ビューティエディターとして私、メディナは、ヘアトレンドを予測して記事にする仕事に日々真剣に向き合っている。フレンチボブやチョッピーピクシーカットから、スリックにまとめたアップスタイル、そしてミディアムレングスの前髪アレンジまで、こうしたリサーチは、他人の冒険を擬似体験させてくれる楽しい側面もある。
けれども実生活において、私自身はまるで冒険できていない。13歳の頃からずっと暗い色のレイヤーロングを貫きつつ、たまにロングボブにする程度で長さはほぼ一定。理由はロングヘアの万能さにある。例えばその日の気分でアップにもダウンにも簡単にアレンジできる自由度はとても魅力的。それでも長く同じスタイルを続けていると、どこか退屈になってくるものだ。主張のあるピクシーやブラントボブのようなインパクトはなく、私のロングヘアはクラシックだけれど目立たない域を出ていない。
そこで最近、前髪を作るという決断をした。これがまさにゲームチェンジャー。長さを保ったままでも、顔周りをふわりと縁取るカーテンバングがフレンチガール風の洗練を添えてくれたのだ。
ロンドン・ショーディッチにあるサロン「Taylor Taylor」でディレクターを務めるヘアスタイリスト、ミカエラ・ヴァタフもこう語る。「前髪は顔を美しくフレーミングし、目元や頬骨に視線を誘導してヘアスタイル全体にメリハリを与えてくれます。長さを犠牲にせずイメージを刷新でき、カジュアルにもエレガントにもドラマティックにも自在にスタイリングできます」
ベストな前髪を見つけるには
前髪を考えるときにまず大切なのは、自分がどれだけメンテナンスに時間を割けるか、どんなスタイルが好きか、また前髪に慣れているのかを正確に見極めること。私の場合は手間を最小限にしたいタイプで、ブリジット・バルドーやサブリナ・カーペンターのロマンティックなムードに惹かれていた。フルバングに踏み切る覚悟はまだない私には、柔らかく顔まわりを包み込むカーテンバングがまさに理想的な選択肢だった。
【スタイル別】ミカエラ・ヴァタフの前髪ガイド
ストレートバング:長い髪をつややかで洗練された印象に仕上げる、クラシックな選択肢。
カーテンバング:顔を美しく縁取り、低メンテナンスで扱いやすい。
サイドスウィープバング:柔らかく汎用性が高いスタイルで手入れも簡単。
チョッピーバング:質感と動きを与え、ロングヘアになじみながら重さを感じさせない。
【顔型別】ベストな前髪の見つけ方
美のセオリー同様、ヘアスタイルは“こうあるべき”という決まりはなく、最終的には自分が心地よいと感じるかどうか。丸い頬とハート形の骨格だから前髪は似合わないと思っていた私も、信頼できるスタイリストのカウンセリングで“長めにカットしてバランスを取る”という解決策を得た。参考までに、ヴァタフの考えを紹介しよう。
オーバル型:ブラントからカーテンバングまで、ほぼすべての前髪スタイルがマッチ。
ラウンド型:長めのサイドスウィープやカーテンバングで縦ラインを強調し、顔をほっそり見せる。
スクエア型:ふんわり軽い前髪やテクスチャーのある前髪で角ばった印象を和らげよう。ストレートバングの場合は大胆さをプラスできる。
面長:ブラントバングや短めバングで額に幅を持たせ、顔全体のプロポーションを整える。
ロングヘアの前髪のスタイリング方法
前髪にニュアンスをつけるいちばん簡単で手早い方法は、ホットブラシを使うこと。スタイルに合わせてサイドへ流す、ブローでストレートに仕上げる、ディフューザーでカールを際立たせるなど自在にアレンジできる。量が少ない分、下準備を省きがちですが、熱を当てるときは必ず事前にヒートプロテクターを塗布して毛束の健康を守ろう。カールやコイルの場合は、うるおいを与えるカールクリームを仕込むと最高のコンディションをキープできる。
ロングヘア×前髪ありセレブのインスピレーション
丸みのあるフルバング×ロングヘア
ダコタ・ジョンソンは、内側に向けてカーブさせた前髪で洗練されたムードを演出。ブロードライで眉ぎりぎりでそろえたフルフリンジは、いまや彼女のシグネチャーバングとして定着している。
ふんわりバング×ボリュームロング
キキ・パーマーはたっぷりのウェーブに柔らかな前髪を合わせ、ドラマティックな存在感を発揮。80年代のテイストを感じさせつつも、今の空気感をしっかりまとったスタイル。
サイドに流したフルバング × ロングヘア
昨年の「METガラ」でサブリナ・カーペンターは、ボムシェル級のカールを捨て、画家のボッティチェリを思わせる柔らかなウェーブと、優しくサイドパートに分けたバングへとシフト。軽やかでとても愛らしい髪型に。
フルバング×エクストラロングヘア
モデルのアノック・ヤイはXXLレングスのトレンドを完全に掌握。ストレートの超ロングにフルバングを足すことで立体感が生まれ、このスタイルを次のレベルへと押し上げている。
フルバング×ウェーブロングヘア
カミラ・カベロがボブ期に突入する前は、ロングヘアと前髪のコンビがお気に入りだった。ここでは軽めの毛束を使ったフルバングが、ふわりとした抜け感をプラス。
ロングストレートバング×ロングヘア
ジェナ・オルテガは現在、骨のようにまっすぐなロングからソフトなレイヤーへ移行したが、このピンと伸びた前髪はストレートの質感を活かしたい人にうってつけの選択肢だ。
顔周りバング×アップスタイル
2025年の英国アカデミー賞で女優のステイシー・マーティンは、シンプルなハーフアップにセンターパートのフェイスフレーミングバングを合わせ、最上級の洗練さを奏でた。
フルバング×ウェーブハーフアップ
ブラックピンクのリサはドラマ『ホワイト・ロータス』のプレミアで、童話の主人公のように揺れるウェーブをハーフアップにまとめた。ふんわりとブローしたフルバングで、ハート形のフェイスラインをいっそう引き立てていた。
フルバング×ウェーブロング
テイラー・スウィフトの代名詞ともいえるフルバング。毛先をほんのり外にはねさせたワンポイントで、ウェーブロングに抜け感とボリュームをプラスしている。
フルバングス×スリークロング
デイジー・エドガー=ジョーンズなくしてヘアムードボードは語れない。彼女の場合、つややかなダークロングに切りそろえたフルバングを合わせることで、クラシックなのに今っぽいモード感を完成させている。
カーリーバング×ロングヘア
ナターシャ・リオンの鮮やかなジンジャーヘアは、やや短めに切り込んだカーリーバングのおかげで迫力がさらにアップ。ボリュームヘアに小気味よいリズムを与えている。
チョッピーバングス×ストレートロング
ミシェル・ヨーにはぜひこのバングを続けてほしい。短くラフに切り込んだ前髪が、つるりとしたストレートロングにクールなエッジさを添えている。
Realization : Medina Azaldin、Translation & Text : Nathalie Lima KONISHI
出典:UK ELLE