年齢を重ねるごとに幸せになる人が実践している4つのこと
人生はむしろ後半でより輝きを増す、それを実感できるように今からスタート。

年齢を重ねるほど幸せになれるというのは究極の希望的観測ではなく、科学的に裏付けられた事実だ。この自然な変化をさらに増幅させ、人生の後半をより豊かにより幸せに生きるためにはどうしたらよいだろうか。仕事への向き合い方や自分自身との対話など、今から心がけたい4つのことを専門家が解説。
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年を取ったら終わり、ではない

年を取ることは不当な評価を受けている。若さに執着する我々の文化では、現役世代を引退することは終わりの始まりのように感じられるかもしれない。しかし、一貫して科学が示しているのは真実はその逆であるということだ。
ダートマス大学の経済学者デビッド・ブランチフラワー博士は、145カ国の何十万人もの人々の幸福に関するデータを定量化。教育、結婚、または雇用状況に関係なく、ほとんどの人が若い成人のときに高いレベルの幸福を経験するが、40代後半で幸福度は最低レベルとなり、その後、幸福度は再び徐々に増加するという研究結果を2021年に発表した。
年齢を重ねると幸せになる理由

60代のベテランが18歳の若者と同じくらい幸せであるという、このU字型の幸福曲線をどう説明すればいいのだろうか。一つは、社会的に成熟することによる性格のプラスの変化が、この幸福度の上昇に寄与している可能性だ。性格特性の研究によると我々は時が経つにつれてより感情的に安定し、誠実で、協調的になる傾向がある。また、71歳のブランチフラワー博士は、私たちが50歳を過ぎて幸せになっていく傾向があるのは、自分が大統領や次のアレサ・フランクリンにはなれないことを受け入れ、より現実的になるからだと考える。
“何に幸せを感じるか”が変化する

年齢を重ねることで、幸せと感じる対象が変化することも幸福度の上昇に影響しているかもしれない。多くの人が老齢に至るにつれてダンス、水泳、またはブランチフラワーの場合のように孫たちと釣りをして夏の午後を過ごすなど、45歳のときよりも穏やかな娯楽を好むようになる。「人は年を取るにつれて、刺激的なことへの関心が減り、他の楽しみを見つけるようになります。生活パターンは変化します。32歳のときには幸せを感じなかった活動が、52歳のときには幸せを感じさせてくれるようになるのです」とブランチフラワー博士は述べる。
年を取ると幸せになることは我々のDNAに組み込まれている?

また、人生の後半でより幸福になることは、ある程度生まれつき備わっていることなのかもしれない。研究者らは、観察研究でチンパンジーやオランウータンも中年期を過ぎるとより陽気になることを発見している。
人間の場合、充実した人生の特徴とされる強い人間関係、寛大さ、信仰心を維持するのに役立つ神経が、年齢を重ねるにつれて強化される可能性があるという。昨年、『Frontiers in Behavioral Neuroscience』誌に発表された18歳から99歳の成人を対象とした研究では、ストレスや不安を軽減し、親切さや寛大さなどのポジティブな社会的行動に影響を与えるとされるホルモン、オキシトシンの放出は年齢を重ねるにつれて増加し、高齢の研究参加者では人生満足度の向上と正の相関関係にあることがわかった。
それではこの自然な変化をさらに増幅させるためには、日々の生活でどういったことを実践すれば良いのだろうか。専門家は以下の4つのことを心がけることを勧めている。
【人生の後半で幸せになるための方法・その1】 人生の新たな扉を開く

「一つの扉が閉まると、別の扉が開く。しかし、私たちはしばしば、閉まった扉を長い間、後悔しながら見つめるあまり、自分のために開かれたもう一つの扉に気づかない」というアレクサンダー・グラハム・ベルの名言がある。
ハーバード大学ケネディスクール教授のアーサー・C・ブルックス博士によると、中年期に人々が苦しむ理由の1つは、何年も努力して革新に成功してきたのに、ある時からキャリアの初期に絶賛されたような斬新なアイデアを思いつかなくなった自分に悩むからだという。「彼らがパニックに陥ってしまうのは、社会が若さと若者の能力に執着しており、自分は一度きりしか挑戦できないと考えてしまうからです」
人生の後半で開花する才能、結晶性知能

心理学者たちは、人生の異なる段階で開花する2種類の知能があるとしている。1つ目は流動性知能で、新しい情報を獲得し、それをすばやく処理・加工・操作する知能で、若者が革新を起こし、新しい問題を解決するのに役立ち、通常30代後半でピークを迎える。そして2つ目は結晶性知能で、経験や学習から獲得される知能で、高齢者が過去に習得した知識を使用してパターンを特定し、複雑なアイデアやシステムの複雑さについて他の人に教育できるようにするものだ。
流動性知能が衰えたらキャリアが終わってしまうと考える人は、パフォーマンスや健康を損なうような行動に走る可能性があるため、この2つの知能の違いについて理解することは重要だ。実際、対照臨床研究では、高齢者がネガティブな年齢ステレオタイプを提示され、それを自分自身に当てはめると、記憶テストの成績が悪くなり、歩行スピードが遅くなることさえあるという。

50代半ばまでシンクタンクの代表を務め、その後ハーバード大学で教鞭をとるブルックス博士によると、中年の絶望に陥らないための一つの方法は、知の結晶化という上昇する波に優雅に乗り、それが開く新たな扉に気づくことだという。
「仕事や職業を変える必要はありません。しかし、自分でやる成長曲線から人に教える成長曲線に移行することを検討してください。あなたは他の人が何かを成し遂げることを手伝うことが得意になっています。30歳で新興起業家であれば、60歳でベンチャーキャピタリストに。35歳でスター訴訟弁護士であれば、65歳でマネージングパートナーになれるでしょう」とブルックス博士。「どの職業にも、他の人が仕事をより上手にできるよう手助けするポジションがあり、それは本当にやりがいがあるものです」
【人生の後半で幸せになるための方法・その2】ミレニアル世代やZ世代の働き方を真似する

「今の子どもは激務の価値を知らない!」これは、年上の大人たちが若者についてつぶやく言葉であり、あなた自身もそうつぶやいたことがあるかもしれない。
しかし、『The Search』の著者ブルース・フェイラーが言うように、その「私の庭から出て行け」という態度は、ミレニアル世代とZ世代が年上の世代に与えてくれた素晴らしい贈り物の1つを理解していないも同然だ。現在の40代、50代、60代の多くの人は、キャリアの初期にいわゆる「すべき訓練」を受けているという。「こうするべき。この道を進むべき。会社に魂を売るべき。 両親の言う通りにするべき。などです」と58歳のフェイラーは語る。
キャリアは登るのではなく、掘り下げる

Z世代とミレニアル世代は、雇用主がより流動的なスケジュールを提供し、業界や地域社会への積極的な貢献を優先するよう、先頭に立って働きかけ、自分の価値観にもっと合う仕事を見つけるために頻繁に転職することを当たり前のようにやってきた。フェイラーは「私たちは、周りの若い人たちからもっと頻繁に変化を受け入れることを学べて幸運です。これは非常に前向きなことです」と語る。
まずはZ世代やミレニアル世代に倣って自分の情熱に従うことが大切だ。フェイラーによると彼自身や、彼が『The Search』でインタビューした、仕事に満足しているベビーブーマー世代やジェネレーションX世代の多くは「(キャリアを)登るのではなく、深く掘り下げる」ことから最も充足感を得ていると言う。「自分自身に問いかけ、自分の人生の中で宝探しをします。自分が伝えようとしてきた物語は何なのか? 自分が解決しようとしてきた問題は何なのか? 自分が押しのけてきた幸福の源は何なのか?」
兼業も1つの選択肢

『Stage (Not Age)』の著者スーザン・ウィルナー・ゴールデンはある年齢以上のプロフェッショナルにとってのもうひとつの道は、複数の異なる分野で部分的に働く、いわゆるポートフォリオキャリアだと言う。多様なキャリアは、子どもや病気の親の世話で仕事に就いたり、辞めたりを繰り返している人が、習得したさまざまなスキルを活用できるようにするだけでなく、1つの職が消えてしまう(またはAIに取って代わられる)場合のリスクを最小限に抑える。また、高齢者が自分の中核的な価値観と一致するプロジェクトを選択する自由も提供してくれるだろう。
【人生の後半で幸せになるための方法・その3】学びを再開する

人生の後半になると幸せを感じる大きな理由の1つに自由に使える時間が増える、というのがある。これは子育ての落ち着いた夫婦や仕事を辞めた人が強く実感することだろう。 しかし、だからといって毎日ゴルフに興じるのは最適とは言えない。高齢者がその自由時間の一部を新しいことの学習に費やすことは、今後何年も鋭敏で自立した状態を保つのに非常に役立つ。
カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学准教授であるレイチェル・ウー博士は、生涯にわたる認知的敏捷性を研究しており、最も幸せで健康な高齢者は毎日決まったお気に入りのレジャー活動だけをしているのではなく、一時的に楽しくなくフラストレーションを感じることであっても、新しいことを学ぶことに時間を費やし、新しいスキルを習得することにオープンであると報告している。

彼女が58歳から86歳までの成人にスペイン語、デジタルフォト、絵画などの科目のクラスを同時に3つ受講させたところ、記憶力と注意力のテストで認知スコアが大幅に向上し、30歳若い成人と同等の成績を収めたという。そして驚くべきことに、彼らの成績はさらに向上し、ウー博士らが1年後に追跡テストを実施したところ、彼らの認知スコアは学部生と同等程度まで伸びていた。
「多くの人は、自分はもう70歳だし、70歳になるとこういうことが起こる、脳の働きが鈍り始める、と考えます」とウー博士。しかし、彼女が研究で発見したのは、年長の成人が自らが考案したようなカリキュラムを通じて再び学習を始めると、注意力や作業記憶(例えば、数字を順番に思い出す)を測定するテストでの認知能力が最終的には若い成人のそれに近づき始め、彼らは何年も感じていなかったほど学習に熱中し、学習能力についても実感するようになったという。
「自分の人生をコントロールすることには多くの利点がありますが、少しだけそのコントロールを失うことにも利点があります。そうすれば、世界をもっと探索して楽しむことができるからです」とウー博士は語る。
【人生の後半で幸せになるための方法・その4】 感謝の気持ちを持つ

マギル大学心理学・神経科学名誉教授のダニエル・レヴィティン博士によると、感謝の気持ちは「どの年齢でも」幸福感を高める効果があるという。「自分が持っているものに感謝の気持ちを持つようにしましょう。これはやる気を起こさせ、脳の化学物質をよりポジティブな感情に向けさせ、脳の快楽回路に潤滑油を注ぎます」と、レヴィティン博士は『Successful Aging』の中で書いている。
毎朝飲むお茶の味や窓の外に見える小鳥のような些細なことに感謝することで、気分が高揚することもあるし、あるいは、感謝の気持ちによって、つらい挫折を成長の原動力に変えることもできる。
困難の中にも変革の可能性を見つける

100年以上生きているホリスティック医学の先駆者である医学博士グラディス・マクギャレーは、その生き証人だ。
マクギャレーは子供の頃は診断されていない失読症のためにひどく苦しみ、69歳のときには46年間連れ添った夫が別の女性のもとへ去っていくという不意打ちを経験した。それでも、彼女の新著『The Well-Lived Life』にあるように、あらゆる困難の中にも変革の可能性を見つけることは、彼女と同年代の人(そしてずっと若い人)が超越的な幸福を体験するのに大いに役立つ可能性があるという。

離婚後のある夜、仕事を終えて高速道路を走って家に帰る途中、マクギャレーは10分近く怒りに震えていた。「あれほど傷つき、屈辱を感じたことはありませんでした」。しかし彼女はふと、「自分には想像もしなかった未来がやってくる」ことに気付き愕然とした。それはマクギャレーにとって贈り物だった。
「行き詰まったら、行き詰まったままでいることも、光明や愛など自分が欲しいものを探し始めることも自分で選べます」とマクギャレー。「夢や祈り、思考の中に、助けを求める方法は常にあります。どうやって抜け出すか、魂のレベルで自分がこの地球に生まれてきた目的について考え続ければ、物事は動きます。行き詰まったままではいられません」
