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【釜山国際映画祭 2024】レカペやオープニングなど序盤の注目ポイントを総括!

10月2日〜11日に開催中の第29回釜山国際映画祭から、ライター渥美志保さんが現地の盛り上がりをレポート。

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screening the 29th busan international film festival
Woohae Cho//Getty Images

ついに始まった釜山国際映画祭。私が釜山に初めてきたのは第5回だったんですが、なんと今年は第29回なんですってよ。自分で書いててもびっくりなんですが、今年の釜山は色んな意味で「変わってきたなあ」という印象があります。そんな観点でまずはレッドカーペットから!

新時代の幕開けを感じさせるレッドカーペット

the 29th busan international film festival opening ceremony
Chung Sung-Jun//Getty Images

レッドカーペットの何が変わったって、配信のドラマ&映画のキャストがめちゃめちゃ多かったこと! かつて釜山と言えば「出演映画が出品作に選ばれなければ行けない場所」という感じだったんですが、コロナ以降の配信の躍進で配信作品の部門「ON SCREEN」が新設されたこと、さらに配信を通じて世界的スターになっていく若手が増えたこと、これまでは映画のみで活躍した大物俳優たちが配信作品に続々登場するようになったことなどの影響が、今年はめちゃ色濃い! これまで意外とはっきりしていた映画とドラマ、映画スターとドラマの俳優の境界線がなくなっちゃっている感じとでもいうんでしょうか。

the 29th busan international film festival opening ceremony
Chung Sung-Jun//Getty Images

そんな私の視点で見たレカペイベント。まず司会として入場のふたりは、アジアコンテンツアワード(アジアコンテンツアワード&グローバルOTTアワード2024)にて、「マスクガール」と「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」でそれぞれ俳優賞にノミネートされたアン・ジェホンとパク・ボヨン。








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日本人で注目すべきは?

outdoor greeting the 29th busan international film festival
Woohae Cho//Getty Images

日本人では、もちろん坂口健太郎。韓国で9月末にcoupang playで配信スタートした「愛のあとに来るもの」(日本では10月11日よりPrime Videoで配信)は、20代で別れた最愛の相手と30代での再会を、男女それぞれの視点で書いた作品なんだけども、釜山に持ってきた出演作品はNetflixで10月11日から配信予定の日本のドラマ、タイトルのイメージが「愛のあと~」と被り過ぎじゃないですかい? という「さよならの続き」。



busan international film festival
Woohae Cho//Getty Images

有村架純ちゃんが、死んだ恋人の心臓を移植した坂口くんと運命的な出会いをする――って、若い人は知らんかもしれないですけど韓国ドラマ「夏の香り」ですか? という作品。今が韓国での売り時! って感じで、映画祭ではめっちゃ取材もやってる坂口くん!









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これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
『地獄が呼んでいる』シーズン2 ティーザー予告編 - Netflix
『地獄が呼んでいる』シーズン2 ティーザー予告編 - Netflix thumnail
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そのNetflix Koreaの今年の激推しドラマは2本なんですけど、そのうちの1本、衝撃の宗教ホラー「地獄が呼んでいる」のシーズン2からは、ユ・アイン問題で主演に躍り出たキム・ソンチョル(「その年、私たちは」2021年)。あらあら、ソル・ギョング&キム・ヒエの顔合わせって、大統領暗殺未遂から始まるギラギラな政界権力闘争を描いた既配信のドラマ「旋風」ですか? それともド・ギョンス主演の韓国版『アポロ13』的な映画『ザ・ムーン』ですか? あれでもなんでチャン・ドンゴンいるの? 





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[보통의 가족] 메인 예고편
[보통의 가족] 메인 예고편 thumnail
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と思ったら、出品作は新作映画『普通の家族』。ディナー中のリッチな二組の夫婦が、監視カメラが捕らえた我が子たちの犯罪を見ることで、道徳的にぶっ壊れた内面を露呈していくお話です。













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the 29th busan international film festival opening ceremony
Woohae Cho//Getty Images

Disney+(ディズニープラス)も負けちゃいないよ! ってことで登場は、「最悪の悪」のチ・チャンウクを再び主演に迎えたクライム映画『江南 サイドB』(11月6日より配信)。「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」「生まれ変わってもよろしく」「誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる」のネトフリっ子=ハ・ユンギョンに、「ナルコの神」で映画賞総ナメにしたアクションおじさんチョ・ウジン。舞台挨拶ではここに「最悪の悪」でのチャンウクの下唇ひっぱるキスシーンが話題となったBIBIが加わり、大人数でめっちゃ華やかでした!



the 29th busan international film festival opening ceremony
Chung Sung-Jun//Getty Images

「秘密の森」のおもしろワルな脇キャラ「ドンジェ」を主演にしたスピンオフ「善人で悪党のドンジェ(適当に邦題つけてみた)」からは、イ・ジュニョク(『犯罪都市 PUNISHMENT』)とパク・ソンウン(「新しき世界」)。TVING作品なんで、日本ではNetflixかもしれないけども、LeminoかU-NEXTかもしれない。「イカゲーム」のイ・ジョンジェも来てたけど、なんだったんだろう?(って書くライターって!!) いやもう皆さん素晴らしくキラッキラだし、個人的には最高に楽しみなキャストの期待作ばっかりだったわけですが!それとは別の話として、「何がドラマで何が映画なのかわからん! 」という新たな時代が、本格的に始まっちゃったな! というレカペでした!

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オープニング作品『戦と乱』一行が盛り上げる

the 29th busan international film festival opening ceremony
Woohae Cho//Getty Images

さてそのレカペで最も大きい歓声を集めたのが、主演のカン・ドンウォンが率いるオープニング作品『戦と乱』の御一行様! 倭寇に揺れた李氏朝鮮時代の朝鮮半島を舞台に描いた作品です! 両班の息子パク・ジョンミン(「地獄が呼んでいる」)と、彼に仕える奴婢だったドンウォン、一緒に育ちながらともに友情を育んだ二人が、戦乱の時代の中で、やがて剣を交える運命になっていくお話です! 脚本に『お嬢さん』のパク・チャヌクが関わっていたりして、これはまさに映画祭のオープニングにふさわしい! なんて思えるようなゴージャスな感じなんですけども! これがなんとなんとなんと、今年のNetflixが推す最大の作品、Netflix映画なんですね! 奥さん、つまりどういうことかっつうと、劇場公開しないのよ!! 釜山映画祭が終わった翌日、10月11日から即配信! うーーーーーーむ!!!

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『戦と乱』ティーザー予告編 - Netflix
『戦と乱』ティーザー予告編 - Netflix thumnail
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いやもちろんカンヌ国際映画祭なんかでもNetfix作品は上映されてはいますけども、映画人も観客にも「基本的にストリーミング作品は映画じゃない」という考え方が根強い古式ゆかしい映画祭では、さすがにオープニング作品には選ぶことはありますまい! いやね、わたしも「配信の作品は映画じゃない」なんてことは全然思ってないんですけども、映画祭というのは、これまで50年くらいの定義としての「映画」を産業として振興するために編み出されたフェスなので、その定義の中には当然「映画館」も入ってるわけです。

映画館(他の一切の世界、一切のものが消え失せ、作品だけに集中できる暗闇がある場所)というのは、「映画」の定義にはなくてはならないものだし、映画館がなければ映画が目指す「面白さ」もまったくもって変わってきちゃうものなので、結構大変なことなんですよ!

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netflix
netflix

でも韓国エンタメの場合、「イカゲーム」とか「愛の不時着」とか配信作品によって世界にバーン! と認知されていった経緯があり、「映画館でかからない作品は映画じゃない! 」という映画原理主義者とはちょっとスタンスが違うんですね! どこの国でもそうだけども、そもそも「とにかく金になること」は韓国ではめっちゃ大事なことだし、それがないとエンタメは生きていけないんで! 文化は政治とも直結してまして、韓国の保守系の政権は補助金をがっつり半減とかしてくるので、もちろん大人の事情があると思います!

てことで釜山は「どんな作品も排除しない」という方針で「この作品を選んだのもただ作品が面白くて気に入ったから! 」ということらしいんですけども、作品が$%&’<@>’*+(自主規制)だったために、会見はやや紛糾したようです! 日本だと許してくれるけど、韓国はそういうの許さないから面白いし、だからエンタメが強いんだよな~!

イ・ソンギュンの追悼も

photocall the 76th annual cannes film festival
Pascal Le Segretain//Getty Images

今年の開会式で会場にいるすべての人たちの胸をぐっと締め付けた瞬間は、昨年末に亡くなった俳優イ・ソンギュンの追悼の場面だったと思います。古くからの韓国ドラマファンにとっては「コーヒープリンス1号店」の愛犬「モップちゃん」を可愛がるイカしたアーティストとして、また「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」の優しく寂しい「おじさん」として、韓国映画ファンには『最後まで行く』のチンケな悪徳警官として、もしくは『パラサイト 半地下の家族』のいけ好かない金持ち男として、そりゃもうたくさんの面白い作品や傑作を残した俳優として知られている存在で、その死には衝撃を受けた人も多かったと思います。私自身、あまりにショックを受けてしまって、しばらく彼の名前を口にすることがぜんぜんできなくなってしまったんですが、今回の映画祭でなんというか、本当に亡くなってしまったんだなあというのが、一定の距離感を持って受け入れられた感じです。

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[행복의 나라 Land of Happiness] 그날의 대립영상
[행복의 나라 Land of Happiness]  그날의 대립영상 thumnail
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今回の映画祭では、イ・ソンギュンに関係するイベントがふたつ用意されています。ひとつは功労賞の授与と開会式での追悼。開会式では彼の代表作である「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」のテーマ曲をフルコーラス使い、韓国でもつい最近公開された遺作にして最新作『幸せの国』から遡る形で、その出演作と名場面を編集した映像が流れました。

ちなみにドラマ「私の国」は、1979年に起きた韓国の大統領暗殺事件の後日談を描いた作品で、ソンギュンが演じたのは事件に関わった実行犯のひとりで、現役軍人だったためにすぐに処刑されてしまった実在の人物。人権弁護士チョ・ジョンソク(「賢い医師生活」)と戦ったその理不尽な裁判の模様を描いており、公開中の映画『ソウルの春』に続く作品です。

press conference
The Chosunilbo JNS//Getty Images

司会のパク・ボヨンが「本当に痛切な別れでした。彼の出演作ドラマ『私のおじさん』の最後の台詞のように、私達は彼が求めていた平穏を見つけたことを心から願います」というセリフで映像を締めくくったのも印象に残りました。映画『最後まで行く』で共演のチョ・ジヌンも、ドラマ「トリプル」で共演のソン・ジュンギもみーんな泣いていました。

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【公式】韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」名シーン①
【公式】韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」名シーン① thumnail
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映画祭会期中は「美しい人 イ・ソンギュン」という特集上映も。それこそ今はストリーミングの時代で、釜山にこなくても特集上映できちゃいますから、ぜひこの週末はイ・ソンギュンの名作を見ていただけたら! 特に「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」は、韓国ドラマ史に残る傑作中の傑作で、韓国では多くの人が「人生を変えたドラマ」として挙げる作品です! 『幸せの国』も、きっと日本のどこかの配給会社が買ってくれているはず!

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