ある日、その息子が「クラスメイトに怪我をさせた」ってことで学校から呼び出し食らったボヨンは、被害生徒の親であるジテと会うわけですけど、この二人は実は大学時代に大恋愛をした相手だったのですーーってことで、物語は現在(2020年)と大学時代(1990年代)を行き来しながら描いてゆきます。

さてジニョンが演じるのは大学時代のジテを演じ、チョン・ソニ(『青春ウォルダム』)がボヨンの大学時代を演じています。ジニョンは学生運動に没頭している人なんですが、デモと警察の衝突に巻き込まれたソニをジニョンが助けたのをきっかけに出会い、ソニの猛アタックで付き合い始めるんですね。このジニョンがもうめちゃめちゃ可愛い!第1段階の押しまくるソニに対する、めちゃ塩対応しながらわかるかわかんないか程度に口の端で「ニコ」するジニョンのツンデレぶりもいいし、付き合いだしてからのラブラブぶりも90年代的つうんでしょうか、いちゃいちゃベタベタっていう感じじゃなくて、なんだかうっとり……っていうんでしょうか。

私のお気に入りはねえ(聞いてない)、ソニがジニョンにギターを習うところ!ソニが爪弾き、ジニョンがバックハグしながらコードを押さえる、みたいな場面なんですけど、これがいかにも!な感じにならないんですよ、というのはたぶん逆光だから!どの場面もふわ~っと色が飛んでる、フランス映画か岩井俊二かって感じのソフトフォーカスです!これがジニョンの儚い美しさにぴったりなんですね!ちなみにドラマでは珍しいジニョンがギターで歌う場面も結構あるし、ウトウトするジニョンに顔を寄せるソニ、急に目覚めたジニョンと超至近距離!みたいなドキドキの場面もてんこもり!そして何が切ないって、この二人の恋は実らないことが最初からわかってる!中盤はジニョンが涙を流す展開がめちゃ多いんですけど、ポロリ…って感じの涙が、これまたこの人の美しさを引き立てております!!
ドラマはままならぬ今を生きている大人の二人が、再会したことをきっかけに、この時代に残してきた思いや、忘れかけていた大事なものを取り戻してゆく、という展開で、これがまた素晴らしい。かつてジニョン時代に「負ける人の味方をしたい」と言っていたジテは、今は労働者を冷酷に切る財閥娘婿になっちゃっている、でもボヨンと会うことで生き方を見つめ直すわけです。もちろんジニョン☓ソニ時代にも、ジテ☓ボヨン時代にも二人の前に立ちはだかる人はいるんですが、最終的にはほとんどの人が「この人だって悪人ではないんだよな」と思える、美しくて気持ちの良いドラマになっています!ぜひ大人の部分も見てね!
※Netflixにて配信中