“スキンケアの民主化”を掲げ、不透明な価格設定やコミュニケーションに疑問を投げかけるカナダ発スキンケアブランド、「オーディナリー」。“ナイアシンアミド*¹ 10%⁺亜鉛1%*² ”など成分名と濃度がパッケージに明示されていたり、本国では開発に携わるサイエンティストたちが消費者の質問に直接答えるサービスや、何といっても美容液で30㎖ ¥1,100、¥1,870といった破格のプライス設定など、ビューティ業界の既成概念を打ち破るユニークさが話題となり、今や世界中にリピーターをもつ。
日本初上陸にあたり、CEO兼ブランド共同創設者のニコラ・キルナーがELLEの質問に答えた。
(*¹ 整肌成分 *² PCA 亜鉛(整肌成分)中の亜鉛に換算した値)
ELLE (以下E):「オーディナリー」はお手頃価格で勝負しているブランドで、過剰な広告も打っておらず、“スキンケアの民主化”を謳っています。おそらく最初は他ブランドから驚愕されたのではないでしょうか?
ニコラ(以下N):消費者のみなさんはそれはもう喜んでくれました。では他のブランドのみなさんはどうだったかというと、私達からインスピレーションを受けていただいたというところがあったと思います。成分に寄り添った価格というところに則ってそれが実現できるようになったブランドも出てきていますね。影響を与えることができたんじゃないかなと感じます。
E:化粧品業界は「透明性」に対して恐怖心を抱いてきたかもしれません。少し曖昧な部分をイコール「夢」として語っていたからです。「化粧品は美しくなる夢を抱けるところがすばらしい」という言説があり、私たちもそれを信じてきました。そこにシンプルにサイエンスの力を打ち出していくことに、躊躇や周囲の反対はなかったのでしょうか?
N:高価なコスメは、とても香りがよかったり、美しい憧れの女優さんを広告に起用していて私もそのようになれるかもという気持ちになれる。私自身そういう思いもすごくわかるし、そうしたコスメはすばらしいものだと感じています。
ただ、私たちは選択肢を増やしたのです。
高級化粧品もいいのですが、やっぱりもっとサイエンスだとか透明性があることを好む人や高額なものは買えない人たちもいて、そういう人たちに対しての選択肢だと思うんです。
同じ業界内で反発のようなものはあまりありませんでした。初期のころから、むしろもっと我々に投資したいとか、買収したいっていうところは結構ありましたね。エスティ ローダーと今組んでいるわけですが、どちらかというとみなさんから「一緒にやりたい」というお声がけをいただいていました。
E:開発に携わるサイエンティストのチームがお客様と直接コミュニケーションを取る体制にも驚きました。
N:“レジメンビルダー”というサイエンティフィックチームが作ったシステムにより、製品の使用法などのガイダンスをウェブサイト上で見られるようにしています。またお客様サポートの窓口を通じて消費者から科学的な質問を受けた場合はサイエンティフィックチームに答えてもらいます。「オーディナリー」は透明性に価値を置いているので、消費者からのどんなご質問も大歓迎なんです。サイエンスを基にして最高の商品を作っていて、マーケティングベースとかではない。「隠すものは何もない」と考えていますし、科学者たちって説明するのが大好きですから!
E:日本では今消費者による化粧品の「成分買い」が大流行し、今や常識として落ち着いたところです。そのことはご存じでしたか?
N:はい。グローバルでも同じ傾向ですね。ブランドをローンチした2016年ごろはまだまだだったのですが……本当に同じぐらいのタイミングでグーグルのトレンドサーチでも(成分名が)あがってくるようになりました。偶然の一致かもしれませんが、私たちが影響が与えられたのならいいなと思っています。
E:「オーディナリー」はPETAからヴィーガン認定を受けており、透明性を基本とし、持続可能性にコミットしています。「オーディナリー」はクリーンビューティといえるでしょうか。
N:クリーンビューティには基準がないんですよね。そこが混乱を引き起こしてしまいがちなので、私たちは「オーディナリー」を“クリアビューティ”と位置付けています。すべてクリアに透明性と科学的根拠に基づいた製品作りを行っています。
E:ニコラさん自身のキャリアについて教えてください。初めから起業を志していたのですか?
N:学校卒業後、イギリスの“ブーツ”(コスメのセレクトショップ)でバイヤーをしていたのですが、ビューティのスタートアップをやりたいと考えていました。そんなときに出会ったのが共同創設者のブランドン・トリュアクス。透明性とサイエンスを打ち出したい、“スキンケアの民主化”を実現したいと話し合って始めた小さな会社でした。ここまで大きくなれるとは思いもよらなかったですね。
もし今後ビューティビジネスを始めたいと思う人がいるなら、地球にも植物にも優しくあるという常識を貫き、個人的な価値観とブランドバリューを一致させることが重要だと思います。ぜひトライしていただきたいですね。