「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」「恋はチーズ・イン・ザ・トラップ」から「シスターズ」まで、その出演ドラマの多くが破格のヒットを飛ばしている俳優キム・ゴウン。この春韓国で公開された主演最新映画『破墓/パミョ』は、観客動員1200万人をこえる大ヒットを記録し、大きな話題を呼んでいる。ある一族に次々と不幸をもたらす呪われた墓と、そこに隠された秘密を巡るそのホラー作品で、彼女が演じるのは凄腕の巫堂(ムーダン)。実は超自然的な世界を描くホラー作品が大好きという彼女、この作品のどんな部分に魅力を感じたのだろうか。また映画最大の見せ場であるど迫力の祈祷の場面は、どんなふうに生まれたのか。

世の中は目に見える現象だけが存在してるわけではない。この作品にも“何か”があります
これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
『破墓/パミョ』10.18(金)公開 | 予告編
『破墓/パミョ』10.18(金)公開 | 予告編 thumnail
Watch onWatch on YouTube

―この作品への出演を決めた理由を教えて下さい。

出演を決めた一番の理由はチャン・ジェヒョン監督です。監督の作品は初期から印象深く見ていたので。初期の短編『12番目の助祭』の長編化されると聞いた時は、観客として本当に嬉しかったんですが、同時に「面白い作品になるのかな」と心配もしていたんです。でも出来上がった作品(『プリースト 悪魔を葬る者』)は、そんな心配はぜんぜん無用の素晴らしい作品だったので、さらに監督への期待が高まりました。『サバハ』という作品も、オカルトホラーなのに繊細な感性が感じられる、監督ならではのすごくいい映画でした。実はその作品に出演したパク・ジョンミンさんが、私が『破墓/パミョ』への出演を検討中だとは知らずに、監督のことをすごく褒めていたんです。「人間として素晴らしい人だし、現場でもすごくいい仕事をされる」って。それを聞いたうえで脚本を読み、作品も面白くていい映画だなと感じたので、参加することにしました。

image
© 2024 SHOWBOX AND PINETOWN PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED.

―超自然的な世界を描いたスリラー作品への出演は初だと思いますが、ご自身はそういう世界を信じる方ですか?観客としてそうした作品を楽しむこともありますか?

私個人はオカルトスリラーというジャンルは大好きで、小さい頃から見ていましたし、今も可能な限り見ています。大好きな作品としてパッと思い付くのは、韓国の『1942奇談』という作品で、すごく記憶に残っていますね。不思議な現象についても信じる方です。世の中は目に見える現象だけが存在してるわけではないと思っていますし。私が何か不思議な経験をしたことがあるわけではないんですが、目に見えないものがないと言い切ることはできないと思います。

image
© 2024 SHOWBOX AND PINETOWN PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED.

―今回のファリム役ではどんな役作りをしましたか?

ファリムは「巫堂」という自分の職業への取り組み方が徹底した人物です。年齢は若いけれど、巫俗をやっているシャーマンとしてプロフェッショナルな人間だと思いました。ですので、本当に細かい動き、ジェスチャーのようなものが中途半端であっては絶対にいけないという思いが、本当に脅迫観念のように強くありました。例えば「クッ」と呼ばれるテサルお祓いのシーンでは、大きなパフォーマンスそれ自体も大事なんですが、人物のオーラを作り上げるのは途中途中で出てくる細かな動きの積み重ねだと思うんですね。ですから、そういう細かい動きに気を使い、自分が立ち居振る舞いが本当にきちんとできているのか、現場にシャーマンの方がいらっしゃるときはその場で、そうでないときは映像つきのネット電話で繋いでもらったりして、チェックしながらお芝居をしました。

image
© 2024 SHOWBOX AND PINETOWN PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED.

―役作りのためにご覧になった実際の祈祷で感じたこと、役に取り入れたことなどがあれば教えてください。

祈祷に入る前、祈祷に入った後の細かな動きを観察させてもらうために、今回はじめて祈祷を見せていただきました。いろんなポイントーー例えば、首をふっと振り払ったり、あるいは肩を揺らしたり、またはずっと口笛を吹いたりーーをチェックして様々なシーンに取り入れました。どんな感想を持ったかといえば、本当に信じられないものを見たという感じでしょうか。実際の祈祷は本当に長時間行われるもので、基本的に4~5時間かかるそうなんです。シャーマンはその時間に自分の持てるエネルギーのすべてを注ぎ込むわけです。私が教えていただいたシャーマンの方は70歳ぐらいのご高齢の方なんですが、祈祷をしている4、5時間の間、もうずっと、ぴょんぴょん、跳ね続けているんです。すごいなと思いました。だって実際に自分はワンテイクの中で1~2分ぐらい跳ねていただけで息が上がってしまうくらい、本当にきつかったんです。目に見えない何かがある、それはもう間違いないなという風に感じました。

テサルお祓いをご自身で見てどんな感想を持ちましたか?自分でないように見えたりはしませんでしたか?

自分の演技を見ると、「ちょっとここ残念だったな」っていうところが見えてしまうんですね。 「もう少し、ここはこうした方が良かったんじゃないかな、ああした方が良かったんじゃないかな」って細かい粗がどうしても目に入ってしまいます。周囲のみなさんからは、「かなりよかった、すごかった」と言っていただいたんですが、ちょっとだけ恥ずかしかったです。「体力的にも大変だったでしょ、お疲れ様」なんてことも言われましたね。

 
© 2024 SHOWBOX AND PINETOWN PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED.
先日作品プロモーションで初来日。
撮影現場で心がけているのは笑顔でいること。どんな難しい役でも考え込まずに笑顔を大切にしています

―女優業10周年のファンミーティングでは過去の共演者の方が次々と登場し、周囲に愛されてる方だなと感じました。現場でなにか心がけてることなどはありますか?

お芝居以外のところで現場で心がけているのは、どんなにシリアスで深刻なジャンルの映画やドラマでも、笑顔で楽しく撮影に臨むことで、それが一番大事、最優先だと思ってます。全員がその状態でいられたら、お仕事でもみんなのベストが出せると思うんですね。俳優もそうですし、スタッフもそうだと思います。私はそういう雰囲気が好きな、楽しく笑顔で働きたいなと考えている人間です。

今回の作品も、笑顔があふれる現場で撮影していました。俳優ごとに異なると思いますが、私の場合は、大変な場面を撮影する前はエネルギーを温存し、いざ撮影というタイミングで持てるすべてを出し切る方です。そういうやり方が私にはより合っている気がします。カメラの前に立つ前まではリラックスしていたい方なんです。だから撮影前はあまり深く考えず笑顔で過ごし、カメラの前に立つと集中する。そのほうがより高い集中力が保てる気がします。

image
© BH Entertainment. All rights reserved

―次回作のドラマ「自白の対価」でも、本作同様に謎めいた「魔女」と呼ばれる女性を演じるそうですが、そうした役を演じる楽しさはどんなところにありますか?

私自身は「どんな役割でも構わない、いろんな役を演じてみたい」と考える方で、「こういう役がやりたい」「この役だけは絶対にやりたい」というようなものはないんです。例えば『破墓/パミョ』のすぐ後に撮ったちょっと長いドラマでは、本当に普通の日常的な人物を演じていますし、『自白の代価』も新しい役柄に挑戦できるチャンスがいただけたことがとても嬉しかったです。

俳優としても、個人的にも、これといった目標は持っていません。ただあるのは、絶えず作品に関わっていたいという思いです。いつだったか、ちょっと冗談めかして「多作な俳優になりたい、いろんな作品に出演したい」と話したことがあるんですが、それは1度にいろんな作品に出演したいという意味ではなく、絶えず何かしらの作品に関わっていたいなと。長く休みを取ることなく絶えず演じ続けたい、それが究極的な私の願いです。

 
Harold Feng//Getty Images
今年のトロント映画祭にて。

―国際的に活躍したいというような思いはありますか?

それは自分が目指したとしても実現する夢ではないですよね。そういう形の夢を持たない、というんでしょうか。ひとつひとつの仕事や作品に出演して関わっていくうちに、自然とそうなることはあると思うんです。例えば今回の『破墓/パミョ』もこうして日本で上映できることになったし、作品がそうやって注目を浴びることで、その後がまたつながっていくものじゃないかなと思っています。


キム・ゴウン/1991年7月2日生まれ。『ウンギョ 青い蜜』(12・未)で女優デビュー、「恋はチーズ・イン・ザ・トラップ」(16)で百想芸術大賞の新人女優賞を受賞し、「トッケビ ~君がくれた愛しい日々~」(16~17)で社会現象を巻き起こした。その他の出演作は、『その怪物』(14)、『コインロッカーの女』(15)、「ザ・キング:永遠の君主」(20)、「ユミの細胞たち」(21~22)、「シスターズ」(22)など。


『破墓/パミョ』

監督・脚本:チャン・ジェヒョン
出演:チェ・ミンシク キム・ゴウン ユ・ヘジン イ・ドヒョン ほか
2024年10月18日(金)より公開

作品公式サイトを見る