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【カンヌ国際映画祭2025】話題作から日本勢まで、現地の注目トピックス

映画祭もいよいよ終盤戦へ。パルムドールは誰の手に?

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award ceremony with individuals presenting an award and another group making heart shapes

フランス・カンヌで開催中の第78回カンヌ国際映画祭。今年はレッドカーペットの外側が騒がしく、社会情勢と結びついた話題が多い。映画祭に先立ち13日、フランスの名優ジェラール・ドパルデューが女性達への性的暴行で有罪判決を受けた。仏映画業界にはびこるハラスメント体質があらためて批判されているなか、映画祭は幕を開けた。

ネイキッドドレス禁止規定も波紋を呼んだ。数年前のヒール必須論争も記憶に新しいが、レッドカーペットのドレスコードがどこに向かうのか、8月末のベネチアはどう判断するのか気になるところだ。そして米国トランプ大統領が明らかにした映画関税政策に対し、ロバート・デ・ニーロにウェス・アンダーソンら大物映画人たちから批判が相次いでいる。

公式セレクションだけで3000本以上の映画が上映される華やかな祭典。開幕から現在まで映画祭を彩った話題をプレイバックしよう。

ロバート・デ・ニーロがトランプ大統領を痛烈批判

opening ceremony the 78th annual cannes film festival
Stephane Cardinale - Corbis//Getty Images

5月13日に開催されたオープニングナイトでは、名誉パルムドールを受賞した81歳のロバート・デ・ニーロが壇上に上がった。プレゼンターのレオナルド・ディカプリオを抱きしめて涙ぐんだ。

以前から痛烈にトランプ大統領批判を繰り広げてきたロバート・デ・ニーロ。LGBTQの画家の父を持ち、多様性や芸術へ託す思いはひと一倍強いはずだ。「芸術は多様性を内包し、真実を追求する。ファシストや独裁者にとっては脅威になる」と語り、トランプが自ら米国屈指の文化施設ケネディ・センターの理事長に就任したことや、米国外の映画に100%の関税をかける方針を明らかにしたことを痛烈に批判。「クリエイティビティに値段はつけられない。絶対に許されない。これは米国だけの問題じゃない」と語気を強めた。

オープニングには是枝裕和監督の姿も

78th cannes film festival opening ceremony
Anadolu//Getty Images

オープニングセレモニーのレッドカーペットにはカンヌ常連の是枝裕和監督の姿も。昨年はコンペティション部門の審査員を務めた。

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ジュリエット・ビノシュ、#MeTooの結果を語る

opening ceremony and "partir un jour" (leave one day) red carpet the 78th annual cannes film festival
JB Lacroix//Getty Images

オープニング日のカンヌ映画祭審査員記者会見では、審査委員長を務めるジュリエット・ビノシュが、性的暴行で有罪になったばかりの仏俳優ジェラール・ドパルデューへのコメントを求められた。過去、ドパルデューとハーヴ​​ェイ・ワインスタインは名誉ゲストとしてカンヌ国際映画祭に迎えられたことさえある。

元共演者の有罪判決について、ジュリエット・ビノシュは「彼はオーラを失った男。映画の主演俳優というのは私にとって王様のような存在ですが、神聖なのは撮影中、創作するときだけ。彼はもはやそうした存在ではありません」とコメント。「これは#MeToo運動の結果です。#MeTooは米国よりも遅れて到来し、今まさにここに重要な時期を迎えています」と言葉を重ねた。

序盤のコンペティション部門、話題作は『Sound of Falling』

sound of falling
© copyright Fabian Gamper / Studio Zentral

さて、気になるパルムドール候補について話を移そう。序盤に話題をさらったのが、ドイツのマーシャ・シリンスキー監督、長編2作目となる『Sound of Falling』。ドイツの辺鄙な農場を舞台に、何世代にも渡って隠されてきた秘密。数十年の時を超えて、トラウマによって結ばれた4人の女性たちが真実を解き明かしていくストーリーで構成されている。

『Variety』は本作を「驚くほど落ち着きがあり、野心的な長編第2作」、『Screen Daily』は「スリリングな野心作。シリンスキーは今年のダークホース候補」と称えた。

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『Nouvelle Vague(英題:New Wave)』

©jeanlouisfernandez
©JeanLouisFernandez

もうひとつ、リチャード・リンクレイター監督が全編フランス語で制作した『Nouvelle Vague(英題:New Wave)』も見逃せない。リチャード・リンクレイター監督は、『ファーストフード・ネイション』以来19年ぶりにカンヌのコンペティション部門にカムバックした。

最新作は、ジャン=リュック・ゴタール監督の『勝手にしやがれ』の20日間にわたる制作期間を、リチャード・リンクレイター監督がヌーヴェルヴァーグの技法と精神を取り入れてモノクロで描き出し、フランスのヌーヴェルヴァーグ時代とその巨匠たちに対する大きな愛とリスペクトが込められている。プレミア上映後、10分以上におよぶスタンディングオベーション。『Deadline』は「あなたはもう一度映画に恋をするだろう」と持ち上げた。

『ルノワール』

"renoir" photocall the 78th annual cannes film festival
Tristan Fewings//Getty Images

早川千絵監督の『ルノワール』も、パルムドールを狙うコンペティション部門で存在感を放っている。

早川監督といえば、2014年に短編作品『ナイアガラ』でカンヌ映画祭シネフォンダシオン部門に入選。長編1作目となる『PLAN 75』はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門への正式出品となり、カメラドール特別賞を受賞している。

働く母親と病気で入院中の父親の家庭に育ち、根深い孤独感のある11歳の主人公。オーディションでこの役をつかんだ主演俳優、鈴木唯は、12歳の瑞々しい演技にも注目が集まっている。もしも女優賞を受賞すればカンヌ史上最年少となる。

『Screen Daily』は「悲しみと罪悪感の感情的不和を鋭く切り込んだ」『Hollywood Reporter』は「少女の孤独を繊細かつ感動的に描いた作品」と紹介している。思慮深くパルムドール含め入賞に期待したい。

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アウト・オブ・コンペティション部門『Highest 2 Lowest』

78th cannes film festival highest 2 lowest photocall
Anadolu//Getty Images

コンペティション部門以外でも、魅力的な作品が上映されている。デンゼル・ワシントンとスパイク・リー監督が約20年ぶり5度目のタッグを組んだ『Highest 2 Lowest』がアウド・オブ・コンペティション部門で上映された。黒澤明監督のクライムスリラー『天国と地獄』(1963年)を、ニューヨークを舞台に再解釈した同作。デンゼル・ワシントンが名誉パルムドールをサプライズ受賞する一幕も。


78th cannes film festival highest 2 lowest screening
Anadolu//Getty Images

アーティストのみならず俳優としてもキャリアの幅を広げたエイサップ・ロッキー。妊娠中のパートナー、リアーナを伴いプレミア上映のレッドカーペットに登場し、幸せオーラ全開の仲睦まじい2ショットを披露した。


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『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』

mission: impossible the final reckoning photocall cannes film festival 2025
Mondadori Portfolio//Getty Images

14日カンヌに赤ワインカラーの服を着こなして3年ぶりにカンヌのフォトコールに登場したトム・クルーズ。最新作は15日にアウト・オブ・コンペティション部門でプレミア上映され、相変わらず神対応のファンサも話題に。翌日はロンドン、18日にはNYで開催されたUSプレミア会場へと相変わらず世界を飛び回っている。彼にとってインポッシブルな旅程などないのだろう。



「ある視点」部門『遠い山なみの光』

78th cannes film festival a pale view of hills photocall
Anadolu//Getty Images

2025年5月15日、『遠い山なみの光』フォトコールに登場した、作家カズオ・イシグロ氏(左)と石川慶監督(右)。石川監督の『ある男』(2022年)の大ファンというカズオ・イシグロが1982年に発表した長編第1作を映画化。移民のアイデンティティを持つカズオ・イシグロ自身がプロデューサーとして参加し、日本と英国で撮影された。


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78th cannes film festival a pale view of hills photocall
Anadolu//Getty Images

主演の広瀬すず。前回カンヌに来たのは10年前、16歳のときに是枝裕和監督作『海街diary』以来。

『Hollywood Reporter』は「広瀬すずと二階堂ふみの相性は、二人の演技を観る者を惹きつける」と作中の存在感を讃えている。




78th cannes film festival a pale view of hills photocall
Anadolu//Getty Images

英国と日本で撮影されたという本作。吉田羊は先に英国に入り語学を猛特訓したうえで、全編英語での撮影に挑戦したという。




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松下洸平

78th cannes film festival a pale view of hills photocall
Anadolu//Getty Images

広瀬すず演じるヒロインの夫、傷痍軍人の二郎役を演じた松下洸平もカンヌ入りし、レッドカーペットやフォトコールで華やかな微笑みを見せた。




ミッドナイト・スクリーニング部門『8番出口』

"exit 8" photocall the 78th annual cannes film festival
Pascal Le Segretain//Getty Images

5月19日のフォトコールに登場したミッドナイト・スクリーニング部門『8番出口』の面々。左から川村元気監督、小松菜奈、二宮和也、脚本家の平瀬謙太朗。

大ヒットゲームを原作とし、地下通路を舞台にした異色のサイコスリラー『8番出口』。地下鉄の通路ループから必死に脱出方法を探す男を、二宮和也が演じる。

「これは終わりのない煉獄」(『Screen Daily』)、「日本国外でもカルト的地位を獲得するだろう」(『France 24』)――さまざまなレビューが寄せられているなかで、二宮の演技が役柄に説得力をもたらしている、と分析するむきもある。8月29日(金)の国内公開も楽しみに待ちたい。

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"exit 8" photocall the 78th annual cannes film festival
JB Lacroix//Getty Images

初のカンヌ入りを果たした二宮和也。フレンチリビエラに似合うナチュラルなカラーリングの装いで颯爽と現れた。

"exit 8" photocall the 78th annual cannes film festival
JB Lacroix//Getty Images

ともに初カンヌとなった小松菜奈。日差しのまぶしいフォトコールでは、颯爽と「シャネル」のアイウェアをまとって登場した。

日本勢の写真がさらに届き次第、続報する。

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