ブレイク・ライブリーの髪にはたくさんの秘密が潜んでいる。だが、彼女はそれをリアルタイムで明かす準備ができている。まずはバターについての告白から始めよう。
「私はバターが大好きだから自分のブランドにバターの香りが入っていないのは正直びっくり」とブレイク。自身が手がけるヘアケアブランド「ブレイク ブラウン」のローンチにあたり、彼女はすでに自身の髪の秘密を世にシェアしてきた。たとえば、ブレイクが従来のコンディショナーを使用せず、保湿ヘアマスクを使うという習慣。この発想から、「ブレイク ブラウン」のラインにコンディショナーは存在しない。
今日ブレイクが発表するものは“バターの香りのヘアミスト”ではないにしても、さらに多くの髪のこだわりを披露するつもりだという。ビューティエディター勢を前にブレイク自身が、姪のケイトをモデルにしたホットカーラーのチュートリアルをやってのける。準備として、ほぼすべての指にはめているリングを外してケイトに預ける。隅には30本セットのホットカーラーが温められて待機中。彼女はケイトの濡れた髪に「ブレイクブラウン」のムースを手のひら2プッシュほどたっぷりなじませ、ピンクの「メイソンピアソン」のブラシでブローしていく。姪のストロベリーブロンドの髪は見事に倍のボリュームになった。
この後の1時間、ブレイクは手慣れて確信に満ちた手捌きでケイトの頭全体にカーラーを巻き、逆毛を立ててふわりと持ち上げて綿あめのような質感が出るまで仕上げていく。同時に、最新作「ブレウクブラウン」“クラシック ヘアスプレー”から立ちのぼるベリーとバニラの甘い香りが目に見えるような霞となって部屋を包み込む。スプレーの回数は……37回を過ぎたあたりで数えるのを諦めた。
「撮影でスタイリストが1日でヘアスプレーを丸々3本使ったことがあって。3本よ!」とブレイク。惜しみなくスプレーをしたことでヴェロニカ・レイク風のスタイルが1日中崩れなかったという。世界屈指のヘアスタイリストたちと仕事をしてきた経験から彼女は、「重ねても重くならず柔軟で、ベタつかないヘアスプレーを作りたいと思うようになった」と話した。最後に完成スタイルをお披露目すると、ケイトの髪はハリウッド女優のように弾みのあるなめらかなカールに。しかも、その仕上げはブレイク本人の手によるものだ。
デモのあと、『ELLE』はブレイクに単独インタビューを行った。ネット上の噂や華やかなヘアスタイルの秘訣、そしてドラマ『ゴシップガール』時代の彼女のヘアが2000年代の“レイチェル”になった理由について尋ねた。
―SNSで見事なヘアチュートリアルを披露しましたが、ネットで論争になっている件をはっきりさせたいです。動画に写り込んでいるのは人ですか?
「私がヘアセットしている背景で“誰かがシェービングしているの?”って聞かれたけど違うの。誰かが足にペディキュアを塗っていただけよ」
―あなたが食やフレーバーに情熱的なのは有名です。今回のヘアスプレーの香りであるブラックカラントに惹かれた理由を教えてください
「ブラックカラント(カシス)の香りは子どもの頃からなじみがあったわけではありませんが、10代後半から20代前半のころ、私が一番惹かれたキャンドルの香りがそれでした。『ボーティボ』のキャンドルは特に美しくて、有名なレッドカラントの香りもあった。私にとってはノスタルジックな香り。そこにバニラとウッディさを重ねると、少しモダンになるんです。私はフェミニンさとマスキュリンさが少しずつ共存している香りが好き。このブレンドはそのバランスが見事だし、他のアイテムとも本当に相性よく香ってくれます」
ー最悪のヘアデーはいつでしたか?
「私の髪の調子が悪い日は、たいてい髪にいろいろ手を加えたときです。映画の現場では、1日のうちに違うルックや時間帯をいくつもこなします。1日で6パターンのヘアに変えるなんて普通じゃないですよね。ありがたいことに髪を丁寧にケアしてくれる人たちがいますが、それでもダメージの違いははっきり感じます」
「仕事が終わって夏になると、そのダメージだけが髪に残っている状態で正直つらい。だから学んだのは、たとえ数日間のプロモーションのためだけでも過酷なスタイリングをした後はきちんと髪に“お返しのケア”をすることです」
ーでは最高のヘアデーは?
「自分でスタイリングするときはホットローラーを使った日がベストですね。ふわっと膨らんで、髪のボリュームが4倍くらいになります。普段はすばらしいヘアスタイリストの皆さんに担当してもらっています。ジェニファー・イェペスがアイロンで作るカールパターンは本当に美しくて、彼女いわく『偉大な巨匠から学んだテクニック』なんだそう。普通のツイストではなく長くてスパイラル状のカールだから、私の髪はプリンセスやマーメイドみたいになるんです」
ー『ゴシップガール』の放送当時、あなたのヘアは最も人気のあるスタイルのひとつで、ドラマ『フレンズ』のレイチェルと比較もされました。なぜだと思いますか?
「レイチェルにたとえられるなんて最高の褒め言葉よ。『ゴシップガール』のヘアスタイリストのジェニファー・ジョンソンは本当に素晴らしい人。今でも親友のひとりだしとてもクール。私たちは本当にたくさんのルックを作っていて1話の中で多いときは18パターンくらい。年間でも20〜27話を撮っていました」
「レイチェルと同じく、人気の理由の一部は視聴者が毎週“誰かの家にいる”感覚で親しみやすさや気楽さを感じられたことかもしれないですね。人となりやキャラクター、スタイル、ルックを知っていくんです。それにあのスタイルは憧れでもあった。実生活では毎日ああやって服を着て、髪まで完璧に整える人なんていないですよね。私だって毎日髪のスタイリングをやるわけじゃない。今日もただシャワーを浴びてここに来ただけです」
ー『ゴシップガール』のヘアは、ほとんど自然乾燥させてシニヨンにまとめていたと読んだことがあります。本当ですか?
「私たちは長い間カールアイロンを使っていたの。髪がかなり負担を受けていた時期もあって、ケアしようとしていたことがあります。いったん赤く染めてから、またブロンドに戻すために染め直さなきゃいけなかったり。だからできるだけダメージを抑えつつ、最大限の仕上がりを目指そうって話になって、熱を使わない三つ編みやお団子みたいなスタイルをたくさん取り入れました。そうすると、きれいでなめらかなウェーブが出ます。とはいえ、ドラマの撮影の間ずっと自然乾燥だけだったわけではありません。NYの暑さの中で撮影していたんだから」
ー「いいポニーテールは顔を引き上げてくれる」と言うヘアスタイリストもいます。数々のポニーテールをしてきたあなたは、その魔法を実感したことはありますか?
「そういう狙いでやることもあります。ポニーテールは顔を後ろに引っ張るために結ぶものでもあるし、こめかみのあたりに細い編み込みを入れて支点を作り、さらに引き上げる人もいます。私はその編み込みはやったことがないけれど、タイトなお団子やポニーテールにすると、私の顔も少し後ろに引かれます。すごく格好いい引き上げヘアにしたくてグッとまとめることもあるけれど、あとで自分の顔を見て『わ、顔の形が全然変わってる』って思うことがありますね」
「2017年ごろ、娘を出産した直後に夫とゴールデングローブ賞に出席したときの写真を見て、髪をすごくタイトにまとめていたせいで顔つきが違って見えたのを覚えています。とはいえ、普段は髪を回復させるためにポニーテールにすることが多いですね。私にとってはオフの日のスタイルみたいなもの。先週末もプレシャンプーを使ってから、ポニーテールと三つ編みにしました」
ーそのクリップ、素敵ですね
「ああ、ありがとう。たしか『Emi Jay』っていうブランドのはず。『Etsy』でも可愛いのをいくつか買ったんだけど、すぐ壊れちゃってすごく残念で。そのあと『Hobby Lobby』に行ったら、Etsyのクリップに付いてたのと同じパーツが並んでて、「あ、ここで仕入れてるんだ!」って気づいちゃった」
ーあなたの“デコり”へのこだわりも好きです
「高校のころは携帯やiPodをラインストーンで飾っていました。そしたら盗まれちゃって。悲しかったけど責める気にはなれなかった。だって本当に可愛かったんですよ。コーラルカラーで虹色にきらめく感じ」
「私はキラキラしたものが好きです。大人になったら卒業すべきってわかってはいますが。一時期、「私はニューヨーカー、もっと大人っぽくモダンにならなきゃ」って思っていた時もあった。でも年を重ねると本音で思うんです。「いいえ、私を幸せにしてくれるものを持ちたい」って。つまり、『Hobby Lobby』で買った99セントのピンクのグリッターテープを車にべたべた貼ること。すごくチープでダサくてひどいもの! ただのキラキラしたダッシュボードテープよ。子どもたちがそれを好きなのか、恥ずかしいと思っているのか。私にもまだわかりません」
Realization : Translation & Text : Nathalie Lima KONISHI
出典:US ELLE