「シングルでいること=孤独で寂しい」という固定観念にとらわれず、「自分自身と深く向き合える貴重な時間」としてシングルライフを捉える視点が、いま改めて注目されている。その中で鍵となるのが“瞑想”。
瞑想は、ひとりの時間を単なる「孤独」としてではなく、「自分を整え、内面を満たすための時間」として捉え直す手がかりとなる。世界的に有名な瞑想家でヨガ指導者のニーマル・ラージ・ギャワリ先生が、瞑想を日常生活に無理なく取り入れるコツと、その実践によってシングルライフがもっと豊かになる理由を解説。
TIPS1:自分と向き合う時間を持つ
シングルで過ごす時間は、誰にも邪魔されることのない「自分と向き合うための大切なひととき」でもある。瞑想とは、外の世界ではなく、自分自身の内側に意識を向けることであり、その本質は“自己との対話”。
目を閉じて、呼吸に意識を集中し、「自分は今ここにいる」と静かに確認するだけで、心の状態が少しずつ整ってくる。自分と向き合う時間を持つことは、すなわち瞑想のひとつである。ニーマル先生は「何かに悩んだとき、答えを外(他人や世間)に求めるのではなく、まず自分の内側を満たすことが大切」と語る。自分との対話を深めることが、シングルライフをより充実させる第一歩となるのである。
TIPS2:孤独を味方にする
孤独はネガティブなものとして捉えがちであるが、実は心を育てる大切な機会でもある。ニーマル先生は「孤独の時間こそ、自分の内なる声を聞くチャンス」と語る。瞑想を通じて、孤独は「静けさ」や「自己成長の時間」として再定義することができるのだ。
そのためには、孤独の時間を意識的に肯定的に過ごす工夫が必要。たとえば、自分を受け入れるための「自己受容の瞑想」がある。「自分はありのままで十分だ」と心に語りかけることで、自分との関係が穏やかに整っていく。
TIPS3:感謝の気持ちを持つ
感謝の気持ちは、心を整え、日々を穏やかに過ごすための大切な鍵となる。ニーマル先生は、感謝の気持ちを「心の栄養」と捉えている。シングルライフでは、誰かに何かをしてもらう機会が少なく感じられることがあるかもしれないが、実は日常の中には小さな「ありがとう」がたくさんある。
たとえば、心地よい天気(自然)、温かい食事、産みの親や隣人…それら一つひとつに感謝を向けることで、内面の豊かさが育まれていく。寝る前に「今日一日に感謝する」習慣や、瞑想を始める前に「今日感謝したい人」を思い浮かべることも効果的。感謝は、シングルライフと自分の心に幸福感をもたらす力を持っているのだ。
TIPS4:自分の欲に気づく
シングルライフを送る中で、「何かが足りない」と感じる瞬間は少なくない。しかしニーマル先生は、欲の仕組みに気づくことが重要であると語る。
特にシングルライフは、漠然とした不安や欠乏感に振り回されがちであるが、まずは「自分が本当に望んでいるものは何か」と自らに問いかけてみることが、心の充足感につながっていく。また、自分の感情を否定せず受けとめる時間を持つことも、内面と向き合う手助けとなる。
ここまでは、シングルライフをより豊かにするために瞑想を通じてできる4つの実践方法について紹介してきた。では、どうしたら習慣化させられるか?
瞑想を習慣化させるには?
瞑想は特別な行為ではなく、コツさえつかめば日々の暮らしの中に簡単に取り入れられことだと覚えておこう。ニーマル先生は、「瞑想はライフスタイルの一部として取り入れることが大切である」と語る。
無理なく続けるには、日常の決まったタイミングに組み込むのが効果的。たとえば、起床後の5分間や就寝前の数分(何分でもOK)、通勤中の電車の中や会社での休憩時間を「自分のための静かな時間」として確保する。重要なのは、時間の長さではなく、短くても意識的に続けること。こうした小さな習慣が、やがて心のゆとりや豊かさにつながっていくのだ。
瞑想は人間関係の質を高める
シングルであることは、孤立を意味するのではなく、より良い人間関係を築くための尊い時間である。ニーマル先生は、「他者とのつながりは、まず自分自身を満たすことから始まる」と語っている。瞑想は、その内面を整える有効な手段であり、特に「共感力」を育てる助けとなる。
自分自身をはじめ、家族、友人、知人、そして世界(自然)へと「幸せでありますように」と祈る。この練習を通じて、思いやりの気持ちが自然と育ち、人との関係もより温かく、深いものへと変化していく。自分を大切にすることは、他者とのつながりの土台となるのである。
瞑想がシングルライフをより輝かせる
シングルライフは、ただ誰かと過ごす時間がない状態ではなく、「自分を知り、成長し、内面を豊かにするための大切な時間」である。パートナーの有無にとらわれず、「今の自分をどう生きるか」に意識を向けることが、真の幸福へとつながる。
「瞑想とは、外の世界を変えるものではなく、自分の内なる世界を豊かにするものである。シングルでいる今こそが、そのための最高の機会である」とニーマル先生。静かに向き合うひとときが、人生をより深く、穏やかに彩ってくれるのである。
PROFILE
ニーマル・ラージ・ギャワリ 瞑想家、ヨガ指導者
ネパールのヨガ道場に生まれ、幼少期からヨガを学ぶ。世界20カ国でヨガ瞑想を指導し、2003年に来日。現在は、東京・広尾にある瞑想スタジオsuwaruで指導する。著書に『世界的瞑想家が教える 本当の自分に戻ってラクに生きる練習』(ダイヤモンド社刊)など。