エディターKが経験した謎の多幸感……その秘密は腸にアリ⁉
「この春、私は奇妙な症状に見舞われていた。胸の奥から、じわりじわりとあふれ出てくる原因不明の幸福感。もちろん悪いことではないけれど、なにせ思い当たる節がない。一体全体なにごとかと思っていたのだが、その頃受けた腸内細菌検査の診断結果のカウンセリングにて、その原因が判明。 私の腸内細菌は『バクテロイデス』という菌が最大勢力、約4割を占めていた。幸せホルモンのセロトニンを作ってくれる菌だという。この菌を大量に持つ人は、とにかく前向きでハッピーマインドな人が多いとか。思い返してみれば検査を受けた時期、塩麹を手作りし、無農薬野菜を取り寄せ、腸活に励んでいたなぁ。え、もしかして効果抜群? ならば、もっと知りたい腸活。これって幸せへの最短距離かも⁉」(シニアビューティエディターK)
腸活でハッピーになれる理由とは?
腸活のメリットはさまざま。メンタルに影響を及ぼす理由から、
メンタル以外のうれしい効用まで、腸内細菌の専門家にリサーチ。
教えてくれたのは…
下川 穣さん
株式会社KINS代表。遺伝子や菌を専門としたクリニックの理事長を経て、独立。著書に『腸活にも、美肌にも、ダイエットにも! 菌ケアで美しくなる』(幻冬舎刊)。instagram:@yutaka411985
清水みのりさん
菌検査解説員、料理家。発酵蔵スタジオカフェ「Tamahoko」主宰。著書に『調味料を変えるだけ! 身体が喜ぶ発酵調味料メソッド』(方丈社刊)。instagram:@minopan
「腸を整えることでハッピーになれる理由は大きく3つあります」と話すのは、菌ケアブランド、キンズの代表下川 穣さん。
「ひとつは心身の安定をもたらすセロトニンの90%は腸内で作られていること。それがそのまま脳に作用するわけではないですが、腸内セロトニンが腸のぜん動運動を促して腸内環境を健全化します。2つ目に、腸内環境がよくなると、セロトニンの材料になる物質の吸収が促進されます。それが脳内のセロトニン生成につながるわけです。3つ目に腸脳相関といって、腸と脳は神経でつながっており、お互いに影響を与え合っているんです。そのため、腸内環境を整えることで、メンタルも安定することがわかっています。
また、たとえば脂肪燃焼物質を作ってくれるブラウティア菌や自閉症の症状改善効果が研究されているプランタルム菌の一種など、特定のメリットをもたらす菌も解明されてきています」
菌検査解説員の清水みのりさんは、栄養吸収の重要性を語る。
「私たちの体にもし腸内細菌がいなかったら、1日10食は食べないといけないくらい、消化吸収を助けてくれるのが腸内細菌。それぞれの菌が好む食べ物を分解し、代謝産物を生み出す働きをします。腸内細菌のバランスがよければ、有益な物質が多く生み出され、それが全身に届くことで、肌質や髪質の改善、疲労感の軽減、病気予防など、多くの利点が得られます」
では、どんな腸内環境を目指せばいいのか。
「腸内細菌の種類と数が多いことが重要。菌種が多ければ、同じ食事をとっても多様な代謝産物が生まれ、多くの栄養素を獲得できますし、数が多ければ、安定した腸内環境が保てます。そのためにバランスのいい食事が腸活の第一歩です」(清水さん)
あなたの腸内環境は大丈夫?今すぐチェック!
- 毎朝、決まった時間にお通じがない
- 風邪をひきやすい
- 便秘または下痢を繰り返す
- 体臭や口臭が気になる
- 気分が落ち込みやすい
- 花粉症がひどい
- 吹き出物や湿疹がよくできる
- 食事の時間になってもおなかが空かない
- 甘いジュースや揚げ物を日常的にとっている
当てはまるのが0~2個の人
腸内環境はいい状態です。当てはまる項目が一時的なものならば、心配は無用。長期にわたって続くようなら、腸内環境の改善が必要。
当てはまるのが3~5個の人
腸内環境は黄色信号。悪玉菌が増えすぎていたり、腸内バランスが崩れているかも。次ページを参考に、食事内容を見直してみて。
当てはまるのが6個以上の人
あなたの腸内環境は、かなり危険な状態。すでに健康状態に影響が出ているかも。今すぐ下の内容を参考に、腸活に取り組んで。
菌も私もハッピーになる! 腸活のキホン
腸内細菌の多様性を保ち、いいバランスをキープするには?
腸活のポイントと、腸内細菌が喜ぶ24時間のモデルスケジュールをご紹介。
昔ながらの和食中心が簡単&最強の腸活に
「腸活の基本は、①いい菌を取り入れる②菌のエサを取り入れる③菌の邪魔をしないの3本柱です」と教えてくれた下川さん。
「①は納豆やぬか漬け、みそなど発酵食品を日常的にとることで納豆菌や乳酸菌などの善玉菌を取り込むことができます。そのうえで、②海藻や野菜、穀物など善玉菌の大好物である食物繊維をたっぷりととることで、菌を育てていきます。③ただし、揚げ物や過度なアルコール、糖分、グルテン、添加物や農薬などは腸壁を汚したり、バリア機能を壊してしまう原因にも。完全にゼロにせずとも、なるべく控えることで腸内細菌が活性化します」(下川さん)
なんだか難しい、と感じたら「まずは基本の和食を心がけるといい」と清水さん。 「腸内細菌の種類は国や地域によって大きく異なり、私たち日本人には和食を分解しやすい細菌が代々根付いています。米と魚、漬物にみそ汁、といった昔ながらの食事がほとんどの日本人にとっていい腸活といえるんです」(清水さん)
腸内環境が良くなる24時間スケジュール
MORNING
7 : 00 朝日を浴び、前向きな気持ちでスタート
「朝日を浴びると睡眠の質が上がり、腸内環境もよくなります」(下川さん)。「不機嫌でいると自律神経が乱れ、体の深部体温が低い状態に。今日も頑張ろう! とポジティブな気持ちを持って」(清水さん)
7 : 10 水を飲む前に、必ず歯を磨く
「朝一の口内は悪玉菌が優勢の状態。そのまま水を飲んだり食事をとったりすると、悪玉菌が腸内に入ってしまうことも。まずは歯磨きを!」(清水さん)
7 : 15 ランニングや散歩など、運動で体温をアップ
「悪玉菌は寒いところを好み、善玉菌はそれより約1度高い環境が好き。ランニングや朝ヨガ、お散歩でもいいので運動することで深部温度を上げて。腸が動き出し、お通じもよくなります」(清水さん)
8 : 00 朝食は和食でタンパク質をしっかり補給
「朝食でタンパク質をとると筋肉が増えやすいです。おすすめはキムチ納豆。納豆菌と乳酸菌を一緒にとると効果が倍増します。主食は玄米や五分づき米、もち麦や黒米を混ぜた雑穀米にし、腸内細菌が大好きな食物繊維とデンプンを補給。みそ汁は毎食飲んでもいいくらい腸活にはおすすめ」(下川さん)
DAYTIME
11 : 00 腸活の相棒ドリンクは緑茶
「緑茶はビフィズス菌を活性化し、免疫も強化してくれます。水出しすればカフェインも抑えられるので、午前中はお湯で、午後は水出しで入れて」(下川さん)
12:00 昼食は和定食をよくかんで食べる
「昼もご飯とみそ汁、野菜、魚などの和定食を選んで。ポイントは一口30回かむつもりで食べること。戦前は1回の食事で約1400回そしゃくしていたのが、今は600回程度。かむことで消化が進み、胃腸の負担も減りますし、唾液の中に若返りホルモンが入っているため、美肌効果も得られます」(清水さん)
15: 00 カフェインは15時まで。それ以降はハーブティーで温活を
「カフェインは夜の睡眠に影響するので、15時以降はカフェインの入っていないハーブティーや番茶をホットで飲み、胃腸を温めましょう」(清水さん)
16 : 00 夕食前のおやつはナッツをチョイス
「ナッツは長寿菌のエサになり、腸内細胞のエネルギー源になる成分を出してくれます。ほかには、焼き芋や油の少ない和菓子などがおすすめ」(清水さん)
NIGHT
18 : 00 夕食は早め&軽めに。次の朝食まで12時間以上は空けること
「飽食の時代になり、胃腸が休まる時間が不足。空腹の時間をつくることが必要です。16時間空けるのが理想的ですが、12時間以上空けられればOK」(下川さん)。「いろんな種類の食物繊維をとると多様な細菌のエサになるため、豚汁など具だくさんのみそ汁を作るのが楽。+ご飯で軽めに済ませて」(清水さん)
20 : 00 ヨガやピラティス、瞑想など、リラックスタイム
「15分以上腹式呼吸を続けると、体が若返るといわれています。腹式呼吸は腸内環境にもいいので、ヨガや瞑想で取り入れてみて」(下川さん)
21 : 00 しっかり湯船に浸かって体を温める
「バスタイムはシャワーで済ませず、湯船に浸かって深部体温を上げて。リラックスすることで腸も休まり、その後の睡眠の質も上がります」(清水さん)
23 : 00 睡眠不足はNG! 早めに就寝を
「睡眠不足は腸内環境悪化の原因。寝る前から照明を落としておくと、副交感神経優位になり、自律神経が整って、菌もいい環境で過ごせます」(清水さん)
より手軽に! 菌の力を味方にするお助けアイテム
バランスのいい食事に適度な運動が腸活の基本ではあるけれど、忙しいとなかなか実践できないことも。なるべく手軽に菌たちの恩恵にあやかれる方法をASK !
SUPPLEMENT
菌や菌が作る栄養を取り入れられるサプリメント
「腸活をサポートするサプリには菌自体をとれるもの、菌のエサをとれるもの、菌が発酵によって作り出した栄養成分をとれるものの3種があり、手軽に取り入れられるのがメリット。酵母菌なのか麹菌なのか乳酸菌なのか、入っている菌種を確認して、相性のいい菌を見つけて」(下川さん)
(写真左から)
1 乳酸菌由来の代謝物を配合し、内臓脂肪や食後の血糖値にアプローチ。HYA™-50F 180粒 ¥12,500/キュメック
2 女性特有のゆらぎに着目し、酵母と21種の乳酸菌・ビフィズス菌の代謝物を配合。ウーマン バランス 60粒 ¥5,400、
3 22種の乳酸菌や代謝物を配合し、腸活のファーストステップに。オリジナル 60粒 ¥10,152/共にキンズ
SEASONINGS
調味料を変えるだけ! 毎日の食事で菌が喜ぶ
「しょうゆ、みそ、みりんなど伝統的な発酵調味料は、原料を麹菌が分解することで何十倍にもなった栄養素が入っています。しょうゆやみそなら天然醸造で1年以上発酵熟成されたものを選ぶなど、自然素材で作られ、菌が生きているものが◎。毎日の食事で腸が元気に!」(清水さん)
(写真左から)
1 太陽と風だけで結晶化させた伊豆大島産天日海塩。ほししお(青ラベル) 240g ¥810/海の精
2 こだわりの原料と野生の麹菌を使った最上級のみそ。米みそ 自然 500g ¥1,296/藤原みそこうじ店
3 杉だるの中で4年熟成した香り高い逸品。純もろみしょうゆ 特醸(本醸造) 900㎖ ¥1,495/北伊醤油
4 天然醸造で1年以上熟成させた本みりん。三州三河みりん 700㎖ ¥1,122/角谷文治郎商店
5 低精白で米本来の旨み豊かな日本酒。純米80 香取 720㎖ ¥1,309/寺田本家
HANDMADE KOJI
意外と簡単! 塩や醤油の代わりに使える手作り麹調味料
エディターKも実践していた手作り麹。「麹は酵素やビタミン、ミネラルが豊富で、有用な菌の塊。うまみ成分もたっぷりで、いつもの料理が簡単においしく仕上がります。まずは基本の塩麹としょうゆ麹からぜひトライ!」(清水さん)
【塩麹】
〈材料〉
・ 生麹または乾燥麹 100g ・ 塩 30g
・ 麹がひたるくらいの水
(生麹は80㎖~、乾燥麹なら140㎖~)
① 生麹を手でほぐし、塩を入れてよく混ぜたら、清潔な瓶に入れてひたひたになるまで水を注ぐ。
② キッチンペーパーでふたをし、輪ゴムなどで固定する。常温に置き、1日1回清潔なスプーンでかき混ぜる。
③ 麹が少し溶けて見た目がトロッとなり、ほのかに甘い香りがしたら完成(夏は5日くらい、冬は2週間程度)。瓶のふたを閉めて冷蔵庫で保存。保存の目安は、冷蔵1カ月、冷凍3カ月程度。
【しょうゆ麹】
〈材料〉
・ 生麹または乾燥麹 100g
・ しょうゆ 100㎖(乾燥麹の場合は150㎖~)
① 生麹を手でほぐし清潔な瓶に入れたら、しょうゆを注ぎ、とろりとするまで清潔なスプーンで混ぜる。
② キッチンペーパーでふたをし、輪ゴムなどで固定する。常温に置き、1日1回清潔なスプーンでかき混ぜる。麹が水分を吸収してしょうゆが足りなくなっていたら、再びひたひたになるくらいしょうゆを足す(分量外)。
③ 麹が少し溶けて見た目がトロッとなったら完成(夏は5日くらい、冬は2週間程度)。瓶のふたを閉めて冷蔵庫で保存。保存の目安は、冷蔵1カ月、冷凍3カ月程度。