女性エンジニアが委縮せずに働ける環境を作るべく、企業側のジェンダーダイバーシティに関する透明性を促す転職サービスを立ち上げ、IT業界のジェンダーギャップ解消に取り組む(「bgrass」代表取締役CEO兼CTO)咸 多栄さんにお話を聞いた。
まだまだ根深いIT業界のジェンダーギャップをテクノロジーの力で解消する
若手の活躍が目立つIT業界でも、まだまだ男女格差が大きいという。そんな社会状況を切り崩すべくサービスを立ち上げたのが「bgrass」の咸 多栄さん。運営する「WAKE Career」は女性エンジニアのための転職サービスだが、これを企業側が利用するにはジェンダーダイバーシティ診断を受け、結果を公表しなくてはならない。このサービスの狙いと今後への思いを聞いた。
大学卒業後、ITエンジニアとして働いていた咸さん。数社でさまざまな役割を経験したが、25歳で比較的ゆったりしたポジションに異動になった。「急に時間ができて焦りが出て」。30歳までに独立して自分で開発したプロダクトで稼げるようになることを目標とし、まず女性エンジニア向け1 on 1サービス「sister」を立ち上げた。
「メンターが欲しかったんです。既存のメンターサービスに女性エンジニアがいなかったので、自分で作ろうと」。500名ほどのコミュニティでサービスをスタートした。「進めるうちに、ジェンダーギャップの問題は女性側で解決できることではなく、社会構造にあると感じるようになりました」。
女性比率を上げたい企業側のニーズに着目
続いて法人化し、最初はこのサービスを企業の福利厚生として導入してもらう仕組みを作ったが、これだけでは課題解決にはつながらない。そこでDEIコンサルティング事業に転じたが、これも採算につながらなかった。「こうして多くの企業を回るなかで、企業側に女性比率を上げたいという思いはあることがわかったんです」。そこで立ち上げたのが転職サービス。企業はジェンダーダイバーシティ診断を受けて公表すれば「bgrass」のもつ2000名以上の女性エンジニアのデータベースにアクセスできる。
「決して高いハードルではありません。診断を受け、公表する姿勢が大事。そのためには会議が開かれ、議論が行われますから」。女性エンジニアにもメリットがある。
「月に3、4回技術勉強会を開く他、イベントやコミュニティ活動も行っています。ここで知り合った人とカジュアル面談に進んだり、自己評価が低かった人も自分の価値を客観的に知ることができ、上を目指すようになります」
ジェンダー格差は根深い。 「面接官が全員男性なら女性求職者が萎縮することもありますし、男性のほうが実績や目標を大きく語る傾向があり、それも女性の評価が相対的に低くなる原因のひとつ。こうしたバイアスを企業側にも女性エンジニア側にも伝え、改善につなげたいです」。今後は、企業のダイバーシティ格差の可視化を目指す咸さん。「人間には認知のゆがみがあるので、デジタルの力を組み込んだ、フェアな評価の仕組みを広めたいと思います」と語ってくれた。
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