いつまでも美しく、飾らない屈託とした笑顔で周囲の人々を魅了させる、長谷川潤さん。誰もが憧れるナチュラルでヘルシーなその美しさには、どこか時間の概念を超えた強さとしなやかさがある。38歳となった今、彼女は年齢を重ねることをどう感じているのか。ありのままの想いを語ってもらった。
年齢を重ねることは、自由になること
歳を重ねるからこそ、自分をより深く信じられるようになったと語る、長谷川さん。
「私は小さい頃から大人に憧れていて、歳をとることは自由になることだと思っていたの。経験や知識って、重ねないと得られないでしょ?だから、歳の数が増えることにネガティブな気持ちはなかったです。大人になった今は、子供の頃と違って“早く歳を重ねたい”という強い想いはないけれど、その歳にしか味わえない感覚や思考ってあると思うから、今この瞬間を大事にしながら、楽しみたいなという気持ちです」
その言葉通り、彼女の生き方は自由を表しているように感じる。10代からモデルとして東京でキャリアを築きながら、今はハワイを中心に二拠点生活を送る。
「住む場所も、働き方も、自分で選べること。それが私にとっての自由。今ハワイに住みながらキャリアを日本で続けられていることも、全て自分の選択です」
その選択には、確かな“本能”の声があったそう。
「ハワイに移住する時、確実にうまくいく保証なんてなかったけれど、不思議と“引っ張られる”感覚があったの。理屈じゃなく、体の中から湧いてくるものに従ったら、自然とうまくいったんです」
年齢を重ねたことで、自分の中の“感覚”や“本能”に対する信頼が深まったという長谷川さん。若い頃にはなかった“飛び込む勇気”は、これまでの経験というエビデンスが支えてくれている。
「今は、頭で考えすぎることが逆に不自由だと思うようになった。本能に導かれて動くことが、結果的に一番自分らしくいられる気がします。私は飛び込んでみたらそれが結果的に良かったけれど、飛び込まないという選択も自由。自分の心と向き合って、今、私はどうしたい?というシンプルな問いの答えに素直に従っています」
母となったことも、彼女にとっての大きな変化だった。“守るべき存在”ができたことで、自然と「イエス」「ノー」が言えるようになり、それが結果的に、自分自身のクリエイティビティを守ることにも繋がった。
「私は出産してから、子供のためにはっきりと物事が言えるようになったんだけど、ふとした時に、子供のためにはできるのに、どうして自分のためにはそれができないんだろうって考えるようになって。そこから少しずつ仕事に対しても自分の意見を言えるようになってきたんです。自分の中では、こうだったらいいのにとか、こんな世界観が好きというのが、今すごくはっきりしてるから、それが表現できるようになってから、自分が気持ちいいと思える仕事や場所を作れるようになってきた気がします」
自分の好きなスタイルを見つけると、その先が見えてくる
そんな「感覚」を大切にする姿勢は、彼女のファッションやライフスタイルにも色濃く表れている。
「私はとにかく、シンプル、ナチュラル、タイムレスという3つの美しさに惹かれるの」と話す長谷川さん。
“余白をつくること”を意識するようになったきっかけは、ある一冊の本との出会いだったそう。それは、こんまりさんこと近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』。
「彼女の片付け法を最初から最後までしっかり実践してみたら、ものがないミニマルな空間って素敵だなと気づいたんです。ただの断捨離の方法を学んだというよりかは、私のスタイルってこうなんだなと、ハッとしたの。全ての人がミニマルが好きというわけではないと思うし、たくさんのものに囲まれている空間が好きな人は、それを実践すれば良いと思う。物質的なものに限らず、あらゆる選択が“ときめき”で決められるなら、人生はもっとシンプルにできるんだって気づいたんです」
そこから少しずつ、自分の内側に目を向けるように。身の回りのものを見直すことで、自分がどんな人間で、何を大切にしたいのかがクリアになっていったという。
「ものを持たないことが目的じゃなくて、“余白を持つ”ことが自分にとって大事なんだと思うようになって。暮らしも、思考も、関係性も、少しずつ“ときめくものだけ”を残していくようになりました。10代の頃は、当時トレンドだった“盛る”ファッションや、濃いメイクでの撮影が多かった。あの時は、仕事の後メイクを落とすのが何よりも楽しみで、自分の本当の顔が見えることに、ホッとしていたのを、今でも覚えているの」
そのシンプルでナチュラルな感覚は、ファッションやモデルとしての表現方法にも一貫している。
「ちょうど時代の流れとも重なったと思うけど、メイクだけでなくファッションもシンプルになっていった。何に対してもナチュラル。モデルとしてカメラの前に立つ時も、自然体な動きをしたいし、ありのままの自分を表現したいなと思っています」
自分が心地よいと思うものを大切にする
内面から滲む長谷川さんの美しさを形づくっているのは、日々の暮らしのなかで彼女が最も大切にしている「整える」ということ。心も体も、環境も。そのための小さな選択を、丁寧に重ねている。
「最近毎日続けているのは、手作りのレモンウォーター。ミネラルウォーターにレモン半分を小さじ程度のローハニーを混ぜて、それを飲んでいます。私の体にすごく合っている気がして、毎朝飲むと体が目覚めて、内側に太陽が入っていくようなエネルギーをもらえるの」
そう語る長谷川さんの食生活は、それぞれの人の体に合わせて食べ方を変えるという“アーユルヴェーダ”からインスピレーションを受けている。
「自分の体の中の状態や感情に向き合うことで、食べるものも自然とシンプルになってきたし、余計なものや、添加物が入っているものをなるべく体に入れないようにしています。小麦や乳製品を抜くことも、私の体にはとても合っているみたいで、その生活がとても心地よい。私はアーユルヴェーダの教えの中の「ヴァータ」タイプで、温かいものが体に合っていると聞いて、納得。昔はサラダのような生野菜=健康と思っていたけど、私の体にはしっくりこなくて、難しいなと思っていました。だけど、同じ野菜でも体質的にスープや炒め物のような温かい食べ物が自分に合っているとわかってからは、すごく心が楽になったの。それからは、食事に温かいものを取り入れるようになって、特に野菜たっぷりのカレーが大好き。体が欲していれば生野菜も食べるようにしてます」
深い呼吸で体を“今”に戻す
瞑想やヨガをすることも、自分と繋がり、“今”を感じ取るための大切な時間であり、心の余白をつくる上で大切なことだと語る。
「瞑想は毎日します。理想は20分だけど、ちょっとした隙間時間の5分や10分でも、夜寝る前でも。とにかく、目を瞑って自分の内側に“静けさ”を取り戻す時間をつくることがすごく大事。頭でいろいろ考えすぎてしまうから、呼吸に集中して“今ここ”に戻るんです。自分のことを一番分かっているのは、自分自身。だけど、日々の忙しさや外からの情報で、つい“外”を見てしまう。だから瞑想は、自分の中心に戻るための大切な時間です。心が整うと、余計なものが気にならなくなるんです」
ヨガは自身のペースで、好きな時に。
「ヨガも本能的にやりたい!と思ってはじめたのがきっかけ。瞑想と違って、ヨガは体が欲している時にやるようにしています。あんまりストイックに毎日やる、と決めないで、これも自分の気持ちに素直なペースで取り入れるようにしています。とにかく、自分の感情に素直に。体が欲していない時はやらない。その方が、気持ちよくずっと続けられるから」
最近はフェイスヨガも取り入れることも。
「体づくりと一緒で、いい体をつくるためには、筋肉を鍛えるところもあれば、ほぐさなきゃいけないところもある。たくさんのフェイスヨガのビデオをみながら、実践しています。それがとっても気持ちよくて、すごく発散になっている気がする。顔の表情って、みんなと向き合っていて、感情にも繋がっているじゃない?自分の気持ちが顔に出ることもあるから、顔をほぐすってすごく大切だし、顔がスッキリすると心もスッキリする気がする。眠れない夜に顔をほぐすと、自然と気持ちがリラックスできるし、朝起きた後やると顔が目覚めて表情が豊かになるし、最近お気に入りの習慣です」
メンタルケアの一環として、セラピーも定期的に受けているという長谷川さん。そこでの対話が、心のチューニングに役立っていると話す。
「瞑想やヨガをしてもモヤモヤが解消されない時は、セラピストさんのセッションを受けるようにしています。吐き出すというよりかは、イライラやもやっとした感情が、自分でなぜ起きているのかわからない時に、話を聞いてもらいながら、その根っこの原因を一緒に見つけていく作業というイメージかな。負の感情も否定しないで、原因を探ることでそんな感情の自分を受け入れられるようになるし、リリースできる」
話を聞いてもらう相手選びも、大切なポイントだと語る。
「友達に話すのとも、また少し違うんだよね。友達や家族に話すのもスッキリするけれど、それは一時的なものだったりもするし、もしかしたら愚痴っぽく聞こえてしまうこともあるかもしれない。風邪をひいたり、骨折したら病院にいくのと同じ感覚で、しんどい時はプロフェッショナルな方に頼るのも、大事だと私は思います。セラピーを受けた後は、びっくりするくらい、スッキリするし、デトックスできた感覚がある」
「年齢を重ねること」は、恐れるものじゃなく、楽しめるもの
歳を重ねるということ。それは、誰にとっても避けられないテーマだけれど、長谷川さんは「歳を重ねること自体が、美しい」と、まっすぐに言い切る。
「年齢を重ねてチャーミングだなって思う人って、みんなすごく生き生きしてるんだよね。好きなことをして、自分のケアもして、心がスパーンと抜けているような感覚。その姿を見ていると、“私もこういう風に歳を重ねたい”って思う」
SNSでも、そうした大人の女性たちを積極的にフォローし、「こんな風に歳を重ねるって素敵だな」と日々インスピレーションを受けているという。
「シワがあるとか、肌のハリがどうとかより、“どう生きてるか”の方がずっと魅力的。自分にとって心地よいことを選び続けると、不思議と鏡を見ても気にならなくなっていくの。だって、“こっちの方が気持ちいい”って、自然と思えるから」
その言葉には、表面的な美しさを超えて、「ありのままの自分を受け入れる強さ」がにじんでいる。
長谷川 潤
アメリカ・ニューハンプシャー州のマンチェスター出身。15歳で日本へ渡り、モデル活動を開始。数々のファッション誌の誌面や表紙を飾る。その後、TVやCMへと活動の幅を広げたのち、2013年の第1子誕生を期に活動の拠点を東京からハワイのオアフ島へ。現在は2児の母として生活を送る傍ら、ハワイを拠点にしながらモデルやタレントとして活躍。自然体でエシカルなライフスタイルは、年代や性別を問わず、多くの人から共感を得ている。