ボブ ピクシーカット
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長くつややかな髪を思い切ってカットしてピクシーカット、もしくはボブにチェンジすることは、誰にとっても間違いなく“自分を更新する”体験だ。今シーズンは、エマ・ストーンやキム・カーダシアン、セレーナ・ゴメスまでハリウッドの錚々たるセレブがこの2大ショートを披露している。

ピクシーカットとボブは、移ろう流行を超えて愛され続けてきた。1920年代、銀幕のミューズであるルイーズ・ブルックスは、ボブをささやかな反逆のしるしからハリウッドグラマーの象徴へと押し上げた。1950年代には、映画『ローマの休日』のオードリー・ヘプバーンのようなピクシーカットが、誰もが憧れるスタイルとして定着していく。

大胆でいながらクラシックに洗練されているその佇まいこそが、いまショートヘアが熱い視線を集める理由だ。ただ、ピクシーカットやピクシーとボブのハイブリッドのピクシー、そしてボブがあまりにも広く浸透した結果、実のところそれぞれがどんな髪型なのか、戸惑ってしまう人も多いはずだ。

でも心配しないで。ボブとピクシーカット、それぞれに似合う人の傾向や両者の違いまで知っておきたいポイントをチェックしていこう。

ボブカットとは

ボブは、クラシックなショート〜ミディアムの丈感が特徴。「ボブの長さは、あごのラインから鎖骨の少し上までの間で自在に設定できます」と話すのは、「ジョン フリーダ サロン」メイフェア店のヘアスタイリスト、ユージン・スミス氏。キーラ・ナイトレイからパメラ・アンダーソンまで多くのセレブが取り入れており、前者はサイドパート、後者はチョッピーな前髪と合わせている。

ボブは再流行のたびに姿を変えながらアップデートされてきた。「グラデーションボブや斜めのAラインボブなど、バリエーションは幅広いです」とスミス氏。今季は、ボックスボブ、フレンチボブ、チョッピーボブが特に話題だ。

「ニコラクラーク ヘアサロン」のスタイリスト、ベッキー・レノン氏は、ボブを“型破りのスタイル”と表現している。「現代的というイメージがある一方で、実は1920年代に女性の自立とモダニティの象徴として人気を獲得したのです」と説明してる。

ボブが似合うのはどんな顔型、髪質の人か?

では、ボブが最も似合うのはどういう顔の形、髪質の人だろうか。実のところ、ボブには無数のバリエーションがあり、誰にでも自分に合うボブが見つかるのだとか。「ボブは非常に汎用性の高いヘアスタイルで、どんな髪質や顔の形にもフィットするように調整できますし、年齢も問いません」とレノン氏は言う。スミス氏も「シックで洗練された印象を求める方にボブはうってつけです」とつけ加える。

ボブはシャープで印象的なスタイルなので、顔の角度を生かすのがカギ。「ボブをカットする際は、基本的にあごのラインに沿わせるのがいいでしょう」とレノン氏はアドバイスする。

また、ボブは細い髪やダメージ毛にも有効。とスミス氏。「細毛で髪をふんわり見せたい方に最適のスタイルです。中間から毛先の傷んだ部分をしっかり取り除くことで、髪全体をリフレッシュできます」。

ピクシーカットとは

ピクシーカットは、頭に沿ってタイトに収まるベリーショートな丈が特徴。トップはやや長めに残し、サイドは耳周りから襟足になじむ長さが基本。レノン氏は「ピクシーカットの決め手は、短いレイヤー構造が生む質感とラフで動きのある表情です」と説明する。

ボブ ピクシーカット
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細い髪なら、チョッピーでテクスチャーのある仕上げがボリュームと動きを引き出してくれる。前髪を生かした長めのバージョンはアイリス・ロウ、より研ぎ澄まされたミニマルなピクシーはゾーイ・クラヴィッツをお手本にしてみて。

ピクシーカットが似合うのはどんな顔型、髪質の人か?

ピクシーカットは、文字どおり顔をくっきり見せ、視線の中心に据えるスタイルだ。「一般的に、骨格やあごのラインがしっかりした方に似合います」とレノン氏は言う。とはいえ、顔型に関わらずピクシーカットに必要なのは自信だとスミス氏はつけ加える。「髪に隠れようとせず、ほかのパーツの魅力を堂々と引き立てたい人にピクシーカットはぴったりです」。

毛量がとても多い場合は量感調整が必要になることがあり、反対に細い髪はレイヤーで厚みを出すのが有効だ。質感という点では、ピクシーはストレート、ウェーブ、あるいはゆるいカールと最も相性がいい。

ボブとピクシーカットの違いは

どちらも短いヘアスタイルではあるが、ボブとピクシーカットはまったくの別物だ。長さや形、そしてレノン氏の言う“全体のムード”が明確に異なる。

「ボブはレイヤーやグラデーション、顔まわりのカットを加えることで、非常に幅広くアレンジできます」とレノン氏は続ける。一方でピクシーカットは、ボブほどの可変性はない。スミス氏は「ピクシーカットが伸びていく過程では、どうしても見映えしづらい長さの谷間、つまりよりスタイリングが必要な期間をいくつか通過する必要があります」と説明する。

そのため、ピクシーカットにすることとそこから伸ばしていく過程は、この点で悩ましい課題になり得る。

ボブ ピクシーカット
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とはいえ、ピクシーカットが面倒ごとばかりというわけではない。「スタイリングの面では、ピクシーは手入れがしやすいヘアです。ただ、その形を保つには定期的にサロンに通う必要があります」と、レノン氏。

一方、ボブは伸ばしかけの気まずい時期が少ないヘアカットなのだとか。「ボブはさまざまな長さで美しく見えるので、伸ばすプロセスが楽です。鎖骨を越えたら、伸ばし続けるか再びボブの長さに切り戻すかを検討するタイミングです」とスミス氏。そのため、ピクシーカットのような極端な変化に迷いがある人にはボブのほうが適している。次から紹介する4つのボブ&ピクシーカットは、2025年の本命スタイル。ぜひヘアチェンジの参考にしてみて。

ボックスボブ

ボブ ピクシーカット
Craig McDean

グレイシー・エイブラムスは、ボックスボブがどれほど印象的でありながら力みなく見えるかを体現している。ワンレングスというシンプルな構造が、どんな装いにもグラフィカルなエッジを添えている。

ヘアカットのスペシャリスト、ヴィヴィアン・ジョンズ氏は過去にUK版『ELLE』でこう解説している。「レイヤーを入れずに髪を持ち上げずにカットすることで、強い幾何学的なボックスシェイプが生まれます。このクリーンでシャープなシルエットは、あごのラインを確実に際立たせる定番メソッドですね」。

フレンチボブ

ボブ ピクシーカット
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もし、シックでどこか気だるげなパリの画家のミューズがまといそうな髪型があるとすれば、それはフレンチボブだろう。ニコラ・クラーク×ジョン フリーダ サロンズのシニアスタイリスト、ジョエル・ゴンサルヴェス氏はUK版『ELLE』で「あごの少し上で切りそろえた、やや重めの一直線のライン。とてもリラックスしていてエフォートレスな雰囲気です」と説明している。作り込みすぎない無造作感が際立つのが特徴で、ローラ・ハリアーが理想的なお手本だ。

アシンメトリーピクシーカット

ボブ ピクシーカット
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ピクシーカットは、大胆でタイムレスなヘアスタイル。それ自体で完成しているヘアですが、仕上げをほんの少しひねって毛先を片側に寄せるだけで、定番なスタイルにモードなエッジーさが生まれる。テイラー・ラッセルやフローレンス・ピュー、テイラー・ヒルはいずれもバイアス気味にカットしたピクシーを披露している。

前髪ありピクシーカット

ボブ ピクシーカット
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ベビーバングスのピクシーカットは、遊び心とギャミンを等分に宿すスタイル。アイリス・ロウのブリーチショートは、ピクシーカットのクラシックな魅力を体現している。彼女のヘアスタイリスト、シド・ヘイズ氏はピクシーカットについて、「定期的にカットしますが、形を変えたり質感で遊んだりしてさまざまなスタイルを作っています。そして何より、楽しむことをいちばん大事にしています」と語っている。

Realization : Kimuli Eriya Translation & Text : Nathalie Lima KONISHI
出典:UK ELLE