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“エシカルジュエリー”ブランド「HASUNA」社長、白木夏子さんのデスクをチェック!

CULTURE INTERVIEW

Headshot of ELLEBy ELLE
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金やカラーストーン、ダイアモンドの素材から、製造過程に至るまで児童労働や不正搾取を介在させない……。新時代のキーワードとして欠かせない「倫理的」を意味する“エシカル”を、ハイジュエリーに持ち込んだ気鋭のブランド「HASUNA(ハスナ)」の社長、白木夏子さんの愛用デスクをチェック! 話を聞くと、昨年参加したという世界中の選ばれたリーダーしか参加が許されない世界経済フォーラム、「ダボス会議」に参加した際の話も出てきて……。

●お金を誰が握っているのか

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―「HASUNA」を起業したのはなぜですか?

ずっと絵が好きで、一生絵を描いて行きたかった。でも、高校で断念してしまいました。そのまま短大で英語を勉強し、英国のロンドン大学に入学、国際開発を学びました。在学中にボランティア活動などでインドを巡った際、現地の鉱山労働者が貧困にあえぐ中で働いている姿に衝撃を受けました。「なんて環境で働いているんだろう。それに比べて私は絵を描いたり、趣味で服を作ったりしているだけ……」と。そこで、この鉱山労働の環境をなんとか改善しなければと強く思いました。

まず貧困問題を解決するには、国連組織で働くのがいいと思い、インターンとしてどこかに入れないか片っ端から応募がありそうなところにコンタクトを取りました。でも、空きはわずか。ようやく、ベトナムで見つかりすぐに働き始めました。インターンでは沢山の素敵な出会いや仕事へのやりがいもありましたが、それと同時に「援助だけで貧困問題は解決するのだろうか?」という疑問も湧いてきました。私がインドで見てきた鉱山労働者たちを搾取していたのは企業であって、ビジネスのあり方を変えてゆことが必要なのだと思い、日本に戻って就職をしました。就職する際にまずお金の流れを知りたいと思ったので、投資ファンド事業会社を選びました。でも私、数字が苦手で(笑)。私が就職した2006年当時、日本は不動産投資が好調だったこともあって、海外の投資家が桁違いの価格で土地に投資してきていました。会社がどのように成り立っているのかや、大きなお金を誰が握っていてどのように流れていくのかなどを知ることができたので、今の財産になっています。


>>バイタリティと努力の先に必要だった“理解”。次のページへ

エンゲージリング、マリッジリングをオーダーに来たお客さんと相談し、デザインを書いていく場所でもあるお店の机が第一のデスク。希望を絵にしていくそのデザイン力は、ひとりっ子だったせいでひとりで絵を描くことが幼い頃から好きだったこと、両親ともに服飾関係で働いていたことに拠るそう。

Photo : Kaoru Aoki

●最初に大切だったのは、理念への賛同

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それでも、起業するときは、素材の調達、理念に賛同してくれる職人の確保など、貯めたはずのお金も予想以上にすぐ底をついてしまい、増資のための資本金を集めなければいけませんでした。

―職人さんにまで理念への賛同が必要だったのはなぜですか?

 
「HASUNA」で取り扱う金にはフェアトレードで仕入れたものを取り扱っています。しかし、職人さんからしてみれば、私たちの(エシカル)なルートで確保したものも、そうでないものも同じ金です。例えば18金チェーンの製造の過程で、同じものだったら既に(すぐ使えるように)日本で手に入れた既成のチェーンを使ったほうが楽です。エシカルなルートで手に入れたもののほうが、手間も時間もかかり加工が難しい。そんなとき、理念を理解してくれる職人さんでなければ作れないのです。

今、南青山に本店がありますが、ブランド立ち上げ当初はオーダージュエリー専門だったので、知り合いから少しずつ発注を受けて、デザイン打ち合わせには素材見本とスケッチブックをごっそり抱えて、待ち合わせ場所のカフェに行くような形でした。でも、カフェで石やら金属やらをずらっとテーブルに並べて、何か売っていたら確実に怪しい人ですよね(笑)。そういうこともあって、やはりひとつスペースは確保しておいた方がいいと思って物件を探していたところ、ちょうど良い空き物件がたまたま南青山にあったので入りました。

今は、既製のジュエリーコレクションも扱っていますが、最初は本当に上がってきたものを見て「何、コレ!?」と声を上げてしまうようなものでした。それを、郵送や電話会議で、少しずつ少しずつクオリティを上げるようにしていきました。男性が鉱山労働者として働いている場所では、夫を事故で亡くしたものの、宗教的文化的な状況もあって、女性が自由に働けず、でも一家は食べさせていかねばならないというような、厳しい環境にある人たちがたくさんいます。そういった女性たちの職業訓練や自立支援としても役に立つと思っています。


>>自宅に構えた驚きの“社長のデスク”を次のページで公開!

オーダージュエリーだけでなく、プレタポルテもシーズンごとに発表。今回はパキスタンクオーツを使用した、シックなコレクションが魅力。

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●旦那さんの幼少時の机が今のデスク

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自宅リビングにあるこぢんまりとしてデスク。これが社長デスクかと訝しがって「もしかして、ヴィンテージの高級品?」と聞いてみると……。 

ヴィンテージといえばヴィンテージですが……。夫の実家にあった年代物なんです。ソファもヴィンテージ風のものを選びました。スピーカーも主人のものです。新しいものよりも、どちらかというと使い込んだ、味のあるもののほうが好きです。

―本当にこれがデスク? すごいですね。ご自宅での作業もあるようですが、ここではどんなお仕事を?

書類作業もPC作業も、デザイン作業もしますが、小さいですし同時にはしません。デザインをするときはそれだけに集中します。
 

>>「これからの世界を創る」リーダー達が集まった、世界経済フォーラムの体験談は次のページへ。

数十年前の小学校の勉強机のようなデスクが、白木さんのもうひとつの“社長デスク”。リビングの一角にあり、すぐそばにはダイニングテーブルが。ホッとする雰囲気。素材と向き合ってデザインを考えることが多いのだそう。

Photo : Kaoru Aoki

●好きなことをお金が回る仕組みにする

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―昨年、日本人の若者としては異例の形でダボス会議に招かれたようですが、現地はいかがでしたか?

ダボス会議では世界中の経営者や政治家、著名人が総勢2500名ほど集まっていて、日本からだと緒方貞子さんや大臣クラスの方々、稲森和夫氏にもお会いすることができました。また、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏やビル・ゲイツ氏など、この世界で起きていることがぎゅっと凝縮されたような時間を過ごすことができました。いろいろな会議が開かれていて、4日間で、プライベートなものまで含めると会議は全部で4~500はある。そこで、商談がなされていたりする一方で、NGOなどの人たちがファンドレイジングするために、(資金集めのための)活動をしていたり……。

―富の再分配のようなことがされているわけですね。

そういう面が出てきたのは最近のようです。昔はNPOやNGOが参加することなどはなかったようですが、近年は社会起業家や非営利団体が参加して、富を持っている人の中から資金を提供してくれる人を見つけ出したりしている。そもそもは、単なる経済会議。私たち2~30代が行くような場所ではなかったんです。それこそ、大きな企業の会長だったり、社長だったり、つまり50、60代から上の人が行く場所。でも、(ダボス会議もそのひとつである)世界経済フォーラム創設者兼会長のクラス・シュワブ氏が、「この社会は大企業トップだけではなく、若い人たちも同じように社会を作っている。若者たちも呼ぶべきだ」と昨年から20代、30代の起業家たちを招き始めたんです。だから、私はたまたまラッキーで、お声がかかって行けるようになった。大企業の会長など、ダボス会議に行くには年間数千万の会費を払わなければいけないみたいです。しかも、数千万払っても、必ずしも参加権が得られるわけではない。

―白木さんのように好きなことを仕事にするためには、どうすれば?

究極的に自分の好きなものを見つけること。必ずしも起業をしなくてもいいと思います。ただ、それが起業という選択肢であれば、それをビジネスモデル化できるかどうかがとても重要。きちんとお金がまわる仕組みにできるかどうか。私は考えに考え抜いて、先輩や起業家に意見を聞いて周りました。理念はもちろん大事ですが、それできちんと食べていけるかを考えなければ仕事にならない。ビジネスモデルへの落とし込みですね。


>>やりたいことが形にならない。そんな悩みに白木さんがアドバイス。次のページへ。

手にしているのはミクロネシアの黒真珠。アメリカの支援により、生態系に配慮した養殖で作られたもの。離島での雇用創出に成功しつつあるそう。

Photo : Kaoru Aoki

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●社長は“器”

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―今、会社で働いている人で、「思い通りに仕事ができない」と悩んでいる人たちに、仕事を理想的に進めるために大切なことはなんでしょうか? アドバイスがあればお願いします。

う~ん……。難しいですけど、仕事って達成感の連続で続けられると思っていて、どうやって日々達成感を得られるかが大事。そのためには、自分のタスク管理が大切で、例えば基本的なことですが、一日やるべきことをリスト化しておいて、終わった事にそれを消していくということ。達成感が目に見えることを毎日続け、それだけだと続かないので、今日やること、1週間でやること、1ヶ月でやること、1年でやること……とタスクと目標を細かく持っておいて、それをどんどん達成していくというのが、私は楽しく工夫するコツだと思っています。

―会社は理念次第でどうにでも転ぶと思います。組織を抱えるひとつの企業の社長さんとして、持っている理念を教えてください。

今年、クレドをつくって「どう私たちは働くべきか」というのを言葉にして皆に理解してもらっています。「輝く人と、世界のために行動」するという信念のもと、1から10までどういう心で働いてほしいかということを書いています。「常にベストを尽くす」というような基本的なことも入っています。「HASUNA」らしいものとして、「強さと優しさ、潔さの宿る存在の美しさを持っている」というようなものもあります。「HASUNA」というブランドをひとりひとりが体現するものであってほしいので、自分自身も含めこうありたい、こうであってほしいと。ひとりひとりがブランドを体現するアンバサダーですから。販売員などは特にですよね。

代表がいて、その下に幹部がいて……みたいな、ツリー状(ピラミット状)ではなく、私たちの会社はあくまで“器型”なんです。一番上にお客さんがいて、各部門の人間がいて、一番下に私がいる。みんなが働きやすいように整えたりとか情報の整理をしたりすることが代表の役割なのかな、と。あくまでも、代表はみんなが働きやすいようにすること。「ブランドをこうしたい」という思いが私にあって、でもそれを実現していく現場はひとりひとりが担っていて、ひとりひとりが体現しやすいように配慮していくことだと思っています。よく「会社は社長の器以上に大きくならない」と言われます。私の器が大きくなるように、日々成長していかなくてはと思います。

―今後のビジョンをお聞かせください。

一流のジュエリーブランドになりたいと思っていて、それを目指しています。まだ規模はすごく小さいんですけれど、まだ3店舗しかないですし。ものづくりに関しても、もっともっと作り出して行きたいと思っています。こうやって、探求しながら一流になり、グローバルに認められるものにしたい。そのためには、あくなき努力しかない。常に高みを目指して、ひとりひとりがやっていく。それしかないです。

―ハイクオリティにしていくことと、作り手・働き手にフェアな労働ができるようにすること、かつ利益を求めること。それぞれ拮抗してしまいそうに思えるのですが。実現は難しいのではないでしょうか?

基本的にものづくりって、それに関わる人へのリスペクトがないと、いいものは作れないし、最終的に売れないし、伸びていかないのではないでしょうか? ラグジュアリーブランドと言われるところは、やはり作り手への尊敬もありますし、使ってくれる人も大事にするし、できるだけエシカルにしていこうと努力しているところが多いですよね。私はそちらを目指していきたい。ラグジュアリーとは、ただ「高いから」「豪華だから」ではなく、やはり使った人の心の満足を追求するもの。「じゃあ、心の満足って?」と聞かれた時に、豪華なものを身につけて自己満足に浸るということもあるでしょうが、それを買って身につけたことで、モノの裏側にいる職人さんだったり、鉱山労働者の人など、地球の裏側にいる人に思いを馳せることによって得られる部分が大きいと思います。できるはずです。だから、それを追求していきたいし、続けていきたいです。

「壁の絵はウガンダ人の28歳の若いアーティストで、ずっと気に入ってコレクションしています。アフリカの空気が入っていますよね。独特の空気感があってすごくいい(白木さん)」

Photo : Kaoru Aoki

Grey,

白木 夏子 (しらき・なつこ)

HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー。1981年鹿児島生まれ、愛知育ち。2002年から英ロンドン大学キングスカレッジにて発展途上国の開発について学ぶ。卒業後は国連人口基金ベトナム・ハノイ事務所とアジア開発銀行研究所にてインターンを経験し、投資ファンド事業会社勤務を経て、2009年4月にHASUNA Co.,Ltd.を設立。人と社会、自然環境に配慮したエシカルジュエリーブランド事業を展開。

日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011キャリアクリエイト部門受賞。
2011年世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ日本の若手リーダー30人に選出。
2011年AERA「日本を立て直す100人」に選出。
2012年APEC(ロシア)日本代表団としてWomen and Economy会議に参加。
2013年世界経済フォーラム年次総会にGlobal Shaperとして出席

公式ホームページ:http://www.hasuna.co.jp/


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