子どもの心身に悪影響を与える言動を繰り返す「毒親」。着信があるだけで幼少期のトラウマがよみがえり、会うと毎回傷ついて、怒りの感情が湧いてくる……毒親との関係は、大人になった今の生活にまで深く影響する。有害な家族関係はそもそも、その問題を認識すること自体が難しく、たとえ気づけても対処法が分からず苦しんでいる人も多い。ここでは、専門家のアドバイスをもとに、毒親の示す特徴と、彼らとの健全な向き合い方について考えてみよう。

【毒親の兆候・その1】責任転嫁をしてくる

women fighting outdoors reprimanding each other
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医療ソーシャルワーカーでリハビリテーションソーシャルワーカーのモルガン・ポメルズは、毒親の最大の兆候の1つは、彼らはいかなる種類の説明責任も負わないことだと指摘している。何か悪いことが起きると、毒親はあなたを含め、他の誰かのせいにする。彼らの行動や態度がその問題の唯一の原因ではないとしても、説明責任を一切負わないことは危険信号だ。

ポメルズによると、説明責任の欠如は、「自分の恥や嫌悪を他人に押し付け、謝罪や反省を回避しようとする試み」であり、逆に、「謝ったり、自分の問題を認める能力は、健全な家族システムの特徴」だという。

【毒親の兆候・その2】陰で意地悪をする

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ポメルズによると、もう1つの一般的な毒親の兆候は直接的な衝突を避けつつ、裏で意地悪や妨害を行う「受動的攻撃的な態度」だという。罪悪感を抱かせるような言動をしたり、皮肉な褒め言葉をかけてきたり。こちらを見るときに目を丸くしたり、非難のため息をついたりといった非言語的な振る舞いも含まれる。家族はあなたの過去の失敗や弱点を誰よりも良く知る存在であり、あなたの人生に意見するときには、それらを持ち出すことができる。冗談のふりをしていても、彼らの言動には深く傷つける意図が隠れている可能性がある。

【毒親の兆候・その3】恐怖や義務感、罪悪感を利用する

mom and daughter ( sadness)
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ポメルズのクライアントの中には「恐怖や義務感、罪悪感を利用して子どもをコントロールしようとする親」に苦しむ人も多いという。こうした親は「言うことを聞かないと罰を与える」と脅したり、「いい子ならこうするはず」と罪悪感を植え付けたりする。このような操作的な手法にさらされると、子どもは無力感に苛まれ、結局は親の意のままに動かされてしまう。

【毒親の兆候・その4】親子の境界線がない

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親子の間であっても適切な境界線を設定することは、健全な関係を築く上で非常に重要だ。それは「仕事中に電話してこないで」といった単純なものから、「子どもの教育方針について私の意見を尊重して欲しい」といったものまでさまざまだ。自分は守る必要はない、と思っている人間は簡単に境界線を破ってくる。それは明らかに敬意を欠いた態度だ。

【毒親の兆候・その5】ガスライティングする

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「ガスライティング」とは1944年のイングリッド・バーグマンの映画『ガス燈』に由来する用語で、被害者に「自分の記憶や感覚は間違っている」と思い込ませ、現実認識を歪ませる心理的虐待の一種だ。毒親はあなたの子ども時代の経験について、それほど酷いものじゃなかった、と主張したり、「そんなことは起きていない、作り話だ」と断言したりするかもしれない。

孤立した環境では現実認識の歪みに気づくことは難しいため、自分がガスライティングされていることを理解するためには「コミュニティに参加し、他者と健全な関係を築き、セラピストを見つけることが非常に重要です」とポメルズは述べている。

【毒親の兆候・その6】脅迫や罵倒、暴力がある

sad woman hug her knee and cry sitting alone in a dark room. depression, unhappy, stressed and anxiety disorder concept
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これは有害な関係の最も明白な兆候のように思えるかもしれないが、常に家族の力学の一部として常態化している場合は気づけないこともある。悪口や身体的な脅迫、その他の家庭内暴力が正当化される状況は決してないことを改めて認識しよう。

【毒親の兆候・その7】自尊心がゆがめられる

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機能不全の家族関係は「あなたの自尊心全体をゆがめます」とポメルズ。「機能不全の中で育ち、その状態で暮らし続けると、自分は十分ではない、心から自分を愛したり気遣ったりしてくれる人はいない、これからもそうだという思い込みが強まる可能性があります」

毒親育ちの人は同じような力関係や機能不全を反映した関係を、他者との間で求める場合もある。「同じような接し方をするパートナーに対して親しみを感じてしまうかもしれません」

問題に気づくために自分の体の声に耳を澄まして

young woman with hand on chest
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親子関係が機能不全に陥っていることを認識するのは、特に身体的または経済的虐待がない場合は難しい。ポメルズは状況を理解する上で、自分の体に起きている変化を観察することが有効だという。「あなたの体は、あれが嫌だった、これは気分が良くない、家族の夕食には行きたくない、などと訴えているのです」と彼女。体の感覚を抑圧したり無視したりせず、意識を向けてみよう。例えば、親からの電話に出ているときに胸が締め付けられるような感じがしたり、うまく呼吸できなかったり、体が震えたりするのなら要注意だ。

毒親の攻撃は上手に「かわす」ことが大切

a woman holds a wooden disposable fork and eats from take out container, and uses a single use coffee cup.
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毒親は常に傷つくような言葉であなたを争いに誘い込もうとしてくる。ポメルズはこういったときに、できるだけ上手に「かわす」をすることを勧めている。腹立たしい発言に対して、短く、はぐらかし、曖昧な返答をするのだ。これは他人の行動を変えようとする試みではなく、自分自身の行動をコントロールしようとする試みだ。「『面白いね』とか『いいね』などと言うだけでも効果があります。摩擦に巻き込まれないようなことなら何でもいいのです」

毒親との関係を絶つべきタイミング

man and woman divided by a line
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家族と接触を断つことは難しい決断だが、ポメルズは明らかな身体的、経済的、精神的虐待などがある場合は接触禁止にすることを勧めている。「ただし、納得して自分で決断してください。そうでなければ続けることができません」

接触を断つという決断は、あなたの決意を試し、家族の習慣を変え、他の家族の介入のきっかけとなるかもしれない。また、すべての人間関係に最適な解決策とも言えない。しかし、機能不全家族は場合によっては修復可能であり、決断は永続的である必要はない。自分の今の状況をよく見極めて、どうするべきか決めよう。

ポメルズは機能不全家族の修復を試みる場合には、信頼できる人やファミリーセラピストなど第三者の介入を勧めている。問題のある家族関係では感情に流されず、修復に必要な行動を取ることが重要だ。

変えられない現実と向き合い、自分が楽になる選択を

the concept of self love!
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家族との関係を完全に断ち切りたくない場合は、家族の現実を直視し、期待するのをやめることが大切だ。「最も重要なのは受け入れることです」とポメルズ。「そこに行ってシステムを変えようと試みるのではなく、ただ一日を乗り切るのです」

あるがままを受け入れることは容易ではない。しかし、そうすればいつか一緒に過ごすなかで、小さな喜びの瞬間を迎えられる日も来るかもしれない。

Translation & Text : Naoko Ogata