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「優良な遺伝子」を自称? ブロンド美女シドニー・スウィーニーのゆくえ 【ピーチズのOM(F)G!】

広告が炎上。きれいごとを言わず我が道を行く彼女は、ハリウッドのNEXTシンボルになり得るか。

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los angeles, california august 03: sydney sweeney arrives at the los angeles special screening of americana at desert 5 spot on august 03, 2025 in los angeles, california. (photo by emma mcintyre/getty images)
Emma McIntyre//Getty Images

「アメリカン・イーグル(AE)」の炎上キャンペーンに関わり、人種差別や美の基準に関する議論を巻き起こしたシドニー・スウィーニー。トランプ大統領に絶賛され、MAGAのミューズへと祭り上げられている感もある彼女の今後はどうなる? セレブウォッチャーPeachesが分析!

「シドニー・スウィーニーは優良な遺伝子を持っている」

物議を醸す発端となったキャンペーンCMは複数制作されていたが、取り沙汰されたのは、デニムを身につけて寝そべったシドニーが「Genes are passed down from parents to offspring, often determining traits like hair color, personality and even eye color. My jeans are blue.(遺伝子は親から子へと受け継がれます。髪の色や性格、目の色も遺伝子によって決められるのです。私のジーンズは青いわ)」と語りかけるもの。「genes(遺伝)」と「jeans(ジーンズ)」を引っ掛けた親父ギャグ的なセリフ自体は大騒ぎするほどではなかったが、キャンペーンのキャッチコピーが「Sydney Sweeney has great genes(シドニー・スウィーニーは優良な遺伝子を持っている)」だったのが大問題なのだ。

人種差別的なのでは?

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Getty Images

ブロンド(実際はブルネットで、染めている)で青い目を持つ白人のシドニーの遺伝子は優れていると言わんばかりのコピーは、ナチスが主張したアーリア人こそが人類の頂点となる優生学や白人至上主義を想起させるとメディアやSNS上で活発な論議が交わされることになった。ちなみに優生学とは、品種改良によって人類は改良できるというナチスが広めたとんでも学問で、単なる人種差別的な思想だ。メディアはさらにシドニーが共和党員として登録されていたことを報道し、過去にインスタグラムに投稿した射撃場でのビデオ映像も掘り返された。役作りと書かれた映像では、シドニーが冷静沈着にグロッグを発射し、的を見事に打ち抜く姿が収められている。

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騒動を受けたAEはその後、アフリカ系のモデルが自社のアパレルを着用した画像に「AEのジーンズは最高」というキャプションを付けて投稿。しかし、ダメージ・コントロールにはならなかったため、新たに「『シドニー・スウィーニーのジーンズは最高』キャンペーンは、今も昔もジーンズについてです。彼女のジーンズ、彼女の物語についてのCMです。私たちはこれからも、誰もがAEのジーンズを自信を持って、自分らしく着こなす姿を称え続けます。最高のジーンズは誰にでも似合うのです」というステートメントを投稿していた。

売上は一日で約589億円アップ

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Getty Images

AEの主力ブランドである「エアリー」はボディ・ポジティブが声高に叫ばれるよりも前にさまざまな体型のモデルを起用したことで有名だ。このインクルーシブな広告キャンペーンはかなりの成功を収め、企業イメージはアップ。もちろん売り上げも上昇していた。シドニーを起用した今回のキャンペーンはそれとは真逆と思えるが、なんと騒動を受けてAE株価は上昇。このCMが流された直後にAEの売上は、1日で4億ドル(約589億円)もアップしたのだという。


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MAGA思想を促進する動き

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Getty Images

このキャンペーンが承認されるまでに何度も会議が開かれたはずだし、広告代理店の担当者やコピーライター、AEの広告担当者の誰ひとりとして「遺伝子」と「ジーンズ」が生み出す人種差別的な含みを問題視しなかったとは考えられない。AEのCEOジェイ・L・ショッテンスタインはユダヤ系なので、アーリア人至上主義とは無縁のはずだ。しかしシドニーを起用したキャンペーンは、第2次トランプ政権発足以来、右傾化が進むアメリカのニューノーマルとなっているMAGA思想に擦り寄ろうとしているように見える。かつてリベラルは若者の反抗の象徴だったが、2025年はヤング・リパブリカン(若き共和党員)こそが反抗の象徴なのだ。そして、それはAEのターゲット層と重なっているわけで、このキャンペーンも狙い通りだったに違いない。

ニコニコなトランプ大統領

遺伝子についてだが、そもそもトランプ大統領自身が不法移民を「悪い遺伝子を持っている奴ら」と悪様に罵っているが、シドニーのように批判されたりはしていない。大統領はシドニーが共和党員とメディアから知らされた途端、「共和党員がこんなに多いことに驚くだろう。シドニー・スウィーニーが共和党員なら、彼女の広告は素晴らしいと思う」とニコニコ顔に。左派の評論家からディスられる一方、ウォーク(ポリティカル・コレクト/意識高い系の人々)に打撃を与えた人気俳優としてトランプ大統領やJ・D・ヴァンス副大統領をはじめとする共和党員に絶賛されるシドニーは、今やMAGAの新ミューズとなった感がある。トランプ礼賛主義のFOXニュース司会者ジェシー・ウォターズは一連の騒動に触れ、「これがどういう結果止まるかわかりますか? シドニーはバロン・トランプと結婚し、アメリカ史上最も偉大な政治王朝が誕生するのです」とまことしやかに主張。リベラルな左派にキャンセルされたとしても、多数派の右派に支持されていればOKなのか。

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"ウォーク"がマイナスに

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Getty Images

実際、アメリカのテレビ界ではウォークであることがマイナスになりつつあるのだ。トランプ大統領を長年批判しているスティーヴン・コルベアがホストを務める『ザ・レイト・ショー』は終了が決定した。CBSの親会社パラマウント・グローバルがスカイダンス・メディアと合併するためには政府の承認が必要で、トランプ大統領が憎きコルベアの番組を破滅に追いやったと見る向きも少なくない。『AND JUST LIKE THAT…/セックス・アンド・ザ・シティ新章』の終了もクィアや人種的に多様なキャラクターを多数登場させるなどウォークを意識した設定やストーリーラインが原因と噂されている。

ヘイトに屈しない姿勢

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Getty Images

とはいえシドニー自身は政治的な発言をしたことはない。2022年にインスタグラムにアップした母親の60歳の誕生日パーティの写真やビデオがMAGAっぽいと批判された際に、業界紙「ヴァラエティ」を通じて「多くの人から誤解されました」とコメントしたくらいだ。謝罪も迎合もせず、釈明も「SNSがハッキングされた」と言い訳もしない。ある意味、堂々と自分を貫くのがシドニーのスタイルだ。

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シドニーが入浴したバスタブの水を使って作られた「ドクタースクワッチ」の石鹸が完売した際もさまざまな批判の声があがったが、シドニーは「ファンがお風呂の湯を要求してきたら、無視するか、ドクタースクワッチの石鹸にするかのどちらかよ」と軽く流している。#MeToo以降のハリウッドにおけるシスターフッドを「嘘っぱち」と言い切る強さは、いっそ清々しい。

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今回の騒動について、原稿を書いている時点ではシドニーは何のコメントも出していない。騒動の後では『Euphoria /ユーフォリア』共演以来、親しくしているハンター・シェイファーやモード・アパトー、ジェイコブ・エロルディらと楽しそうにカラオケに興じている姿を目撃されている。トランスジェンダーであり、現政権下での「性は男性と女性の2つだけ」ポリシーの犠牲者(?)となり、男性用パスポートを発給されたハンターとはフェミニスト・アンセムとも言われる4 Non Blondesの「What's Up」を熱唱。友人の選び方や選曲を見る限り、シドニーがバリバリのMAGAとは思えない。

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曖昧模糊なスタンスでハリウッドのニュー・シンボルに?

the kelly clarkson show episode bp 179 pictured: sydney sweeney (photo by: weiss eubanks/nbcuniversal via getty images)
NBC//Getty Images

シドニーは、ポスト・ウォーク時代のハリウッドの象徴となるかもしれない。気候変動や政治、フェミニズムについて声高に語ることをせず、人気俳優としてさまざまなブランドの顔としてだけ存在する。ここ数年、セレブたちが政治的発言を繰り返してきたが、あまりにも頻繁すぎて「パフォーマンス」と受け止められることも少なくない。プライベートジェットを愛用する一方で気候変動を憂えるのも、リッチなライフスタイルを満喫しながら刑務所の環境改善を訴えるのも欺瞞にしか思えない。過剰なウォークに疲れたファンがシドニーの曖昧模糊とした存在感に惹かれるのも不思議ではないだろう。

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